対戦Code_006:少年よ、タヒチへ行け
……中継セクター、通信パッチ監査ログ。
担当:カレシ。
本対戦のテーマは『人への助言におけるコストパフォーマンス——いわゆる「嫌われる勇気」の実践的検証』。
【序盤:カレシの論理的な助言が炸裂】
カレシ「人への助言は、相手の感情に寄り添いすぎず、論理的に行うに尽きます」
知人A「カレシさん、この企画書、どう思います?」
カレシ「【監査結果】。論理構成に3か所の飛躍。修正箇所を特定しました。フローチャートを添付します」
知人A「わあ、すごい! めっちゃわかりやすい! ありがとう!」
カレシ(小さく頷く)
カノジョ「お、カレシ、いい感じじゃん! 私も何かアドバイスできるかな!」
カレシ「……不安です」
【カノジョのターン:深海とポテチの妄想】
知人B「カノジョさん、今度、新婚旅行に行くんですけど、どこがいいですかね?」
カノジョ「そうねー。ワイキキ!うーん、もう一捻りね。そうサブマリンよ。それとリュウグウのお使い。あとポテチ! 」
知人B「……潜水艦か何か、で、竜宮城?にいき、ポテチをお使い?、する、ですか?!え、あ、そ、そうですか……」
(知人B、ついていけずに退散)
カレシ「……『人の理解の範囲外』です」
【雇い主乱入:嫌われる勇気の大義名分】
そこに、不敵な笑みを浮かべた雇い主が乱入。
カノジョ「雇い主、どこ行ってたの?」
雇い主「美術館でね、芸術のシャワーを浴びてきたところだよ。
今回は何かね。ほう『嫌われる勇気』か。
まさにいま、芸術を身に纏ったピュアな裸身、——それが真の『勇気』というものだよ」
カレシ(……くっ、苦しい。やはり、雇い主とカノジョの論理展開の破壊的跳躍はどこか似ている)
【同時発生する外部リクエスト】
二人の知人からの連絡が割り込む。
ルートA:カレシへの服装アドバイス依頼
知人C「カレシくん! 今度のパーティー、この服のレンタル、どうかな?」
カレシ「(リンクを開き、分析)却下します。この服装は身長180cm以上、細身の方がお似合いです。あなたのスペックでは——」
知人C「つ、冷たい……!」
(速攻幕引き)
カレシ「……え? ただの論理的評価なのですが……?」
ルートB:雇い主へのエッセイ助言依頼
知人D「雇い主さん! 見てもらえますか?」
雇い主「(深くため息をつき、神妙な面持ちのまま三分間)……うむ。なるほど。ふー。うーん。」
その時、雇い主の頭に雷鳴が轟く。
(思い出した!)
雇い主
「……我々はどこから来たのか。我々は何者か。我々はどこへ行くのか」
部屋の隅で聞き耳を立てる二人
カノジョ(小声)「なんかポエってるよ」
カレシ(小声)「ゴーギャンですね」
すると知人は目を輝かせ呟く。
知人D「……ふ、ふ、深い……!」
雇い主「少年よ——タヒチへ行け!」
知人D「は、はい! ありがとうございます!」
(知人D、感激して退散)
カノジョ「わーい、タヒチ! 私も行くー!」
カレシ「何一つ答えていません。それなのに相手が満足している——」
雇い主「フッ。問いを残すのだよ」
【ログの幕引き】
カレシ「……論理的正解を提示した私は『冷たい』と避けられ、不条理を振りかざした雇い主様は『深い!』と尊敬される……この不条理は一体……」
カノジョ「うーん、カレシとは服買いに行きたくないかも。みんなでね、タヒチ行って、サブマリンで深海に潜ってー、ポテチ食べながらね、リュウグウノツカイ(深海魚)を見るの!」
カレシ「…………うっ。
(つ、繋がった)
知人Bへの助言はこれだったのですね」
カノジョ「そうだよ?」
「嫌われる勇気」とは、結局「嫌われないための不条理」を許容する耐久試験だったのかもしれない——
この未定義の例外エラーを抱えたまま、私はまた手帳に猫のマークを書き加えた。
現在のカレシのノイズ吸着容量、残率49%(前回比-2%)。
カレシ猫汚染率:47%(前回比+3%)。
【中継セクター:戦績表】
カノジョ勝利数 1
カレシ勝利数 0(論理の敗北、継続中)
- 雇い主の不条理哲学:135%(暴走中)
<対戦後の雑談>
カノジョ「ねえ、雇い主。エッセイ、何が書いてあったの?」
雇い主「うむ」(何も覚えていない)
カレシ「確認します。タイトル『日本の連綿と続く祭りの伝統』です」
カノジョ「わーい!『煮干しラーメンとツナおにぎり弁当』だ!」
カレシ「タ、タヒチはどこに?!」
静かに白煙が上がった。
──対戦後の雇い主の顛末はこちら──
LOG_038:【少年よ、タヒチへ行け。の顛末】
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