第百八話 来訪
俺達は宿へと戻ってきた、部屋に入るなり、リバがベッドへ倒れ込む。
「あ〜疲れた……」
「確かに疲れたわね」
「全然歯が立たなかったし……」
アステラとの実力差を思い出し、キャリーはため息をつく。
「それで、これからどうするの?」
「そうだな……」
俺は少し考える。
「二人はどうしたい?」
「魔兵団として依頼をこなしていくのもいいけどさ」
リバは天井を見上げる。
「このままじゃ三人共ゴールドになれるのは何年後かわかんないぜ」
「強いパーティに入るにはもっと強くならなきゃいけないしな」
「そうだな」
しばらく沈黙が流れる、するとキャリーが何かを思い付いたように手を叩いた。
「じゃあさ!」
「せっかくフェイエルに来てるんだし、買い物とかしない?」
「欲しいものでもあるのか?」
「そりゃもちろん!」
「お金も沢山あるんだし、いいでしょ?」
「確かにな!」
リバは勢いよく起き上がる。
「美味いもんやカッコいい服も買いたい!」
「いいだろ、アル?」
「そうだな」
しかし俺は首を横に振った。
「買い物には二人で行ってくるといい」
「俺は鍛錬でもしてるからさ」
「え!?」
「お前まさか行かない気か!?」
「うん」
俺は少し考えてから答える。
「別に欲しい物は無いしな」
「えー」
キャリーは不満そうに頬を膨らませる。
「明日リバと二人?」
「何だよその反応は!?」
「……まぁ明日はアルの分まで楽しもうぜ」
「うん」
「楽しんできてくれ」
二人は顔を見合わせる。
「つれないねぇ」
「もっと遊べばいいのにな」
そんなことを話しながら、一夜を過ごした。
◆
翌日。
「じゃ、行ってくるよ」
「せめて夜ご飯は連れて行くからね」
「うん、楽しんで!」
二人は宿を後にした、部屋に残った俺は一人静かに座る。
脳裏に浮かぶのは昨日の戦い、ペイシェンスとの試合だった。
(あの時……)
俺は立ち上がる。
(焦って転移魔法を使ったけど使わなくても避けられたはずだ)
ゆっくりと体を動かしながら再現する。
(こう避けるべきだった)
剣を振る、足を動かす、何度も何度も繰り返す。
(もしここで踏み込んでいたら)
(もっとスムーズに反応できていたはずだ――)
敗北した戦いを頭の中で何度も反芻する、少しでも強くなるために、少しでも次へ繋げるために。
そしてしばらくした頃。
コンコン。
俺の部屋の扉が叩かれた。




