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第12話 労働と共に

 ダンさんとアニエスさんが田舎へ旅立って2日が経った。今日は二人と親しかった大工さんに建て替えのお願いをしに行く。どんな人なんだろう?ドワーフだって聞いているけど。ちょっと緊張してきた。うじうじしててもしょうがないし、出かけよう。理想のお店の外観イメージ、簡単に描いてみたけど・・・一応これも持っていこう。

 大通りを二つ横切って、職人さんの工房が数多くある通りへやってきた。アニエスさんは大工さんの工房はすぐわかるって言ってたけど・・・ここ?すごく大きい、日本で言う有名企業みたいな感じ・・・。え、本当にここなのかな、わたし場違いじゃないかな?ドキドキしながら扉を開けて中へ。

 中へ入るとそこは、つやつやの板張りの床に薄いベージュの壁、品のいいシャンデリア、オーク材のカウンターや家具。わたし、もしかして違うところに来ちゃった?!と一人パニックになっていると、

 「いらっしゃいませ。」

 とカウンターにいた、きれいな女性が声をかけてきた。わたしは緊張しながら、

 「えぇと、跳ねる小鹿亭のアニエスさんからこちらの工房を紹介していただいて、建て替えのお願いをしに来ました。」

 「跳ねる小鹿亭の!かしこまりました、工房長を読んでまいります。そちらのソファで少々お待ちください。」

 そう言われて、わたしはふかふかの上等なソファに座って、5分ほど待っていると、一人のドワーフの男性がやってきた。

 「あんたがアニエスたちが言っていた、カエデさんかい?」

 「あ、はい、そうです。」

 「そうか、おっと、わしはジャックス、ここの棟梁と工房長をやっとる。」

 ドワーフらしい、背は低いががっしりとした体格の見た目は中年くらいの男性だった。ジャックスさんは、

 「アニエスたちから建て替えについての話は聞いとる。代金についても、お前さんの要望をできるだけ叶えてやってほしいともな。」

 ダンさん、アニエスさん・・・本当に、ありがとう。

 「そうだったんですね、お二人の気持ち、嬉しいなぁ。」

 そうつぶやくと、

 「娘同然だと自慢していたぞ。さて、商談といくか。どんな店にしたいんだ?」

 「はい、えぇっと、イメージ図を簡単にですけど、あと要望についても書いてきました。」

 「よし、そいつを見ながら話していこう。どれどれ・・・よく描けているじゃないか、これならスムーズに進められるな。」

 わたしが描いたイメージ図を見ながらジャックスさんはそう言い、わたしは要望を書いた紙を見ながら、

 「一階は店舗、二階は住居にしたいです。敷地の半分は耕作地にして、ちょっとした菜園を作りたくて。店舗はイメージ図のようにカウンターがあって、その裏に調理場を設けて・・・」

 そうして1時間ほど話し合った。だいたいの話が固まり、日程の調整に入った。

 「ちょうどよかったなぁ、立て込んでいたんだが、一昨日で片付いてな。お前さんが良ければ明後日からでも大丈夫だぞ。」

 「わたしも予定がないので、明後日からで大丈夫です!あ、あと、家具屋さんってこの近くにありますか?」

 ジャックスさんはにっかり笑って、

 「うちは家具の卸もやっているんだよ、あとで倉庫を見て行ってくれ。・・・忘れるところだった、お前さんにわしも頼みたいことがあったんだった。」

 頼みたいことって何だろう?そう思い、続きを聞いた。

 「お前さん、料理が得意で跳ねる小鹿亭でも人気のメニューを考案したんだろう?そこでだ、頼みってのはな、わしたち大工や職人の食事についてだ。」

 「食事についてですか?なぜなのか聞いても?」

 ジャックスさんは困った顔をして、

 「わしたち大工は外での作業、職人は基本屋内での作業、全く違うように見えるだろう?どっちもな、納期があるんだよ。時間に追われている。そうした時、どうしても食事がおろそかになる。大工も職人も体力仕事なんだよ。しっかり食べないと力が出ない。そこでだ、お前さんの話を聞いてな。手軽に、かつ食べ応えのあるメニューを考えて、教えてほしい。」

