第14話 背伸びする、大人の味
昨夜のテラ様との交信で、迷いがなくなり、考えもまとまった。あとはコンセプトに合わせた、メニューを考えるだけ。
まずは、イートインもできる、パティスリーはスイーツが中心のお酒は少なめ、紅茶をふるまう。ターゲットは、女性が7割、男性が3割かな?う~ん、男性の割合、もう少しあってもいいのかな。
次にバー。軽食とお酒を両方楽しめる。軽食はお酒に合うものを。お酒は・・・おしゃれにカクテルとかどうだろう?そうすれば、女性も楽しめるよね。
パティスリーもバーもメニューは絞っておこう。じゃないと、一人でやるには大変だもの。日替わりとか、きまぐれ、おまかせっていうのもいいかも!そういえば、一つ問題があったんだった。
それは、お酒である。以前ダンさんに言われて酒屋さんに行ったとき、お酒の種類がとても少ないことに驚いた。エールくらいしかない。ミード(蜂蜜酒)とかあるのかと思ってた。どうしたものか・・・と頭を悩ませていると、ひらめいた!無いなら作ればいいじゃないの精神だ。一時期醸造家にあこがれて、いろいろ調べたことあったんだよね。買っていたノートのような紙に書きだしていった。
店名【パティスリー&バー アンブロシエル】
・お昼→パティスリー(スイーツが中心、お酒少なめ、紅茶を出す)
・夜→バー(軽食とお酒、お酒はカクテルが目玉、果実酒なんかもあり、クラフトビールも作ってみたい)
必要なもの→蒸留器や醸造樽など、お酒造りの道具(スキルのなんでも生産が使えそう)、一番重要な白樺の炭!
書き出しながら考えていると、木の素材ってお酒造りにかなり重要かもと気づく。どうしたものかと悩んでいると、そういえばわたしって、聖域アヴァロンの管理を任されていたよね、聖域の木って使えないかな!?たしか、白樺っぽい木があったはず。今夜、テラ様に聞いてみよう!
よし、じゃあ今日はできそうなお酒から挑戦しよう!そう思い、計画を立てているとなんだか裏からぶんぶんと音がする。なんだろう?
裏の庭は、畑や果樹(ポムリにリモーネ、グレプ→ブドウのこと)、そしてテラ様から持たされていた、謎の種・・・ネクタルの種が立派な木に成長して綺麗な花を咲かせていた。ネクタルの木の下に何かいる・・・!?よくよく見てみると、ミツバチさんのようだった。でも、わたしの知っているミツバチじゃない。まん丸としたフォルムで、くりくりの目、どう見ても虫ではない。
〈こんにちは!精霊様、わたしはミツバチ妖精の働きバチです。今日はお願いがあって来たんです。〉
わたしに話しかけてきた。驚きながら、
「こんにちは、お願いってなんでしょうか?わたしにできること?」
〈はい、実は私たちミツバチ妖精は本来魔の森で暮らしているのですが、最近巣の近くにゴブリンの住処ができてしまって、狙われることが多くなってしまったんです。女王様は巣を引っ越して安全な場所を探してきてとおっしゃられて。そんなとき、あなたの噂を聞いて、お助けいただけないかと参った次第です。〉
働きバチさんはそう言うと、
〈ここはいろんな花や、夢にまで見た、ネクタルがあって私たちには最高の場所なんです。お願いです、私たちを助けていただけないでしょうか?〉
「えぇっと、ここでいいのなら、構いませんよ!わたしからもお願いがあります。」
わたしがそう言うと、
〈私たちでできることでしたら。〉
「少しでもいいので、蜂蜜を分けてもらえるとうれしいです。」
〈もちろんお分けしますよ!ありがとうございます!これで仲間たちに良い報告ができます。〉
そう嬉しそうに言って、魔の森へ帰っていった。
さて、巣箱の準備をしなきゃ。夜にするつもりだったけど、善は急げ、テラ様に交信する。
「テラ様、今お時間よろしいでしょうか?」
そう問いかけると、
〈あら、今日は早いわね。どうしたのかしら?〉
実は・・・と説明する。あと、白樺の件も。
〈そうだったの、ミツバチ妖精のことも白樺のことも構わないわ。白樺は早速そっちに送るわね。余分に送るから、ミツバチ妖精の巣箱もそれで作ってあげなさい。〉
