第6話 つやつや魅惑の甘味
忙しいお昼の時間を終え、そろそろおやつの時間に入ろうかという時刻に。私はあるスイーツを作ろうかと思う。
まずは買ってきたポムリを洗い、皮を剥き、芯を取り除く。切ったポムリを測り、その重さの10%くらいの量のはちみつを用意。直径20㎝くらいの鍋にはちみつを入れ、さらに大さじ1の水も。それを煮詰めていく。はちみつが焦げキャラメル色になってきたら、バターを加える。そしてもう少し色がつくまで煮込む。一度火からおろし、ポムリを入れる。再び火にかけ、ポムリがこげ茶色になるまでじっくり煮込むが今回はしゃきしゃき感が欲しいので、透明感が出たくらいでストップ。鍋にバターを塗り、その鍋にポムリを敷きつめる。お次はパイ生地。小麦粉、卵黄、バターに調味料セットから三温糖を取り出し、混ぜ合わせる。混ざり切ったら生地をまとめ、いったん寝かせる。その間にオーブンの準備、ポムリの入った鍋を予熱していたオープンに入れ、30分ほど火を入れる。オーブンから鍋を取り出し、ポムリをスプーンでつぶして隙間を埋める。それをいったん冷ます。寝かせた生地を取り出し、3~4ミリの円形に伸ばす。それにフォークで穴をいくつも刺し、その生地をポムリの上にかぶせ、鍋に沿うように伸ばし、鍋をオーブンへ。35~40分ほど焼き、オーブンから取り出し、生活魔法を使って冷やす。お皿を鍋にかぶせ、鍋をひっくり返す。鍋を外すと、ポムリのタルトタタンの完成!6等分に切り分けてっと・・・。
「味見味見っと。いただきまーす。・・・う~ん、おいひぃ~い♪」
ほんのり酸味の残ったポムリは少ししゃきしゃき感を残しつつ、さっぱりとした甘さ。さくさく感のあるタルト生地がしっかりとフィリングを受け止めて、さくしゃりの食感が楽しい。これにバニラアイスクリームとか合いそう・・・。テラ様から頂いた、紅茶を入れておやつタイム!
「ダンさんー!アニエスさんー!おやつができましたよー!」
厨房から顔を出し、二人を呼ぶ。食堂で帳簿や求人について話していたよう。
「おやつ?もうそんな時間だったか。どれ、今度はどんなうまいものを作ったんだ?」
とダンさん。アニエスさんは、
「この甘い香りはポムリかい?良い匂いだねぇ。楽しみだよ。」
私は、タルトタタンのお皿と取り皿とフォークを持ち、食堂へ。カラメル色につやつやと輝き、とっても美味しそう、いや、美味しい自信作!
「ポムリのタルトタタンです!お砂糖は極力使わないレシピなんですけど、ポムリが甘くておいしかったので、十分甘さがあって・・・。召し上がれ!」
と二人にタルトタタンを出す。二人は唖然としながら、タルトタタンを口に。すると、
「こりゃすごい、あのポムリがこんな菓子に!?しかもこんなに甘いのに砂糖はあまり使ってないんだって!?」
アニエスさんは驚きながらも食べるスピードは衰えない。ダンさんに至っては、
「・・・(もぐもぐ)。」
と食べるのに集中していた。アニエスさんは、
「少しとはいえ砂糖は高かったろうに。」
「あ、実は少しだけ持っていたんです。それを使いました。」
この調味料セット、無限に使えるから普通に使ってた。危ない危ない、お砂糖の仕入れ先、見つけなきゃ。それか、自分で作るか・・・?なんて考えていると、
「これは、手間がかかっているだろう?店に出すには上等すぎるな。」
「そうだねぇ、これ、どうするつもりだい?」
とアニエスさんに聞かれ、うーん、どうしよう、あっそうだ、こういうのはどうだろう。
「あの、私、食堂の隅っこにお菓子のコーナーを作りたいです!せっかく作るなら、いろんな方に食べてもらいたいなって。もちろん、厨房の方もしっかりやりますよ!いいですか?」
そう言うと、アニエスさんは。
「あんたの負担にならないかい?うちとしては新たな名物ができるのはうれしいけど・・・。」
「俺もいいとは思うが、無理はしてないか?」
ダンさんは心配そうに私を見て、そう言った。
「はい、全然疲れてないですよ!むしろ楽しくて・・・いろいろ作ってみたいってわくわくしているんです。この街の人たちにもっと美味しいものを届けたくて。」
「そうか、いつでも手伝うからな、無理はするなよ。」
ダンさんはそう言ってくれ、アニエスさんも、
「あんたが楽しくできるなら、こっちはこれ以上は言わないよ。ダンも言ってるけど無理はしないでね。」
「はいっ、ほどほどに頑張ります!」
私は次に何を作ろうか、それで頭がいっぱいになった。あ、忘れるところだった、テラ様にも差し入れしようっと。そう思い、厨房へ戻り、一つをマジックバッグへ。