 「手軽かつ食べ応えのある・・・あ、ひらめきました!あれなら、手軽です。しかも具材によっては食べ応えもしっかりあって、栄養もある。とある方の協力が必要かもしれないので、少しお時間をいただくことになるかと思いますが、それでもいいですか?」

 「おぉ!ありがたい、こっちがお願いしたことだからな、多少時間がかかっても構わんよ。」

 それじゃあとわたしは

 「建て替え、よろしくお願いします!わたしもメニューの件、頑張りますね。」

 「おう、こちらこそよろしくな。」

 そう言って、握手をかわし、工房をあとにした。その足でおひさまパン屋さんに向かった。

 カランと音のする扉を開けて、

 「こんにちは!店主さん、いらっしゃいますか?」

 そう声をかけると、店の奥から店主さんがやってきた。

 「いらっしゃい、一昨日ぶりだね。今日はどうしたんだい?」

 「実はお願いがあって来たんです。とあるパンを作りたくて。そのパンをここで売ってほしいんです。」

 店主さんはびっくりして、

 「うちとしては願ってもないけど・・・どうしてか聞いても?」

 「はい、今日、ジャックスさんの工房にお邪魔して建て替えの契約をしてきたんですが、その時、ジャックスさんから手軽かつ食べ応えのあるメニューを考えてほしいとお願いされまして。ここで売ってもらえると、大工さんや職人さんが助かるなぁって思ったんです。」

 これを聞いた店主さんは、

 「なるほどねぇ。さっきも言ったけど、うちは大歓迎だよ。あんたのくれたパンの素で美味しいパンを作ることができているからね。」

 「ありがとうございます!」

 「こちらこそ、頼ってくれてありがとうね。さぁ、奥の作業場へどうぞ。早速作ろうじゃないか。」

 そう言ってわたしをパン作りをしている奥の作業場へ案内してくれた。わたしは持ってきていたエプロンを着て、準備オーケー!

 「大工さんたちへの差し入れも含めて、少し多めのレシピで作りますね。」

 材料は次の通り。

  ・小麦粉:300グラム

  ・天然酵母のパン種:200グラム

  ・持ってきた、黒砂糖:小さじ2(ない場合はハチミツでも代用できるかも。)

  ・塩:小さじ1

  ・ぬるま湯(30~35℃程度):100~200グラム(パン種の固さに応じて調整する。)

  ・オリーブオイル:小さじ2


 「まずは、ボウルに小麦粉、黒砂糖、塩、パン種を入れて、ぬるま湯を少しずつ加えながら混ぜていきます。」

 粉っぽさがなくなったら、オリーブオイルを加え、滑らかになるまでしっかりこねる。

 生地を丸めてボウルに入れ、濡れたふきんをかけて一次発酵させる。だいたい生地が2倍の大きさになるまで。暖かい場所で3~6時間(季節や酵母の元気さによる)。寝る前に仕込んで常温または冷蔵庫でオーバーナイト発酵させるのもおすすめ。今回は魔法で短縮。

 しっかりふくらんだら、軽く押してガス抜きし、今回はだいたい12等分くらいに切り分ける。それぞれ丸めて、濡れたふきんをかけて20~30分ほど休ませる。その間にオーブンを240℃くらいに予熱しておく。

 打ち粉をした台で、だいたい4ミリくらいの厚さで円形に伸ばす。天板に生地をくっつかないように並べて、様子を見ながら、5~10分ほど焼く。しっかり焼きすぎないように注意する。焼けたらオーブンから取り出す。

 「これは、ピタパンと言って、半分に切ったら、中が空洞になっているので、いろんな具材をここに詰めて食べるんです!」

 「なるほど、ここではピタパンだけ売って、それぞれで自分の好きな具材を入れて食べるんだね?こいつはいいじゃないか!毎日食べても、具材を変えれば飽きが来ないし、具材によっては食べ応えがある。よく考えられているよ。」