「ありがとうございます!これでお酒造りもできそうです。」
そう言うと、
〈できたお酒、わたくしにも分けてくれないかしら?どんな味か、気になるの。〉
「もちろん、お分けしますよ!あ、ミツバチ妖精さんたちが来たので、これで。」
〈えぇ、頑張ってね。それじゃあね。〉
テラ様との交信を終えると、ミツバチ妖精さんたちがやってきた。女王バチさんが代表して、
〈初めまして、精霊様。私はミツバチ妖精の女王です。今回は住処を提供していただき、本当にありがとうございます。〉
「どういたしまして。わたしも蜂蜜を分けてもらうって約束してもらったので、持ちつ持たれつですよ!」
わたしがそう言うと、女王バチさんは嬉しそうに、
〈そう言っていただけると助かります。では、巣を作りたいのですが・・・。〉
わたしはスキルを使い、白樺の木で巣箱を作った。
「こんな感じでいい?」
〈はい、大丈夫です。その巣箱を・・・ネクタルの木の下に置いてください。ありがとうございます、それでは・・・。〉
と、女王バチさんは中へ。
〈ばっちりです。これなら、良い蜂蜜を作ることができます!ありがとうございます。〉
「喜んでもらえてよかった。これからよろしくね!」
ということで、ミツバチ妖精さんたちが庭に住み着いた。
わたしはテラ様から頂いた、白樺の木をスキルで炭に変えていった。1/3を炭にし、残りは樽を三つ作った。あとは、蒸留器と・・・ろ過器だね。ろ過器は、作った白樺の樽の上に、もう一つの樽をのせて、樽の底に小さな穴をいくつか開ける。上の樽の底に白樺の炭を隙間を開けないように、敷き詰める。これで完成。蒸留器はっと思ったが、そういえばわたしって魔法が使えたんだった。蒸留って魔法でできないかな?お水は、テラ様から新築祝いでもらった、聖水が湧き出る噴水の水を使おう。
今回の材料は、挽いていない小麦と大麦を1:1の割合で。作った樽に入れ、ぬるま湯と天然酵母液を入れる。魔法で発酵させ、度数10%前後の「濁り酒」を作る。できたウォッシュを本来であれば蒸留するが、今回は魔法でアルコール分を抽出し、度数90%以上の純粋な精留酒にする。抽出した精留酒に同量の聖水を加えて白樺の樽で作ったろ過器へ。少しずつろ過していく。そうすると、澄み切った、無色透明の異世界ウォッカの出来上がり。名前は・・・
「ケトゥス・ヴィーテ、クジラの塩水ってところかな?よし、これがあると果実酒だったり、カクテルだったり、いろいろ作れるぞ!」
蓋を閉めて、保存の魔法をかけておく。さて、次は何を作ろうかな?あ、あのお酒もあるとお菓子作りに使える!
わたしはアイテムボックスから、サトウキビのしぼり汁(以前黒砂糖を作ったが、その時のが残っていた。)を取り出した。樽に入った、しぼり汁に水を加えて薄める。それから、天然酵母液を入れて、魔法で時短して発酵させる。今度は完全に蒸留しすぎないように、香りを残しつつ、魔法で蒸留する。用意しておいた、オーク材の樽に入れて、ふたを閉めて、魔法で熟成させる。そうすると、琥珀色に輝く、ラム酒、ゴールドラムが出来上がる。
これで、カクテルへつながる、準備が整った。へへへ、カクテル、ずっと飲めてなかったから、楽しみだ♪
材料は、
・ゴールドラム:50ml
・ライム:1/2個(くし形に切っておく)
・黒砂糖:小さじ2
・ミントの葉:10~15枚
・強めの炭酸水:適量
・砕いた氷:グラス一杯分
少し大きめのグラス(細長いもの)に、黒砂糖とライムを入れ、スプーンでライムをつぶし、果汁を出させる。そこに、フレッシュミントを投入する。この時、入れる前にミントの葉を手のひらで叩いてから入れるのがポイント!スプーンで優しく香りを移すようにさっと押さえる。グラスに砕いた氷を入れて、ゴールドラムを注ぐ。冷え冷えの炭酸水を静かに注ぎ、バースプーン(長めのスプーン)で、底に沈んでいる砂糖やライム果汁を氷と馴染ませるように、下から上に優しくかき混ぜる。最後にミントの葉を飾れば、特製異世界モヒートの完成!
