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第7話 売れ残りを揚げたてに

 昨日のドタバタで疲れていたらしく、ぐっすりだったわたし、カエデ。朝の鐘がなり、ベッドから起き上がる。

 「うーん、良く寝た~。今日は何を作ろうかな?」

 そんなことを考えながら、身支度をして、食堂へ。なんだか昨日よりもお客さんが増えてる気がする・・・、うん、昨日のBLTサンド、すっごく美味しかったから評判になったのかな?厨房へ入り、

 「おはようございます、ダンさん!」

 ダンさんはゆっくりこちらを見て、

 「おう、おはよう、よく眠れたか?」

 「はい、ぐっすりでした。」

 そう答えると、にっかり笑って、

 「そりゃよかった、昨日はいろいろ疲れただろうからな。」

 「そうですね、まさか行列ができるまで人気が出るとは・・・。」

 「いや、それだけじゃないがな。」

 と苦笑い。

 そういえばとダンさんがこう切り出した。

 「実は相談があってだな。」

 「はい、何でしょう?」

 「昨日の行列を知った漁師の連中から相談を受けてな。とある魚がかなり売れ残っているらしいんだ。」

 「それは困りますね、どんな魚なんですか?」

 と聞くと、ダンさんは木の箱を持ってきて、ふたを開けた。そこには立派なタラのような魚だった。

 「こいつさ、ターラっていう。身が柔らかすぎて調理がしにくいと人気がないんだよ。」

 「そんな、この魚、わたしの知ってる魚ならとっても美味しいですよ!」

 「そこで、だ、この魚を使って何かいいメニューを作れないかと相談されたんだよ。」

 なるほど、売れ残ってしまうから捨ててしまうそう。そんなのもったいない!何か良いレシピあったっけ?・・・そうだ!鱈と言えばあれだね。

 「思いつきました!これなら人気でますよ、お酒にもぴったりです!」

 「おぉ、そうか!ありがたい、しかも酒にも合うのか。いいじゃないか、早速教えてもらえるか?」

 「はい、やりましょう!」

 と始めようとしたら、ダンさんが何か思い出したようで、

 「そうだった、カエデにプレゼントがあったんだった。ほら、これだ。」

 ダンさんが出したのは、おそろいのわたし用のエプロンだった。あと、同じ色のバンダナ。

 「ダンさん、これ・・・。」

 「あぁ、うちの大事な仲間だからな、エプロン、必要だろう?」

 わたしはうれしくて、涙目になって、

 「ありがとうございます!すごくうれしいですっ!」

 「喜んでもらえて、こっちもうれしいよ。よし、始めよう。」

 「はいっ!」

 おそろいのエプロンに気が引き締まる。

 「まずはターラを三枚におろします。わたしができたらいいんですが、このターラ、大きくて・・・届かないんです・・・。」

 「わかった、三枚におろすんだな、任せろ。」

 ダンさんは手早くターラを三枚におろした。

 「その次は骨を抜きましょう。これをすることで食べやすさが違います。」

 二人で黙々と骨抜きをした。

 「ふぅ、全部抜けましたね、次は食べやすい大きさに切ります。」

 だいたい、10~15㎝くらいに切り分け、塩をふる。切り身に小麦粉を薄くまとわせる。

 「衣を作ります、小麦粉と塩と、これを入れます。」

 取り出したのは、エールである。

 「エールは少しずつ加えます、しゅわしゅわが抜けないように、ゆっくり混ぜながら。」

 てんぷらの衣の粘度と同じくらいにっと。

 「これくらいのゆるさで。いったん冷やしますね。」

 衣を冷やしておく。次に、ジャガイモ、こっちで言うポテの下処理から。

 「皮をよく洗って、芽を取り除きます。くし形に切り、水につけておきます。」

 油を用意。だいたい160度くらいになるように調整する。

 「油が温まったので、ターラの切り身に衣をつけて、揚げていきます!」

 中まで火が通り、こんがりきつね色になったら、

 「鍋からあげて、油をよくきります。どんどん揚げていきましょう!」

 ターラを揚げ終わり、次はポテ。

 「水気をよくふき取って、油の中へ。これもきつね色になったら、油からあげ、油をよくきります。」

