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【観測者の時空】番外編『中継セクター』 ―サボり屋カノジョの監査ログ―  作者: Taku
第2章:中継セクター深層ログ

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【御前会議_04】長老の逆鱗

時空の狭間。円卓は今日も浮かんでいる。



会議前の控え室。


カレシ「雇い主、考えはまとまりましたか?」


雇い主「いや。但し、秘策はある」


カレシ「……秘策、ですか」


雇い主「うむ。雰囲気で勝つ、だ」




いよいよ、第三回目の『彼女の時空』創生御前会議が始まる。


中央の空席——前回よりも確かに気配が濃くなっている。誰も座っていない。でも、その席だけ、周囲よりも空気が柔らかい。


長老、隊長、博士、青年、女将が着席。

雇い主は立ったまま——今日はメモを持っているが、中身は白紙。

壁際ではあくびするカノジョとやや緊張の面持ちのカレシが座る。



女将(コーヒーを注ぎながら)


「では、続きを始めましょう。前回の議題——『カフェあおいにどんな問いを残すか』についてです。雇い主さん、考えはまとまりましたか?」



雇い主(咳払いを一つ)


「……もちろん」



女将「では、お聞かせください」



雇い主「カフェあおいの窓際。差し込む夕日——。それはまるで、琥珀色のシロップに浸された、一日の終わりの記憶——」


彼は両手を広げ、どこか遠くを見るような目で語りかける。


雇い主「歳月を宿した重厚な木目のテーブル。そして——」


その時、視線が壁際に向かう。カレシは手帳を閉じている。不発だ。カノジョはモグモグと何かを食べている。キットカットだ。


雇い主(少し聞き取りにくい声にする)


「キッ……ト……カット……と、していく。


(声のトーンを上げる)


いかがだろうか、皆さん!」





沈黙。全員が顔を見合わせる。





長老「分から……」


博士(メガネを押し上げて)


「ほー。カフェあおいのテーブルに『傷』をカッティングしていく——つまり、物理的な痕跡を現代と未来で繋ぐ、というわけですか」


青年「未来でも物理的な痕跡なら残る。いいかもしんないっすね」


女将「窓際の席には熱量が籠りますわね。長老、いかがかしら」


雇い主(よし話が進んだ)


長老「…………まあ、皆の意見ということで、よろしいんじゃないか。隊長も異論はないか?」


隊長「はい。その方向で」



雇い主「いやあ、皆さんの知的クリエイティビィティには驚愕するばかりです。そして、その傷こそが——『stocking_night_0612』。この記号を読者への『問い』とする。博士、いかがかな?」


博士「これならば読者に繋がりますな。賛同します」



一同、頷く。



雇い主(ヨッシャアー!!秘策成功!)


カレシ(壁際でメモを取りながら小声で呟く)


「……またしても結果オーライ。これが秘策か」


カノジョ(小声)


「雇い主、やったじゃん!」





長老「では、ここでもう一つ疑問が出る。誰が渡し、誰が受け取るかだ。雇い主君、まとまっているのかね」



雇い主「勿論。渡す側——これは異論ないところでしょう。皆さんに問いを残すとしましょう。長老、お分かりですよね?」



長老「…………」


隊長(長老に小声で)「ここは光莉かと」


長老「まあ、光莉であろうな」


隊長「仰るとおーり!」


女将「光莉さんが遺す『傷』——それも一つの物語ね」


青年「悪くないっすね」


一同が同意を示す中、一人立ち上がったのは博士だった。


博士「大筋、光莉とすることには同意します。しかし——これは読者に繋ぐにあたり、重大なる核心問題を残しています。現代と未来、二つの作品間の思想の違い。——それについては、最終議題とすることを提案します。皆さん、いかがでしょう?」


青年「長老のドロドロ現代とスマートな未来ですもんね。異議なーし」


長老「なんだと、小僧!」


隊長「長老、ここはあっしが預かりやす」


女将「まあまあ、長老。その熱量を未来に自然に繋げたいという博士の前向きなご意見ですよ」


長老「……う、うむ。女将が言うならば。では、受け手はどうするんだ?」


雇い主「これは考えがある。た、な、かだ」

(さも、自信ありそうな雰囲気を醸し出し、乗り切りを図る)




一同、ざわつく。




青年「そう来ましたか。サブキャラが躍り出てくるの、好きっすよ。女将、どうです?」


女将「確かに、因縁があって面白い試みね。ただ——」

(長老の方に目を向ける)


その時、バンッと机を叩く音がした。


長老(立ち上がる)


「絶対に認めん。俺の『計画』に熱量のない田中など、論外だ」


隊長「『計画』の現場に田中はいない。それが長老の答えだ」


博士「私は読者に繋ぐ点において、まだ細部の詰めが必要という立場です」


長老「雇い主よ、物語とはな、因縁とか、伏線とか、そういうテクニークじゃないんだよ。絶対的な『熱量』だ。私を完全に納得させない限り、田中は認めん。それが本日の決定事項だ」


空気が張り詰める。


女将(静かに)


「では、そろそろ次の議題に移りましょう。現代と未来を繋ぐ『点』は傷——では、それを繋ぐための『線』を次回の議題としてはいかがでしょう」


雇い主「……承知した」


その時、空席の気配が微かに変わった。誰もいない。でも、その席だけが、まるで「まだ続く」と言っているように温かかった。


学生(小さく)


「……あの席、今、動いた?」


監査役(会議室の外から、端末を手に)


「記録します。第3回創生会議——カフェあおいに『傷』を残すことで決定。問いは『stocking_night_0612』。渡し手・光莉の方向性で合意。受け手・田中は保留。繋ぎ方も未確定。つまり、作品理念の接続が未成立。次回、『線』について議論予定。」



──会議後、中継セクターの三人はこちら──

LOG_042【キットカット戦法と逆鱗、そして決闘へ】

https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/3034788/blogkey/3660884/


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