ではでは早速・・・ごくっ、
「ふわぁ・・・ラムの甘い香りに黒砂糖のコク、ライムの酸味とミントの爽やかな清涼感がたまらないね!最近蒸し暑くなってきたし、これでさっぱりして最高だよ~♪」
~ランスロット視点~
跳ねる小鹿亭から建て替えて、新しく店をやると聞き、彼女の店に向かった。
「・・・いないのか?」
そう思い、裏に回ってみると、彼女の気配がする。行ってみると、どう見てもほろ酔いのカエデがいた。
「あ!らんすろっとさんだ~。こんにちは~。」
「あぁ、これは一体どうした、顔が赤いぞ。酒の匂いか、飲みすぎじゃないか?」
すると、にこにこしながら、
「じつは、あたらしいお酒をつくったんです~。カクテルにして飲むと最高ですよ!もちろん、そのままでも十分美味しいです!」
何がもちろんなのかわからないが、このままはよくない。
「飲みすぎだ、そろそろやめ・・・
「らんすろっとさん、はい、あ~んして、あ、ごくごくして~。」
グラスを口に近づけてきた。ぽやぽやとした笑顔に、胸が激しく脈打ち始めた。そのままグラスに口をつけ、酒を飲んだ。
「・・・!!?これは爽やかだが、酒本来の旨味もありつつ、飲みやすい。これは進むな。」
だからか、カエデがこんなにも酔っぱらっているのは。しかし、このままではいけない。ドキドキと胸が激しく脈打つのを感じながら、私は彼女からグラスを受け取り、店の中へ。
「もう、今日はおしまいだ。部屋へ帰って、休むんだ。」
目をとろんとさせた、カエデは、
「らんすろっとさん、部屋までつれてって・・・ねむくて・・・ぐぅ。」
「おいっ!?まだ寝るんじゃないぞ!」
寄りかかってきた、彼女の柔らかい体を抱き上げ(心の臓が飛び出すのではないかと言うくらい、胸が脈打つ。)、二階の住居へ。
彼女をそっとベッドへ寝かし、静かに退室した。まだ、私の胸は激しく脈打ったままだ。そして、店を後にした。
その足で中央にある、城へ。閣下に報告をせねば。
「ランスロット、ただいま戻りました。」
「ご苦労。それで、カエデは今回は何を作っていた?」
閣下は執務室の椅子に腰かけ、そう問いかけた。
「おそらく、我々の知らない、飲んだことのない、新種の酒を作り出したようです。」
閣下は立ち上がり、
「何、新種の酒だと!?それは大変だ、ものによってはこのフォレスト・サジの名物にもなりうる。・・・よし、正式にカエデに依頼を出そう。フォレスト・サジを盛り上げる、一つの材料となるはずだ。ランスロット、依頼状を彼女に渡してきてくれるか?」
「承知いたしました。」
閣下は椅子に座り直し、
「酒は一大産業となりうるものだ。依頼状は明日にでも書き上げる。そのあと、彼女へ持っていって、渡すのだ。」
「はっ!」
~テラ様視点~
もうもうもうっ!!いいじゃない!彼、そろそろ気づきそうね。カエデは相変わらずだけど・・・。これで進展があるはず。さぁ、女神会よーー!!!