 仕上げに軽く塩をふります。

 「完成~と言いたいところですが、まだ、終わりじゃないんです。」 

 「ん?そうなのか?これで十分な気がするが。」

 「いえいえ、もう一つ大事なソースがあるんです。」

 新鮮な卵の卵黄を二つ、ボウルに入れ、混ぜる。そこに調味料セットからお酢を取り出し、大さじ1、加える。塩も小さじ1/2、加え、混ぜる。

 「ここからが正念場です!このボウルにオリーブオイルをすこーしずつ入れていくので、分離しないようにしっかり手早く混ぜてください。」

 オリーブオイルを160㏄入れ、しっかり混ぜる。するとだんだん白っぽくなり、もったりする。

 「味見してっと・・・うん!これこれ、この味、この滑らかさ!マヨネーズ完成!!さぁ、これでフィッシュアンドチップスの完成です!早速味見してみましょう!」

 どれどれ、まずはお塩を少しかけて・・・、

 「う~ん、さくさくふんわり!ポテもほくほくで美味しい!!・・・マヨネーズで味変してっと。うん、安定のおいしさ!」

 とわたしがルンルンで味見をしていると、

 「・・・!?こいつは・・・エールが欲しくなる、たまらん美味しさだ!!」

 「あ、アニエスさんの分まで食べちゃダメですよ!」

 というとダンさんの手が止まった。

 「あと一つくらい、いいんじゃないか・・・?」

 そんなダンさんの後ろに、

 「二人で美味しいものを食べてるようだね・・・?」

 アニエスさんが仁王立ちしていた。ダンさんは気まずそうに、

 「いや、アニエスにも残そうと思ってな・・・」

 「まったく・・・それが新しいメニューかい?」

 そう聞かれ、

 「はい、漁師さんたちからの相談でターラの売れ残りを解消できるレシピがないかとダンさんから聞かれたので、この食堂で人気が出るレシピを作りました!」

 「そうだったんだね、ありがとうね、あたしも味見させてもらうね・・・さくさくなのに中はふわふわでたまらないね。そのまよねーずっていうのにつけるんだろう?・・・ん、これも美味しいねぇ。ポテも揚げるとこんなにほくほくするんだね。」

 とアニエスさんにも大好評!

 「これなら、ターラの売れ残りも解消できますよね?」

 そう聞くとダンさんは、

 「解消どころじゃない、足らなくなるな。」

 「そうだね、飲兵衛たちにはたまらないからねぇ、こんなエールがどんどん進む料理。」

 今日もまた行列ができるかもしれない。

 「そう言えば、求人ってどうなりました?募集かけるって言ってましたよね。」

 問いかけるとダンさんが、

 「それがな、昨日夕方に募集をかけたのにもかかわらず10人も応募があったんだよ。」

 え!もう10人も応募しているの!?と驚いていると、

 「商業ギルドの職員から、問い合わせが来ていると聞いてな。今朝、募集を終了させてきたんだよ。」

 「今回は何人採用する予定ですか?」

 アニエスさんは悩みながら、

 「昨日の晩、ダンとも話し合ってね、今回は2人、採用することにしたよ。」

 「そうなんですね、ちなみに配膳係ですよね?厨房は今まで通り、ダンさんとわたしでやっていくんですよね?」

 アニエスさんは申し訳なさそうに、

 「しばらくの間は二人でお願いすることになるね、苦労かけるけどよろしく頼むよ。」

 「はい、頑張ります!美味しいメニューもたくさん考えますね!」

 ダンさんは笑いながら、

 「そうだな、どんどん名物を作っていくか。」

 「ありがとうね、さぁ、今日も頑張ろう!」

 そう言うとアニエスさんは厨房を出て行った。それから、わたしはダンさんと一緒にターラの下処理をしていた。黙々と作業していると、アニエスさんの声がする。

 「まぁ!昨日の騎士様、今日はどんな御用ですか?昨日も申しました通り、うちは騎士様が来ていただけるような上等な店じゃないんですよ・・・。」

 「私は気にしない、今日は純粋に客として来た。それと、料理の匂いが通りにまで来て、人が集まりつつあるぞ。」

 「えぇ!?」

 厨房から顔を出すと、昨日の騎士さんがシャツにスラックスのようなズボンのいで立ちで食堂にいた。昨日は気づかなかったけど、ものすごくイケメン・・・。騎士さんは席につき、

