第十七話 身体強化
「誰が成長していないと言った?」
ライス先生の言葉に、俺は固まった。
成長。
そんなもの、本当にできているのだろうか。
俺が考えていると、ライス先生は続けた。
「勘違いするな」
「修行が終わったわけではない」
「え?」
思わず聞き返す。
するとライス先生は口元を少しだけ上げた。
「基礎が終わっただけだ」
その瞬間、嫌な予感がした、経験上、ライス先生がそういう顔をする時は大抵ろくなことにならない。
「アル」
「はい」
「ここからが本番だ」
冬の訓練場、冷たい風が吹く中、ライス先生は真っ直ぐ俺を見た。
「俺が最も得意とする技術を教える」
「最も得意な技術……?」
俺は首を傾げる。
するとライス先生は迷いなく答えた。
「身体強化だ」
その言葉に俺は目を見開いた。
身体強化。
魔力を体内に巡らせることで身体能力を向上させる技術。
魔兵団の多くが使用する、実戦的な魔力操作だ。
「身体強化は魔力操作の応用だ」
ライス先生は説明を続ける。
「筋肉」
「骨」
「神経」
「全身へ魔力を巡らせる」
「魔法の才能よりも、魔力操作の精度が重要になる」
そこで一度言葉を切る。
そして――。
「お前にもできる」
その一言に俺は思わず息を呑んだ、今まで散々言われてきた、できない、無理だ、諦めろ。
だけど、ライス先生だけは違った、できると言った、俺を見て言った。
「本当ですか……?」
思わず声が漏れる。
ライス先生は頷いた。
「保証しよう」
「少なくとも魔力操作に関しては、お前には才能がある」
胸の奥が熱くなる、自然と拳に力が入った、ここまで頑張ってきてよかった。
そう思えた、だから俺は迷わず答えた。
「やります」
ライス先生は黙って聞いている。
俺はもう一度言った、今度はもっと強く。
「やらせてください!」
訓練場に声が響く。
ライス先生は満足そうに頷いた。
「良い返事だ」
そして――。
「では始めるぞ」
その時、俺はまだ知らなかった。
身体強化の修行が、今までの基礎訓練を優しく思えるほど過酷なものだということを。




