第8話 甘ーいレンガを作りましょ?
慌ただしくお昼の営業を終え、一息ついた。忙しいお昼の営業の合間に交代で昼食をとったが、少しおなかがすいてきた。・・・よし、こういうときはスイーツだ!疲れているときは甘いものだよね。それに余った時は食堂の隅っこで販売してもいいってアニエスさんたちに許可もらえたし。う~ん、なにを作ろうかな?あ、お砂糖、お砂糖ないとスイーツは作れないや。どうしたらいいかな・・・?サトウキビ、売ってないかな?
宿のカウンターにいたアニエスさんに、
「アニエスさん、ちょっと市場へ行ってきますね。」
「気を付けて行っておいで。今日は昼の営業を頑張ってもらったから、夜の営業は気にしないでいいからね。」
「ありがとうございます。ちょっと疲れましたけど、夜の営業も頑張りますよ!」
そう言うと、
「無理は禁物だよ、ありがたいけどね。じゃあ、いってらっしゃい。」
「いってきます!」
わたしは跳ねる小鹿亭を出た。
市場は昼過ぎにもかかわらず、多くの人でにぎわっていた。わたしはサトウキビが売ってそうなお店を右回りに巡りながら探した。そもそもサトウキビって八百屋さん?それとも違う?見当もつかないなぁ。とにかく情報を得るために八百屋さんに向かった。
「こんにちは。」
「いらっしゃい!今日は何が入用だい?」
陽気な八百屋さんからそう聞かれ、
「実は、砂糖の元になる、サトウキビっていう植物を探しているんです。」
八百屋さんは首をかしげながら、
「サトウキビねぇ・・・聞いたことねぇなぁ。」
「そうですか・・・。あ、南の方から何か入ってきていませんか?」
質問を変えてみた。そうすると、
「そういや、薬屋のやつが南からササのばけものみたいなものが送られてきたって言ってたな。」
!!!もしかすると、もしかするかも!
「どの薬屋さんでした?!」
「お、おぅ、5軒右隣りの薬屋だよ。」
「ありがとうございます、行ってきます!」
お礼の言葉もそこそこに、わたしは薬屋さんに向かった。
「こんにちは!あの、八百屋さんに聞いてきたんですが・・・。」
店内は薄暗く、ひんやりしていた。奥から細い、腰の曲がったおばあさんが出てきた。
「・・・いらっしゃい。薬を求めにじゃなさそうだね、八百屋からの紹介って?」
「実は、南からササのばけものみたいなものが送られてきたって、八百屋さんから聞いて。」
おばあさんはこれを聞いて、嫌そうな顔をしながら、
「そうなんだよ、あんな薪にもならない、長くて場所をとる、使い道がわからんやつは捨てちまいたいよ。あんた、あんなのが欲しいのかい?」
「はい、わたしが想像しているものであれば、あれは必要なものなんです。」
それを聞いたおばあさんは、
「持っていくのは構わんよ、ただ、返品はお断りだよ。」
と怖い顔。
「はい、わかりました。早速見せてもらってもいいですか?」
「ついてきな。」
と、おばあさんの後についていって、奥の倉庫へ。
「これだよ、こんなに送ってきやがって・・・。本当に邪魔なのさ。」
みためは完全にササやタケである。でもこの切れ目の繊維、サトウキビに見えるんだよねぇ・・・。節で割り、かじってみた。
「ちょっ、あんた!?そんなもの、食べられないよ!」
「・・・ん!?甘い!やっぱりこれ、サトウキビです!」
おばあさんは不思議そうに見て、
「これが甘い?」
「はい、これは砂糖の原料なんです!」
これを聞いたおばあさんは驚いて、
「これがかい?!こんなのが白い砂糖になるんだね・・・」
「はい、そうなんです。それで・・・これ、全部買い取ってもいいですか?」
サトウキビはだいたい200キロはありそうだ。
「ここにおいてても腐らせるだけだから、構やしないが・・・持って帰れるのかい?」
「わたし、スキルのアイテムボックスがあるので大丈夫です!」
それを聞き、
「20トラでいいよ、どうせ捨てるものだったんだ、タダでと言いたいがこっちも商売しているからね。それでよければ持っていきな。」
「ありがとうございます、これ、20トラです。」
「たしかに。まいど、ありがとね。」
と代金を渡し、サトウキビをアイテムボックスへ。あ、忘れるところだった、
「また、南からサトウキビが届いたら、わたしに売ってもらえますか?」
「次は確約できないよ。だが、覚えとくよ。」
「はい、ありがとうございます。では、さようなら。」
そう言って、薬屋を後にした。やったー!サトウキビ、ゲットできたぞ!!早速帰って、砂糖づくりだ!とウキウキしながら歩いていると、あれ?あの人は今日も食堂に来てくれた、騎士さんだよね?
