↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄よ、空に眠れ  作者: 木戸陣之助
呪われし都

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
37/50

第三十七話

「すごいですよ、アンジェリカさん!!」


 目を輝かせて驚くエウレルに、思わずたじろぐわたし。そこに気付いたのか、ばつが悪そうな顔をして大人しくなった。

 それよりもだ。大事なのは粉々に砕け散った破片だ。身に覚えがない。だいじなものを壊したとかだったらどうしよう。


「え、えっと……ごめんだけど、エウレル。ひょっとして、この破片って――」

「ああ、大丈夫ですよ!! ちょっと遺跡の残骸を集めてまして」

「だいじょうぶなの? その、壊れちゃったけど」

「はい!! この残骸、強度が高くてですね。何かに使えたらな、と思って取ってたんですけど。まさか、こんな形で役に立つとは!!」


 なんかもう、エウレルの中ではとんでもなく凄いことのようだった。またぴょんぴょんと跳ねて、すごいすごいと喜んでいる。やらかしたわたしが置き去りってどういうことだろう。

 いやいや。


「ってことはさ、遺跡の残骸が欠けるくらいの威力ってことは……」

「はいっ、少なくとも小さな魔獣程度であれば全然耐えられると思います!! むしろ、受け流してダメージにもつながると思います!!」


 そっか。ということは、加速しろ(アクセラレート)の強さ次第で鉄壁まで作れるのかもしれない。ひょっとして、わたし凄いことしているんじゃ……

 その時、バタンと扉が開いた。慌てて目線を下に降ろす。神経が張り詰める。エウレルもしゃがんで、扉を見ないようにしていた。


「だいじょうぶ!? こんな散らかって、まさか――」


 扉を開けた正体は、この家の主である女の子だった。ほっとした――ってしている場合じゃない。


「ごめんなさい!! 散らかしてしまいました!!」

「ごめんなさい!!」


 ふたり揃って頭を下げると、女の子からはそれから何も返事がなかった。

 相当怒っているのかもしれない。急いでふたりで散らかしたものをかき集めて、鞄の中に詰め込む。その間に言い訳を考えに考えた。しかし、結局思いつくことはなく、観念して声に向かってひざまずきした。


「ごめんなさい!! ちょっと、試さなきゃいけないことがあったんだけど、外に出る訳にもいかないから魔法を使ってしまいました!!」

「ごめんなさい!!」


 頭を下げながら、ちらりと横を見るとエウレルもひざまずきして、頭を下げていた。

 女の子は何も言わない。やっぱり怒っているのかもしれない。目を見て謝るべきなのはわかるんだけど、状況が状況だからそれも出来ない。なんかもう、色々とお粗末すぎて泣けてきた。


「……ねえ」

「はいっ!!」


 女の子はいたって落ち着いた様子で尋ねてきた。

 うう、もの凄く怒られる気がする。思わず身が縮こまる。


「お姉ちゃんたち、魔法使えるの?」


 あまり人には見せないように、というルールを思い出す。でも、今更無かったことにはムリだ。


「……はい、ちょっとだけなら」

「ほんと? じゃあさ……ひとつ、おねがいがあるの」

「おねがい、ですか?」

「うん」


 無茶なお願いじゃなきゃいいんだけど……心臓がばくばくと鳴る中、その時を待つ。すると、女の子はわたしの足元にしがみついて、しゃくりあげながら叫んだ。


「おねがい、おかあさんを……おかあさんを、たすけてほしいのっ!!」


 顔をうずめてわんわんと泣く女の子。エウレルは苦い顔をして黙ってしまった。

 どんな風に声を掛ければいいのか、わからなかった。

 下手に約束をしてもいいのか。それとも、突き放すべきなのか。どっちを選んでも辛い思いをさせるのは間違いない。大丈夫、ちゃんとわかっている。

 今、この場で答えを出すべきなのはわたしだ。エウレルに答えさせるなんて、ぜったいにやっちゃいけないことだ。


「おかあさんに、何かあったのかな?」

「おかあさん、ずっと帰ってこないの」

「いつから?」

「わからない。でも、やっと帰って来たと思ったらびしょぬれでっ。目も合わせてくれなくて、話も聞いてくれなくて。それで……あたしを置いて、いなくなっちゃうんだあ」


 鼻をすする音が聞こえる。ローブ越しに伝わる熱は、人の暖かさそのものだった。

 でも、目を合わせてあげることはできない。魔獣かもしれないから。


「もうやだよぉ、ひとりになりたくないよう」


 じゃあ、わたしには何ができる。目を閉じて、じっくり考える。

 わたしはその場にしゃがんで、女の子のことをそっと抱きしめた。


「ごめんね、ずっといっしょにはいられないんだ」

「……お姉ちゃんも、いっちゃうの?」

「うん、やらなきゃいけないことがあるの」


 頭をそっと撫でてあげる。サラサラとした髪質だった。よかった、お風呂には入れているのかもしれない。でも、それだけで寂しさが消えたら苦労はしないよね。


「ごめんなさい。引き留めるようなことしちゃって」

「いいんだよ。我慢する必要なんてないんだよ」


 なぐさめで終わらせたくない。せめて、何かこの子を助ける手立てを。


「おかあさん、一緒に探そっか」

「ちょっと、アンジェリカさん!?」

「大丈夫、旅には支障出さないから」


 止めようとするエウレルに目配せをすると、不服そうにながらも引き下がってくれた。わがままばかりでごめん。


「旧都を出るまで、そのあとはお別れになるけど。それでも良かったら、どう?」


 探してどうなるかなんてわからない。こんな危ない場所だ、最悪の覚悟はしておかないといけない。

 われながら酷いやつだとおもう。でも、これ以上は引けない、付いてきてくれるエウレルのためにも。

 女の子は体を震わせて、


「おねがい。おかあさんを助けて」

ここまで、ご覧いただきありがとうございます。

ブックマーク、高評価お待ちしております!!

広告の下にある★マークを「☆☆☆☆☆⇒★★★★★」にいただけると、ありがたいです!!

非常にモチベーションがあがります!!


レビュー、感想もぜひ頂ければと思います。どうぞ、よろしくお願いいたします!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。