幹部会議
試験期間で投稿が遅れてしまいました。すみません
宣言を終えたアトラスは、集まった領民たちをゆっくりと見渡した。
疲れきった顔。
それでも希望を探すような目。
アトラスは静かに言う。
「みなの寝る場所は用意してある」
「今日は休め」
「明日も復興作業は続く」
少し声を強める。
「だからこそ今日は、明日のために体を休めろ」
そして幹部たちへ視線を向けた。
「幹部はこの後、我が家の会議室へ集まれ」
「先ほどの宣言の詳細を話す」
それだけ言うと、アトラスは踵を返した。
領民たちはざわめきながらも、それぞれの場所へ散っていく。
希望と、不安を胸に。
しばらくして、アウローラ家の会議室。
重い木製の扉が閉じられた。
そこに集まったのは、ヴァスタスの中枢七名。
領主
アトラス・アウローラ
共犯者
セラフィナ・ヴェスティア
黒鳳軍事統轄地区長
アレス・クロスハート
黒鳳兵団副団長
イリーナ・ノクシア
ヴァスタス工場地区長
ギアード・ヴァルク
ヴァスタス商業地区長
クリスタ・クラウス
ウルガ族族長
ルディ
テーブルの中央に座るアトラスを中心に、円を描くように席が並んでいる。
誰も口を開かない。
アトラスが口を開いた。
「では──」
「領地強靭化および自立化、一カ年計画の詳細を話す」
全員の視線が集まる。
「主に三つだ」
アトラスは指を一本立てる。
「一つ目」
「食料問題の解決」
「農地拡大と食料自給」
ギアードが腕を組みながら言う。
「それはまあ当然だな」
アトラスは頷く。
「そのため、領地内の未開墾地域を開墾する」
「これにより、最低でも領民全員分」
「そして余剰分の食料を確保する」
アトラスの視線がルディに向く。
「この作業はウルガ族に任せたい」
ルディの鋭い目が細くなる。
「……理由は?」
アトラスは迷いなく答える。
「お前たちは山岳地帯で農業を成立させた」
「不毛な土地を畑に変える技術を持っている」
ルディは少しだけ笑った。
「なるほど」
「よく調べているな」
アトラスは続ける。
「期間は五ヶ月」
「魔法の使用は許可する」
「できるか?」
ルディは即答した。
「問題ない」
「ウルガ族の名にかけてやろう」
補足するアトラス。
「残りの7ヶ月で芋類を栽培してくれ」
アトラスは二本目の指を立てる。
「二つ目」
「防衛力の強化」
アレスの目が鋭くなる。
「領地を囲う壁を修繕する」
「そして魔法付与」
「さらに魔導砲を設置する」
アレスが思わず口を挟む。
「壁全体に魔法付与?」
「それは王国でも一部しかできない高等技術です」
「そんなことができる者は──」
アトラスは淡々と言った。
「俺がやる」
一瞬、会議室が静まり返る。
アレスはゆっくりと頭を下げた。
「……さすがです、アトラス様」
アトラスは気にする様子もない。
「兵団には修繕作業と砲台設置を任せる」
「アレス、できるか」
「問題ありません」
アレスの返答は即答だった。
アトラスは三本目の指を立てる。
「そして最後」
一拍置く。
「魔導列車の開発」
沈黙。
そして次の瞬間、会議室がざわめいた。
「はぁ!?」
声を上げたのはギアードだった。
「旦那、それは……」
「テクノリアの魔導列車のことか?」
テクノリア。
ルミナール王国も属するグランテリス大陸最大の科学国家。
世界中から科学者が集まる知の都。
アトラスは頷く。
「そうだ」
ギアードは首を振る。
「無茶だ」
「王都の科学者が束になっても再現できなかった」
「それをこの領地でやるってのか?」
アトラスは静かに言う。
「できる」
ギアードは眉をひそめた。
「根拠は?」
アトラスは答える。
「俺は知っている」
「テクノリアの科学者にも負けない科学者を」
そしてイリーナを見る。
「イリーナ」
「そろそろ帰ってくる頃だな?」
イリーナは頷いた。
「はい」
「明日、フェデル様がテクノリアから帰還されます」
アトラスは言った。
「フェデルがいれば魔導列車は作れる」
そしてギアードを見る。
「理論と設計はフェデル」
「だが作るのはお前たちだ」
「ヴァスタスの技術力が必要だ」
ギアードはしばらく黙り込み、そして笑った。
「面白ぇ」
「旦那の賭けに乗る」
その様子を見ながらセラフィナは思う。
『マスターがここまで信頼する人……』
『どんな人なのかしら』
一方アレスは別のことを考えていた。
『フェデルが帰ってくる……?』
『それはつまり……』
『アトラス様と過ごす時間が減る……』
『これは対策が必要』
アトラスがふと思い出す。
「そういえばアレス」
「お前フェデルと仲良くしてただろ?」
アレスは慌てる。
「仲良くなんてありません!」
会議室に小さな笑いが起きた。
アトラスは話を締める。
「以上が一カ年計画の内容だ」
「クリスタ、商業地区は資材と流通の管理を頼む」
「承知しました」
「セラフィナ」
「住宅地区の復興は引き続き任せていいか」
セラフィナは笑う。
「任されたわ」
「でも、高くつくよ?」
アトラスは言う。
「この間の食事の時おかわりまでしていたステーキをもっと用意しよう」
セラフィナは顔を赤くする。
「そんな食いしん坊じゃ……///」
「じゃあ無しで」
「もらうわよ!」
会議室に笑いが広がる。
だがアトラスは再び真剣な顔になる。
「この計画は失敗できない」
「ヴァスタスの未来がかかっている」
静かに言う。
「全員、全力を尽くせ」
「解散」
幹部たちは席を立つ。
アトラスは心の中で呟いた。
『この計画が失敗すれば』
『ヴァスタスは終わる』
『だからこそ──』
『必ず成功させる』
どうだったでしょう?魔導列車とかありがちな設定も入れてみました!