「あ、こんにちは、今日もご来店ありがとうございました。」
少し驚いた顔をして、
「・・・あぁ、君か。買出しにきているのか?」
「はい、買出しと言っても個人的なものなので。」
「今度は何を作るんだ?」
そう聞かれ、食堂のメニューを楽しみしてくれているんだとうれしくなって、
「これから、お砂糖をつくるんです!あ、お砂糖と言っても白砂糖じゃないんです。」
「砂糖を作る?できるのか?」
「えへへ、見様見真似ではあるんですけど、作り方は知っているので、ばっちりです!」
(砂糖の精製方法は国家機密だが、なぜ知っている・・・?これは調査せねば。)
わたしはにこにこして、
「もしよかったら、砂糖づくりをお手伝いしていただけませんか?なかなかの力仕事なので、わたし、力が足りなくって。」
「(これは好機)わかった、私でよければ手伝おう。」
「ありがとうございます!じゃあ、跳ねる小鹿亭へ行きましょう!」
ワクワクを隠し切れず、スキップ気味に跳ねる小鹿亭へ。・・・歩幅が違うから、すぐ小走りに、トホホ、もう少し大きくなりたいなぁ・・・。
騎士さんと一緒に跳ねる小鹿亭へ帰ってきた、わたし。
「アニエスさん、ただいま戻りました。」
「おかえりって、なんで、騎士様と一緒なんだい!?」
驚くアニエスさん。
「実は買い物の帰りにばったり会って、今からわたしのお手伝いをしていただけるんです!」
「何がどうして、そうなったのか気になるけど、失礼のないようにね。」
もちろんです!と言いながら食堂へ。うん、今はお客さんはいないね。厨房に大きな鍋がないか、ダンさんに聞こうっと。
「ダンさん!寸胴鍋ってありますかー?」
「おかえり、あるがなんで必要なのか?って、騎士様?!」
帰りに会って、これから手伝いをしてもらえると告げると、
「お前は、怖いもの知らずだなぁ。まぁいい、失礼のないようにな。」
と苦笑いし、厨房を出て行った。
「よし、作業を始めましょう!」
「わかった。」
と騎士さんはうなづいた。そういえば、お名前聞いてなかったなぁ。
「私はランスロットという。君はカエデだろう?」
「え?そうですけど・・・。」
「女将が君を呼んでいるのを聞いたからな。」
なるほど。
「では、サトウキビ・・・砂糖の原料を出しますね、よいしょっと。」
わたしはアイテムボックスから約200キロのサトウキビを取り出した。騎士さん―ランスロットさんは驚きながら、
「(アイテムボックスだと・・・?)これが砂糖の原料か?そうは見えないが。」
「ちょっとここ、かじってみてください。」
と節で折って、短くしてから、ランスロットさんに渡す。不審な様子でサトウキビを見て、恐る恐る口に。
「・・・!甘い・・・だと・・・。」
「そうなんです、そうなんです。この植物、甘いんです!甘い液体を絞り出して、寸胴鍋で煮て、水分をとばして固形状にするんです。それが黒砂糖。白いお砂糖ではありませんが、それも立派なお砂糖なんです。」
わたしの説明を真剣に聞き入る、ランスロットさん。
「それで、お鍋で煮るときに焦がさないようにかき混ぜるんですが、わたしがやろうとすると、お鍋に落っこちそうになっちゃって・・・。」
「なるほど、そこで私なんだな。」
「はい、お願いできますか?」
尋ねると、
「ここまで来たのは、手伝うためだ。構わない。」
「はわ、ありがとうございます!」
では、作業開始!!
まずは『クリーン』でサトウキビをきれいに洗浄します。それから、魔法を使って、サトウキビを絞り、甘い液体をお鍋の中へ。次に、お鍋を火にかけて、しぼり汁を煮詰める。焦がさないように攪拌しながら、水分を飛ばす。ある程度硬さが出てきたら、漁師さんたちから分けてもらった、木の箱に入れて、形を作る。魔法で冷ましながら残りの水分も飛ばす。これで、黒砂糖のかんせーい!!
「割れたかけらがあった!味見味見っと・・・うん、甘ーい♪ランスロットさんもどうぞ!」
と黒砂糖を手渡す。
「なかなか力のいる作業だったな。・・・甘い。本当に砂糖だ。(これは閣下へ報告せねば。)」
ランスロットさんはまじまじと黒砂糖を見ながら、そう言った。
「これがあれば、いろんなお菓子が作れます!ランスロットさん、今日はありがとうございました!!」
そうお礼を言うと、ランスロットさんはなんだか面はゆい顔をして、
「そうか・・・、どういたしまして。」
「あ、これ、お土産です。一緒に作った黒砂糖ですよ、疲れた時にちょうどいいんです!」
そう言って、麻の小袋に黒砂糖を入れ、ランスロットさんに手渡した。
「いただく。では、失礼する。」
と帰っていった。ランスロットさんを見送り、わたしの頭の中はスイーツのことでいっぱいだった。
~第三者視点~
辺境伯の居城へ戻った、ランスロット。
「閣下、至急報告いたしたいことが。」
辺境伯の執務室へ行き、そう言った。
「待っていたぞ、ランスロット。で、報告とはなんだ?」
「はっ、例の少女ですが、国家機密の一つである、砂糖の精製方法をどこかで知り得たようで。これがともに作業し、精製したものになります。」
「なんだと・・・?!これが、砂糖なのか・・・?」
辺境伯は麻の小袋から黒砂糖を取り出し、ランスロットに、
「味見をしたいが、どうだった?」
「私も食したので毒の心配はありません。たしかに砂糖でした。」
「ふむ、ならば一口・・・ん!?確かに砂糖だな。」
辺境伯は難しい顔をしながら、
「危険だな、このままよその公爵領や、ましてや他国に盗られてはかなわん。ランスロットよ、これまで以上にその少女の身辺に気を付けてくれ。怪しい者が接触しないよう、見張るのだ。」
「はっ、承知いたしました。」
~テラ様視点~
キャー!急接近からの共同作業!!!これは熱いわ。女神会を開かなきゃ!これからが楽しみだわ~。見守っているわよ~、カエデ♪