~第三者視点~
今朝、跳ねる小鹿亭でなにやら良い匂いがし、昼食が絶品のサンドイッチが出たらしい。しかも八つ時には甘く、香ばしい香りもする。そんな噂が広がり、辺境伯の耳にも届くほど。実は甘党な辺境伯、この噂を聞き、ある騎士を呼び寄せた。
「来たか、ランスロット。調べてほしいことがある。動けるか?」
騎士にそう命じた。
「はっ。承知致しました。」
騎士が顔を上げる。スッと通った鼻筋、切れ長のきりっとした藤色の瞳。薄い唇からは低く響く声。立ち上がると190㎝を超える、細身ながらも筋肉のしっかりついた体。彼はダークエルフの護衛騎士ランスロット。辺境にいるのがおかしいほどの実力を持った、騎士である。
「実はな、港の近くに跳ねる小鹿亭という宿がある。そこの食堂でとある噂が広がっているらしい。」
「噂といいますと?」
「うむ。なにやら、絶品の料理と正体不明の甘く香ばしい香りがするそうだ。それを調査してきてほしい。」
「かしこまりました、早速行ってまいります。失礼いたします。」
~カエデ視点~
よーっし、手作りソーセージ、作っちゃうぞー!なんて、のんきにダンさんと一緒にソーセージ作りをしていた。うん、いい感じ、これを湯がいてっと。えへへ、味見味見♪
「ぱりっ」
ぱりっとして、中から肉汁が!これも、
「おいし~い!!」
「これは酒に合いそうな・・・これをどうするんだ?」
「えぇっと、スープに入れたり、こんがり焼いてパンにはさんだり、もちろん焼いてそのまま食べても美味しいですよ!」
そんな会話をしていたら、アニエスさんの声が聞こえた。何やらもめてる?いや、困っているみたい。どうしたんだろう・・・?
「騎士様、うちはそんな上等な店じゃありませんから。中央通りには、良いお店がたくさんあります、そちらへ・・・。」
「私が来るのがそんなに困るのか。何か企みでもしているんじゃないか?」
「いえ、そんな滅相もない。知られて痛い腹なんてないですよ。」
「ならば構わないだろう。入るぞ。」
「あぁ、ちょっと!」
とりあえず、パン屋さんにお願いしたコッペパンに似たパンに今焼いたソーセージに、特製トマソースをたっぷりかけて・・・
「かんせーい!」
「おう、新作だな。味見をと思ったが、アニエスは取り込み中みたいだな。ちょっと様子を見てくる。」
とダンさんは厨房を出て行った。せっかく美味しくできたから、早く味見したいなぁ。・・・うん?誰か来た?あ、ダンさんかアニエスさん?と振り返りながら、特製ホットドッグを見せて、
「ホットドッグ、味見しましょ・・・う?え・・・?」
振り返るとそこにはイケメン、とってもイケメンがいた。しかし、おなかがすいていたわたしはお構いなしに、
「あ、これ、新作なんです、ホットドッグ、美味しいですよ!」
「・・・いただく。」
とホットドッグを受け取るイケメン騎士。
(なんだこれは・・・?感じたこともない魔力を感じる。危険性はなさそうだがしかし、香しい匂いが・・・これを食べろと?)
騎士さんが固まったまま動かないので、不思議に思い、
「どうしました?あ、変なものは入ってないですよ!ほらっ。」
とわたしはホットドッグにかぶりつく。
「はわぁ、自家製ソーセージがぱりっとして、肉汁があふれてきて、特製のトマソースがさっぱりして、でも旨味がしっかりあって、美味しーい♪」
わたしが美味しく食べているのを見て、騎士さんも恐る恐る一口。
「・・・!!??これは・・・」
「美味しいですよね!あ、ダンさん、アニエスさん!お二人もどうぞ!」
騎士さんを追いかけてだろう二人が厨房へ入ってきた。わたしは二人にホットドッグを手渡し、
「美味しいですよ!自信作です!」
「いや、それどころじゃないんだが・・・。」
と苦笑いしたダンさん。
「あぁ~この娘ったら・・・。」
と仕方ない子を見るような目でわたしを見るアニエスさん。え、なんかしちゃった?ってあ・・・あぁ~~!!わたしとしたことが!おなかが空いてたからって、知らない人に!!やってしまった・・・。と落ち込むわたし。
「これは、君が作ったのか・・・?」
と騎士さんが小さく質問した。
「え?はい、ダンさんに手伝ってもらいましたが、わたしが作りました。」
そう言うと、
「そうか、美味しかった。噂で甘い香りもしたと聞いたのだが、それも君が?」
「はい、スイーツを作ったんです、タルトタタンっていう。一応残ってますけど・・・食べますか?」
「・・・いただこう。」
それを聞いて、わたしはマジックバッグからタルトタタンを取り出す。
(マジックバッグだと・・・!?)
