第4話 友人達の激怒
ネオンの光がギラギラと反射する夜の歓楽街。ユウキ・ナガサトは、まるで世界の中心を歩いているかのような足取りで、きらびやかな雑居ビルのエントランスへと吸い込まれていった。
目指す先は、界隈でも指折りの高級ホストクラブ【エデンの園】。
「いらっしゃいませ、ユウキ様!」
「今夜もお美しいですね、姫!」
両脇に並んだきらびやかな男たちの賛辞を浴びながら、ユウキはこれ見よがしにブランド物のバッグをソファへ放り出した。そのバッグの中に入っているのは、自分の汗と涙の結晶などではない。
昼間、友人たちの口座から狡猾に抜き取った、生々しい札束の束だった。
「ふふん、当然でしょ? 金持ってるから私を見て!」
グラスに注がれる最高級のシャンパン。泡が弾けるたびに、ユウキのちっぽけな虚栄心は風船のように膨らんでいく。
「あのさぁ、世の中って本当に単純! ちょっと頭使って口座の番号ポチポチってやっただけで、こんなに湧いて出てくるんだもん。あいつら、私がちょっと甘えた声出せばすぐ信じちゃうんだから。ほんとバカばっかり!」
男たちに囲まれ、高価な酒を一気に煽る。喉を通る冷たい刺激に酔い痴れながら、ユウキは自惚れに満ちた笑みを浮かべた。
「私ってば、やっぱり天才だし? 難しいことわかんないフリしてれば、勝手にみんなが貢いでくれるの。金がすべてでしょ? これが私の生き方ってわけ!」
自分は何者かになれたのだと、誰よりも特別な存在なのだと信じ切っているユウキは、ソファの上で傲慢に足を組んで笑い転げていた。自分の足元が、他人の善意を食い散らかしただけの空洞であることなど、微塵も疑わずに。
その頃――。
夜の底、ひっそりと佇む冷たい石造りの洋館の前。
ユキコ、アキコ、ミサトの三人は、スマートフォンの画面に次々と届く不正利用の通知を睨みつけていた。
『エデンの園 ご利用金額:100万円』
『引き落とし完了のお知らせ』
「……本当に、行っちゃったね」
ユキコの声は低く、怒りで微かに震えていた。
「私たちの生活を削ったお金で、ホストクラブで『天才』気取りか……」
アキコが唇を噛み締め、スマートフォンの明細画面をPDFとして端末に保存する。
「もう慈悲はいらない。全部残ってる。チャットの履歴、口座の送金ログ、引き出された時間と監視カメラの位置」
ミサトは冷え切った手で鞄の取っ手を握りしめ、目の前にある重厚な鉄の扉を見上げた。
扉の脇には、銀色に光る真紅の薔薇のエンブレム。
三人は一切の迷いを捨て、その冷たいドアノブへと手を伸ばした。
自分たちを食い物にして笑う『0円女王様』を、底なしの絶望へと突き落とすための証拠一式を胸に抱いて。