 「じゃあ、ここで売ってもらえますか?」

 店主さんは笑顔で、

 「もちろん!こっちからお願いしたいくらいだよ。作り方も焼くときくらいが気を付ける必要があるだけで他のパンと変わらないから、手間にはならないよ。」

 「ありがとうございます!」

 ピタパンの販売を引き受けてもらい、わたしはおひさまパン屋さんをあとにした。

 跳ねる小鹿亭に戻ってきて、厨房でピタパンをレシピの分量で作った。次は具材の準備!今回は食べ応えのある、というリクエストがあったので、お肉も野菜も摂れるものをチョイスした。

 まずはお肉の具材から。材料は、次のとおり。


  ・オークの肩ロース肉:1キロ

  ・塩と胡椒:適量

  ・オリーブオイル:大さじ1

  ・黒砂糖:大さじ2

  ・おろしニンニク:小さじ2

  ・なぜか調味料セットにあった、カレー粉:大さじ1

  ・お醤油:小さじ2(焼く前に塗る)

  ・ポムリジュース:200グラム


  材料A

  ・細かく刻んだトマ:1個

  ・ハチミツ:大さじ1

  ・お醤油:大さじ1/2

  ・カレー粉:小さじ1

  ・おろしニンニク:小さじ1

  ・リモーネ(レモン)汁:小さじ1

  ・粒マスタード:小さじ2


 お肉の水分をしっかり清潔な布でふき取っておく。塩と胡椒を強めにふりかけて、下味をつける。

 黒砂糖、おろしニンニク、カレー粉、お醤油を混ぜ合わせて、お肉の表面全体にすりこんでいく。そのあと30~1時間ほどお肉を寝かせる。

 寝かせた後、フライパンにオリーブオイルをひき、表面に焼き色をつけていく。

 大きな鍋を用意し、お肉を入れた後、ポムリジュースを入れ、弱火でふたをして2~3時間じっくり火を入れる。今回は魔法で短縮する。

 肉を取り出し、温かいうちに2本のフォークを使って細かく引き裂く。

 小鍋に、材料Aを入れて、火にかけ、ヘラでとろみが出るまで混ぜる。火からおろし、少し冷まして粒マスタードを入れて混ぜ、ソースを作る。

 お肉の入ったボウルに煮汁をソースの半分の量入れて、ソースも入れる。そして、しっかり和えると、特製プルドポークの完成!

 次はプルドポークと一緒に挟む、ザワークラウトの準備。

 材料は、


 ・キャベ(キャベツのこと):1キロ

 ・塩:20グラム

 ・ローリエ:1枚

 

 キャベは千切りにし、ボウルに入れる。そこに塩を加えて、手でしっかり揉みこむ。しばらく置くと水分がたっぷりと出てくるので、ローリエを忘れず入れる。

 煮沸消毒とクリーンをかけた大きな瓶にキャベを詰めていく。完全にキャベが汁の中に沈んだ状態にする。そのあと、除いていた一番外側のキャベの葉を一枚かぶせてなるべく空気にふれないようにする。

 そして、軽く瓶のふたを閉めて、直射日光の当たらない、常温の室内で1週間くらい発酵させる。今回はまたまた魔法で時短。

 汁が白く濁り、小さな泡が出てきて、舐めてみて心地よい酸味があれば完成!完成したら、かぶせておいたキャベの葉は取り除く。

 これで、お肉と野菜を美味しく、かつ食べ応えばっちり。プルドポークのほかには、定番の特製ベーコンを使った、BLTも用意。作ったピタパンサンドをアイテムボックスに入れてしまう。あ、あとはあれもあるといいかも!

 そう思い立ち、市場へ向かった。作り方は知ってるけど、初めて作るからなぁ。うまくできるといいな。

 お目当てのものは、驚くことに錬金術の素材のお店にあった。・・・どんな風に使うのか謎だけど、手に入ったので次はスパイス屋さんに行く。高かったけど、これもお目当てのものがあったので購入。帰路につく。

 次回へつづく。

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