【御前会議_03】伝線という名のバグ
時空の狭間。円卓は依然として浮かんでいる。
中央の空席は、前回よりもわずかに気配を濃くしている。
誰も座っていない。
でも、誰かが「もうすぐ来る」ことを知っているかのように。
長老、隊長、博士、青年が座っている。
女将はカップを片付けながら、自分の席に戻った。
雇い主は立ったまま——今日はメモを持っている。
壁際ではカノジョがラムネを食べ、カレシが手帳にメモをしている。
女将(席に着きながら)
「では、続きを始めましょうか。雇い主さん、前回は代案を求められていましたね」
雇い主(咳払いを一つ)
「うむ。……考えてきた」
長老「ほう」
雇い主「……で、だ。現代と未来をどう繋ぐか——地面を現代、空を未来。そこに落雷。そして時空に僅かなズレ。そのズレを『バグ』が繋ぐ——こういう構想だ」
一同、ポカーン。
長老(小声で隊長に)
「……バグとは何だ」
隊長(小声で)
「犬の種類ではないでしょうか」
長老(大きくため息)
「安易だ」
雇い主「……は?」
長老「最近の作り手は、赤ちゃんと動物を出せばいいと思っておる」
雇い主「バ、バブー? 」
博士(メガネを押し上げて)
「待ってください。バグと言いましたね——それは現代と未来の人間を繋ぐ熱量になるかもしれませんぞ」
青年「バグだったら、未来のシステムとも相性いいっすね」
隊長(小声で長老に)
「すみません、なんか勘違……」
長老(構わず)
「そのバブーとは何だ。和語で伝えたまえ」
雇い主「…………」
その時だった。壁際で手帳を開いていたカレシが、素早く何かを書き、雇い主に向けて掲げた。
カレシ(無言で)
手帳には大きな文字で——『伝線』
雇い主(ハッとする。額に二本指を当てる)
「んー、いいでしょう。少し回り道をしてみました。そう、『伝線』。ストッキング!」
カレシ(頭を抱える)
一同、沈黙。
長老「…………拓か」
隊長「…………仰る通り」
博士「なるほど。伝線——現代の拓が遺した『stocking_night_0612』——あれも一種の伝線と言える」
青年「その記号、使えますよ」
女将(微笑みながら)
「つまり、現代と未来が『伝線』を受け継ぐのかしら?」
雇い主(あれ、話が進んでる)
「ふふ、女将、その通り。お目が高い」
長老(長い沈黙の後)
「……伝線か。わしの世界にも、それはあるぞ。なあ、隊長?」
隊長「もちろん……電線ありますよ」
長老「だが——その伝線が、未来にどう繋がるのか。まだ見えんな。考えはあるのか?」
雇い主「……ある」
(またカレシの方を見る。ん?いない?)
カノジョ(カレシの手帳に急いで大きな文字で——『トイレ』と書いて掲げる。
雇い主「そう、トイ、ん?。トイ・ストーリー?」
一同、空を見上げる。
博士「問い、を読者に与えるか。なるほど」
青年「余白ってやつでしょ」
長老(小声で隊長に)「分かるか?」
隊長「はい。その方向で」
女将「雇い主さん、カフェあおい。その『問い』の場とぴったりね。いいと思うわ」
雇い主「……女将」
長老「よし、次回はカフェあおいを使って、どんな問いを残すか、だ」
その時、空席の気配が微かに変わった。
誰もいない。
でも、その席だけが、まるで「面白そうだ」と言っているように温かくなった気がした。
学生(小さく呟く)
「……あの席、こっち見てる」
会議は続く。まだ何も決まっていない。でも——空席の気配は、確かに誰かを待っている。
監査役(会議室の外から、端末を手に)
「記録します。第2回創生会議——『伝線』を接続の鍵とすることで合意。ただし、具体案は未確定。次回、持ち越し」
──会議後、ご機嫌な雇い主はこちら──
LOG_041 【問い・ストーリーの読・爆・解】
https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/3034788/blogkey/3659454/