「それはマジックバッグか?そんな貴重なものをどこで手に入れた?」
「え?これですか?テ・・・じゃなかった上司からです。独り立ちするのに必要だろうって。」
「それはずいぶん太っ腹な上司だな・・・(嘘ではなさそうだ。)」
そんな会話をしながら、わたしは紅茶を入れ、
「どうぞ、召し上がれ!」
と騎士さんに出した。
さっきよりも迷いなくフォークを進める騎士さん。一口、目を見開き、
「これは、ポムリか・・・?甘酸っぱくだが、しつこくない。(毒の類も入っていないようだ。)」
「これも自信作なんです!」
「もし、君が良ければ、これをもらえないだろうか?」
気に入ってもらえたんだとうれしくなって、
「もちろん!あ、どうすればいいですか?何で包みましょう?」
「私はスキルでアイテムボックスを持っている。そこに収納するから、そのままで構わない。」
と言われたので、お皿にタルトタタンをのせて、騎士さんに渡す。
「感謝する。では、失礼する。」
騎士さんは帰っていった。・・・何しに来たんだろう?
「よかったよ・・・まぁ、辺境伯様のところの騎士様だから乱暴なことはしないとはわかっていたけど、ひやひやしたよ・・・。」
「そうだな。とはいえなんの用事だったのか、見当もつかんなぁ。」
ダンさんとアニエスさんはそう言って、汗をぬぐっていた。え、本当の騎士様だったの?!
「辺境伯様のところだったからよかったけど、いきなり食べ物を渡すのはだめだよ!」
とアニエスさんに頬をつねられる。いたたた・・・。
「ごめんなさい~。」
「アニエスの言う通りだぞ、新しいメニューはこっちもうれしいがな。」
「はひ、きをつけますぅ。」
~第三者視点~
「ただいま戻りました、閣下。」
と、帰還したランスロット。
「おぉ、戻ったか。で、どうだった?」
「はっ、跳ねる小鹿亭では・・・(説明)・・・ということのようでした。甘い香りの元となる甘味も手に入れてきました。」
「そうか!早速出してくれ!」
辺境伯に言われ、アイテムボックスからタルトタタンを取り出す。
「なんと、香しい匂いだ・・・つやつやと輝いておる。これは何という甘味だ?」
「たしか、『タルトタタン』と申しておりました。」
「ほう。これは・・・?ポムリか?どれ、一口・・・!!」
一口食べ、目を見開く辺境伯。
「これは、危険だ・・・こんな甘味を食べるのは初めてだ・・・こんなうまい甘味があったのか・・・。甘いだけじゃない、ほんのりと酸味も感じる。これで飽きずに食べられるのか。これを作ったのは少女なのだな?」
「はい、おそらくハーフリンクでしょう。」
「ふむ・・・(今後も新たな美味なる甘味が出てくるだろう。気になる。)、ランスロット、任務を与える。」
「はっ。」
「これからもその店とハーフリンクの少女を追ってほしい。もちろん、日々の業務の合間でだ。それとなく通ってほしい。新たな甘味・・・げふんげふんメニューが出るだろう、私のもとに今回のように持ってきてほしい。頼めるか?」
「拝命致しました、新たなものが出次第閣下の元へお持ちいたします。」
「うむ、頼んだぞ。」
下がるランスロット。
(なぜだろう、あの少女の笑顔が頭から離れない・・・。)
~カエデ視点~
なんかいろいろあったけど、今日も美味しいものに出会えてよかった~。と、忘れないうちにテラ様にお供えしなきゃ。ハンカチの上にタルトタタンとホットドッグをのせた皿を置き、
「テラ様、今日も美味しいに出会えました!ありがとうございます。今日、作ったものの一部です。お召し上がりください。」
すると、タルトタタンとホットドッグが光り、そして消えた。
〈待ってました!わたくし、楽しみにしてたのよ~、これ!う~ん、ホットドッグ美味しいわ~♪〉
「よかった、喜んでもらえてうれしいです!」
〈こっちの甘味もいただくわね。うん、これも最高ね!甘いんだけど、それだけじゃない、ほのかな酸味もあって、飽きずに食べられるわ~〉
好評のよう。こちらもうれしくなる。
〈今日は疲れたでしょうから、このくらいにして、明日に備えなさい。〉
「はい、ありがとうございます。おやすみなさい。」
そして、今夜もベッドに横になったらすぐに眠りについた。明日も頑張るぞー!




