第十六話 成長
寒くなってきた。
吐く息は白く、朝の訓練場には霜が降りている、俺は冷えた手を擦りながら空を見上げた。
「もう冬か……」
思い返せば、ライス先生の修行が始まったのは入学してすぐの頃だった。
あの頃の俺は何もできなかった、魔法は使えない、実技は最下位、周りからは笑われてばかり。
正直、何度も心が折れそうになった。
それでも毎日修行を続けた、朝から晩まで、ひたすら基礎を繰り返した、何度失敗しても、何度転んでも、前に進み続けた。
少しは成長できただろうか、父さんと母さんに胸を張れるくらいには、強くなれただろうか。
そんなことを考えていると――。
「アル」
後ろから声が聞こえた、振り返る。
そこにはライス先生が立っていた。
いつも通りの表情、いつも通りの姿。
「おはようございます!」
「うむ」
短いやり取り、そして俺はいつものように訓練の準備を始めようとした、その時だった。
「良し」
ライス先生が言った。
「基礎はもういいだろう」
俺の動きが止まる。
「……え?」
聞き間違いかと思った、だがライス先生は続ける。
「基礎は終わりだ」
一瞬、頭が真っ白になった。
「えぇ!?」
思わず大声が出る。
「し、修行終わりですか!?」
「こんな急に!?」
「急でも何でもない」
ライス先生は平然としていた。
「むしろ長かったくらいだ」
「いやいやいや!」
俺は慌てる。
「まだ全然です!」
「魔法もろくに使えませんし!」
「魔兵団なんて程遠いですし!」
ライス先生は腕を組んだ、そして少しだけ笑った。
「誰が成長していないと言った?」
その言葉に俺は固まる、冷たい冬の風が吹いた。
だけど――。
なぜか胸の奥は少しだけ熱かった。




