第9話 アレンジは無限大
ルンルンで黒砂糖づくりを終え、糖分チャージもでき、今後のスイーツづくりもできるようになった。
「黒砂糖で疲れも吹き飛んだし、今日の夜の営業も頑張れそう。」
使った器具をクリーンで洗浄し、片づけているとダンさんが厨房へやってきた。
「こりゃまた、たくさん作ったな。これは、何に使うんだ?」
「これは、お砂糖なんです。いろんな料理やお菓子に使いたくて。」
ダンさんは黒砂糖をしげしげと見て、
「これがねぇ・・・。そうだった、カエデに相談があってだな。」
「はい、なんでしょうか?」
ダンさんは腕を組んで、
「うちは意外と女性客もいてな、その女性客から、フィッシュアンドチップスは美味しいが重かった、お肉も食べたい、でもステーキじゃないものがいい、と要望があってな、見当もつかなくて困っていたんだよ。」
「重たくない肉料理ですか・・・、なかなかの難題ですね。」
わたしも腕を組み、考える。肉料理かぁ・・・。重くない、けど食べ応えもある。そんな都合のいい料理、あったっけ・・・?あ、あれはどうだろう?
「ダンさん、思いつきました!たぶんこれなら、要望に応えられそうです。」
「おぉ、そうか!材料はうちにもありそうか?」
食料庫を一緒に確認。
「うーん、肝心の使いたいお肉がないですねぇ。まだ、間に合いますよね、お肉屋さん行って、買ってきます!あ、これとこれと・・・あれを用意しておいて下さい。」
「わかった、気を付けて行ってこい、準備しておくな。」
わたしは急いで跳ねる小鹿亭を出て、お肉屋さんへ。あらかじめ買うものをダンさんと決めていたので、スムーズに買えた。よし、お肉もたくさん買えたし、今日は売り切れはないかも!そしたら・・・アレンジして・・・へへへ、あれもいいなぁと妄想しながら急いで跳ねる小鹿亭へ戻った。
「ダンさん、戻りました!早速調理開始しましょう!」
「おぅ、おかえり、無事買えたようだな。しかし、こんな硬めの部分でいいのか?せっかくのミノタウロスの肉だぞ?」
そうダンさんが聞いてきた。
「いえ、このお肉だから意味があるんです。さぁ、このお肉をみじん切りにしていきますよ、原型がないくらいにまで叩きます。」
「!?」
驚いて言葉が出ないみたい、でも、これが必要なんだよなぁ。食感やジューシー感を決める、大事な作業なんですよ?
「わかった、やってみよう。しかし、大量だな・・・、手分けして頑張るか。」
「はい、ミノタウロスが終わったら、それよりは少ないですが、オーク肉も同じように叩きます。」
そうして二人で黙々とお肉をたたき、ミンチにしていく。と、もうここで分かった人もいるだろう。そう、人気トップクラス、ハンバーグだ。こうやって、ミンチを作るところからすると、自分好みの粗さにできるし、完成も変わってくるんだよなぁ。なんて考えながら、たたいていく。
大量のミンチ肉を作り終え、ほっと一息。今回は肉の旨味をダイレクトに感じてほしいから、つなぎは使わない。
「お次はオネ(玉ねぎ)のみじん切りです。これも大量にあるので、手分けしてやりましょう。」
「そうだな。うむ、どんな料理になるか、わからんなぁ。」
「とびきり美味しいものになりますよ!さぁ、みじん切りはこれで最後なので、頑張りましょ!」
ひたすら、必要な量のオネをみじん切りにしていく。この世界の玉ねぎを切っても涙は出ないらしい。・・・やっとみじん切りが終わった。ふぅ。
「今度はみじん切りにしたオネをバターで透明になるまで炒めていきます。」
とても大きなフライパンにみじん切りにしたオネを入れて炒める。非力なわたしでは持てないので、ダンさんにお願いする。
「透明になって、水分もだいぶとびましたね。火からおろして、魔法で冷ましていきます。そのまま冷蔵庫?で冷やしておきます。」
次はミンチ肉の出番です。
「ミンチ肉を魔法で冷やして・・・ミノタウロス2.5、オークが1の割合で、お塩を大さじ2~3くらいかな?入れて、手で練り上げます。」
重たくなって、ひとまとまりになったら、冷やしておいたオネを入れます。そして、今回は調味料セットから、黒コショウとスパイス屋さんで買った、ナツメグのようなスパイスを入れ、また練り上げます。おぉ、ダンさん手が大きいから、練り上げるのも早い。