 「注文をしたい、今日は何がおすすめだ?」

 「はい、今日は新鮮なターラが入ったので、それを使った、フィッシュアンドチップスですよ。」

 「フィッシュアンドチップス?それはどんな料理だ?」

 「カエデ!説明してもらえるかい?」

 アニエスさんに呼ばれ食堂へ。

 「はい、フィッシュアンドチップスはターラを衣をつけて油で揚げたものと、ポテも油でカラッと揚げた、エールが欲しくなるメニューです!」

 「・・・ふむ、ではそれを一つ。」

 「かしこまりました。少々お待ちください!」

 そう言って厨房へ。


~ランスロット視点~

 やはり、ここには私でもわからない魔力が充満している。それに昨日とは違った、食欲をそそる香りがする。・・・まただ、あの少女を見ているともやもやしたものが胸に浮かんでくる。

 「おまたせしました!フィッシュアンドチップスです。」

 と少女が料理を運んできた。

 「これは・・・。」

 黄金色の衣をまとったターラの切り身がポテの揚げ物の上にのっている。その脇には小さいカップに白いクリームのようなものが入っている。

 「まずは塩を少しふりかけて、お召し上がりください。そのあと、この白いソースをつけて、味の変化をお楽しみください!」

 そう言って厨房へさがっていった。

 フォークとナイフを持ち、ターラの切り身にナイフを入れる。

 「・・・!!!」

 さくっとした感触のあと、ふわふわしたものがある。これがあのターラだと・・・?

 恐る恐る口にする。

 「衣がさくっとして、ターラの身はふわふわと柔らかい。塩がターラの旨味を活かしている。」

 これだけでもうまい。そう言えばこの白いソースもと言われたな。ソースにつけて、一口。

 「これは、なんだ?!酸味がありながらもまろやか。あと引くうまさだ。」

 なるほど、なぜこの店に客が集まりつつあるのか、わかった。たしか、あの少女がメニューを考案しているのだったな、一体何者なんだ・・・?


~カエデ視点~

 ひぇぇ、緊張した~。こっそり食堂をのぞくと、騎士さんは最初は恐る恐るだったけど、だんだんフォークのスピードが上がって、夢中で食べているみたいだった。美味しく食べてもらえたなら、まぁいっか。

 「カエデ!手伝ってくれ、注文に調理が追い付かないんだ!!」

 「はーい!じゃぁ、ポテの下処理しますね!」

 そう言うとダンさんは、

 「頼む、こっちはターラをどんどん揚げていくぞ!」

 これからお昼のピークの時間。今日は昨日よりお客さんが多い気が・・・。フィッシュアンドチップスと一緒にエールもどんどん出てる。どうやら漁師さんたちが来て、お礼の宴会をしているらしい。忙しくお昼は過ぎていった。

 お昼の営業が終わり、アニエスさんに、

 「そういえば、騎士さんはいつお帰りになったんですか?今日すごくお客さん多くて、全然気づかなくて。」

 「あの方なら、食べ終えたらすぐ帰られたよ。ただ、なにやら考え込んでいらっしゃったけどねぇ。」

 「そうなんですね、どうしたんでしょうね?美味しくなかったのかな・・・?」

 そう少し不安になると、

 「そんなことはないよ。帰られるとき、美味しかったっておっしゃってたからねぇ。」

 「本当ですか?!えへへ、うれしいなぁ。」

 なんだか胸がぽかぽかして、うれしかった。


~テラ様視点~

 わたくし、テラメーテル。自然をつかさどる、エディブルリアの主神よ。もうっにやけちゃうわ!だって、あの二人、無自覚に惹かれあっているんだもの。きゃー!本当にステキ!ふふふ~♪二人の恋のお手伝いしなくちゃね♪

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