第十四話 落ちこぼれ
「お前、自分が思っているほど落ちこぼれじゃないかもしれんぞ」
ライスの言葉に、アルは固まった、今まで言われたことのない言葉だった、期待されたことはない、褒められたこともほとんどない、だからこそ戸惑う。
「ほ、本当ですか……?」
ライスは肩をすくめた。
「少なくとも魔力そのものに問題はない」
「むしろ異常な部類だ」
アルは少しだけ嬉しくなった、だがライスはすぐに表情を引き締める。
「だが」
その一言で空気が変わる。
「やはり魔法は必須だ」
アルも真剣な顔になる、ライスは地面に落ちていた小石を拾った。
「例えば敵の攻撃を防ぐ時」
「一番簡単なのは何だと思う?」
アルは少し考える、そして答えた。
「防御魔法です」
ライスは頷く。
「そうだ」
「無属性魔法による防御」
「これが最も基本的で、最も重要な技術だ」
そう言ってライスは手をかざす、淡い光が生まれ、小さな膜のようなものが形成された、炎でもない、水でもない、風でも土でもない、純粋な魔力で構築された障壁だった。
「属性魔法は応用だ」
「だが無属性魔法は違う」
「全ての基礎になる」
ライスは障壁を消す。
「まあ」
そこで少し笑った。
「頭のいいお前ならもう分かっていると思うがな」
アルはすぐに答えた。
「全ての魔法の基本だから、ですよね?」
ライスは満足そうに頷く。
「その通りだ」
「火魔法も」
「水魔法も」
「風魔法も」
「土魔法も」
「全て無属性魔法の応用に過ぎない」
アルは真剣に聞いていた、これは本で読んだ知識だ、だがライスの言葉は重みが違った、実際に戦ってきた人間の言葉だった。
「だからこそ」
ライスはアルを見据える。
「お前が魔法使いとして生きるなら」
「まず無属性魔法を使えるようになれ」
「属性魔法はその後だ」
アルは驚いた。
「無属性魔法なんて子供でも使える基礎中の基礎じゃないですか」
「何事も基礎が大事なんだ」
ライスは即答した。
「できない応用をしたところで何もならん」
「まずは基礎を完璧にするべきだ」
その言葉にアルは口を閉じる、確かにその通りだった。
ライスは腕を組む、そして静かに告げた。
「今日から特訓だ」
「お前にはまず」
「魔力を形にする感覚を叩き込む」
アルは思わず背筋を伸ばした、ついに始まる、自分を変えるための第一歩が。
ライスはわずかに笑う、その笑みは優しいものではなかった。
むしろ――。
これから始まる地獄を予感させる笑みだった。