「だいたい手のひらくらいの量をとって、円盤形に丸めます。気持ちだけ真ん中をへこませます。それを中火で温め、油をひいたフライパンへ。5分ほど焼き、ひっくり返して裏面も同じように5分ほど焼きます。程よい焦げ目がついたら、お皿に乗せて余熱で中まで火を通します。」
その間に、ソースづくり。フライパンでバターを溶かし、そこにきざんだ大量のトマとパセリのようなハーブを入れて火を入れていきます。トマの原型がなくなるようにつぶしながら。そこに調味料セットからお醤油を取り出し、ひと回し。塩で味を調えたら、簡単トマソースの完成です。
「トマのソースをハンバーグにかけてっと。かんせーい!トマソースハンバーグです!早速味見してみましょう!!」
ハンバーグにフォークを入れると、肉汁があふれてきた。
「ふぁぁ、いただきます・・・おいひーい!!ミノタウロスのお肉を粗めにかつ多めにしたことで肉々しい感じがありつつ、トマのソースであっさりといただけますね。」
「これもうまいなぁ。今日も足りなくなりそうだな・・・。」
と神妙な顔。
「こんなにたくさん仕込みをしたんだから、大丈夫ですよ!」
わたしは楽観視していた。まさか、今までにないくらい、お客さんが殺到するなんて。
「ハンバーグ二人前、二つ!!」
とアニエスさんから。
「はい、ただいま!少々お待ちください!!」
とわたし。ハンバーグの噂を聞きつけて、女性のお客さんが行列を作るくらい、殺到したのだ!わたしとダンさんはひたすら成形して、焼くを繰り返した。あまりにも忙しくなって、ちょっといたずら心がわいてしまい、一つのハンバーグにチーズを入れて焼いた、チーズハンバーグを作ってしまった。
「アニエスさん、お願いします!」
「はいよ!・・・お待たせしました、トマソースのハンバーグだよ!」
と配膳。どんどんハンバーグを焼いていると、女性の声が上がる。なんだろうと思い、ちょっと食堂を覗くと、どうやらさっきのいたずらチーズハンバーグに当たったらしい。・・・え。ほかのお客さんも?それからはチーズハンバーグもどんどん作って焼いていった。
「ふぅ、やっと最後のお客さんが帰られましたね。・・・疲れたぁ。」
「あぁ、フライパンを持ちすぎて、腕がな。やっぱり残らず売り切れたな。女性の情報網は侮れんなぁ。」
と二人で反省会をしていると、アニエスさんが厨房へやってきた。
「お疲れ様、あたしも動きっぱなしでさすがに疲れたよ。」
アニエスさんもお疲れの様子。今日はさすがにこれ以上は何も作れないや・・・。
「今日は朝から頑張ってくれたから、お給金はしっかり出しとくね。もう今日は休みなさい、明日も朝から頼むよ。」
アニエスさんに言われ、ダンさんも、
「そうだな、後は任せて、また明日よろしくな。」
「はい、ありがとうございます、おやすみなさい。」
そう言って、食堂をあとにした。部屋へ戻り、まずはクリーンをかけて、さっぱりする。そして、こっそりとっておいたチーズハンバーグを神棚へ。
「今日もありがとうございました、お供えのチーズハンバーグです。あ、あと、フィッシュアンドチップスも!美味しくできました。よかったら食べてください。」
そう祈ると、料理が光り、そして消えた。
〈今日もお疲れ様、大人気だったわね。さてさて・・・う~ん、さくさくの衣にふわふわのターラの身がたまらないわね!こっちもと・・・肉々しくて、なのにトマのソースでさっぱり、しかもチーズがとろーり入ってるわ!美味しい♪〉
大喜びで食べる、テラ様。よかった、喜んでもらえて。
〈あなたが作る料理は、美味しくて素敵なものばかりね。少しずつだけど、周りのお店も工夫しようとしてきているみたい。良い兆候だわ。〉
「そうなんですか!近い将来、美味しいものが他のお店でも食べられるんですね、楽しみだなぁ。」
それを聞いてワクワクしてきた。
〈疲れたでしょう。今日はもう休んで、明日も頑張ってね。〉
「はい、おやすみなさい。」
そう言って、テラ様とのおしゃべりを終えた。よほど疲れていたのか、ベッドに横になってすぐに眠りについた。明日こそはお菓子作りをするぞー!




