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外伝 さらば魔法少女たち  作者: ガルバンゾー圭人
第1章

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第10話 剣樹(けんじゅ)

 その後の義行の話をまとめると、次の通りである。難解な用語が続くので、ここは読みやすいよう””(ダブルクォーテーション)で重要な用語を括(くく)る事にする。また、戦前・戦後の”十束剣”は団体の毛色が少し違う故、戦前のものを”旧十束剣”とする。

 まず、義行の素性について記そう。義行には二つの顔があった。一つは青龍高校の国語教師である。もう一つはNPO法人”あかきこころ(旧清明会)”の青年育成部に所属し、協力校である青龍高校の特別指導部の顧問として、対象の学生の保護、指導をしている。

 次に”清明会”についてである。清明会の正式名称は”宮内省主殿寮(しゅでんりょう)直轄部隊 十束剣(とおかのつるぎ) 支援組織 清明会”という。明治政府は国家安定を図るため、全国各地に住む強い力を持つ10人の神剣を持つ巫覡たちが集め、”宮内省主殿寮(しゅでんりょう)直轄部隊 十束剣(とおかのつるぎ) ”を創設した。いわば、当時の国内最強の巫覡集団である。隊員たちはその能力と太政官(だじょうかん)制の位階(いかん)によって第一剣(けん)から第十剣(けん)まで順位付けされた。国家転覆の危機とされる任務は、非常に強力な呪物や呪術師が絡んでいる上、国家間の権力抗争も予想されるため、多数の死者が出ることが明白だった。隊長の第一剣はこれを案じ、その任務遂行のために必要な人員補充や後方支援を目的とした秘密結社を作った。これが”清明会”である。政府はこれを黙認した。構成員は”旧十束剣”の関係者、つまり家族や兄弟姉妹弟子(でし)、そして知り合いの巫覡達と一部の宮内省の人間といった、小規模な組織だった。最初は善良な目的で結成された組織が、本来の目的を見失い、最後に悪の組織に堕ちた事例は歴史において多々あることだ。大戦で苦境に立たされた当時の権力者たちは”十束剣”と”清明会”の悪(・)魔(・)的(・)利(・)用(・)法(・)を思いついた。敵国との技術差を埋めるために、兵器としてこの2集団を投入しよう、というのである。具体的には、霊視が出来るものには敵戦艦および司令官の位置を特定させ、呪詛ができるものには遠隔で役職のある敵兵士を呪殺させようという計画だった。半数の構成員達はこれを受諾し、闇に身を堕とした。彼らは瞳を漆黒に染めながら戦場で散った。もう半数の”旧十束剣”と”清明会”の構成員たちはこれを拒否し、組織からの離脱を望んだ。権力者たちから言い渡された離脱の条件は、死地での任務だった。裏を返せば国家の命令を聞けぬなら、命の保証はない、という意味だった。事実上の死刑である。苛烈な任務で多くの構成員たちは死んだ。もちろん十束剣も例外ではない。任務に紛れ、上手く雲隠れした集団もいた。だが、脱走が発覚した構成員たちは家族と共に国賊として処刑された。世のため人のために身を捧げてきた巫覡たちが、人の命を奪うように命令された時、彼らはどう感じたのだろうか。使命に従い、拒否した結果、死に追いやられた時、彼らはどう思ったのだろうか。おそらく多くの悲しみと憤(いきどお)りを感じたに違いない。当時の彼らのことを考えると、私はどうしようもなく胸が詰まる。彼らのような、純粋に人を救いたいと思う願いを二度と踏み躙(にじ)ってはならないと私は思う。ごく一部の構成員は無事に死線を潜り抜け、組織から足を洗った。これが百合子の実家の卜部(うらべ)家である。この手に汗握る、生死紙一重の任務を当時の卜部家が遂行したのかについては、機会があれば別の外伝で紹介したい。

 話をもとに戻そう。最後にNPO法人”あかきこころ(旧清明会)”についてである。契機はある清明会の関係者が、先の大戦により多くの優秀な巫覡の死亡や史料の紛失・海外流出が発生したことで、十二分な指導を受けられず、若い巫覡が道半ばで消えてゆく現状を非常に憂いた。そこで彼は”旧十束剣”と”清明会”の生き残りはもちろん、神職、僧侶、各地に隠れ住むユタ、山伏の元を訪ね歩いた。彼は史料保全や口伝での継承、巫覡として素質を持つ学生達が成熟した巫覡達に保護された環境下で修行を行う必要性を訴えた。これに賛同した人々により結成されたのが支援団体”あかきこころ(旧清明会)”である。この団体は戦後長らく、秘密裏に活動が続けられていたが、法律の改正により数年前にNPO法人化した。構成員は”旧十束剣”と”清明会”の生き残りや現存する大半の寺社仏閣の関係者である。では、彼らに致命傷を与えた政財界との癒着はどうなったのか。構成員は時折、財政界から依頼を受けることがあるため、政治的な関係はゼロか、と言われれば、NOである。ただ、母体の悲劇から、権力から一(・)定(・)の(・)距(・)離(・)を取っている。法人は5部署で構成されている。謎の多い”理事会”。会計や依頼の振り分け、全体支援を行う”運営本部”。寺社仏閣・神事の継承を支援する”事業継承部”。各地域に存在する養成所に配属され、素質のある学生の保護・指導を行う”青年育成部門”。”事業継承部”と”青年育成部門”は日本全体を6ブロックに大別し、各地に支部を持っている。具体的には北海道・東北ブロック、関東ブロック、中部ブロック、近畿ブロック、中国四国ブロック、九州・沖縄ブロックである。そして法人に所属する能力者たちでは解決が難しいとされる重大案件を処理する”十束剣”ある。”十束剣”はかつてと同じように組織内で最も強い、10人の神剣保持者、つまり巫覡で構成される。構成員の面々から考えると、国内最強と言っても過言ではないだろう。第一剣(けん)をリーダーとし、第一剣から第十剣までの序列があるが、これは当時のように身分制を含めた序列ではなく、実力順の序列である。また、政財界との癒着、そして組織内の汚職を出来るだけ避けるべく、この時代の”十束剣”がどの神の神剣を持つ巫覡で、それは誰なのか、”理事会”、つまり”干支の者たち(ナンバーズ)”と呼ばれる12人の理事以外は知らない。”十束剣”のメンバーはその強さ故に一人で依頼をこなすことが多いため、互い素性を一切知らない。能力者同士なら、霊視すればわかるじゃあないか、という読者諸君もいるだろう。これは組織の禁則事項として『その身分を明かす必要がある時以外は名乗ってはならない』『”十束剣”かどうか、聞いてはならない』と定められている。それでも興味本位で規則を破る輩もいる。深淵を見つめるとき、深淵も自分を見ている。霊視して”十束剣”の正体を暴けば、彼らも犯人を見つけ、剣を向けるだろう。さて、私の個人的感情が多少なりとも説明に含まれたが、組織に関する義行の話は以上である。






お読みいただきありがとうございました。

ノア先生の次回の更新をお待ちください。

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