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夜に名を与える  作者: ベリドット
黒の都

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13/20

死は償いなり得るか

ぜひ読んでください!

王立騎士団白虎隊と、ヴァイス・エドワードが去った戦場。

そこには、未だ状況を理解できず呆然と立ち尽くすウルガ族の姿があった。

対する黒鳳兵団は違った。

一切の気の緩みもなく、高い集中力と戦意を保ったまま、淡々と包囲を維持している。


このまま戦闘を続けたとして、結果は火を見るよりも明らかだった。


抵抗を失ったウルガ族は、次々と拘束されていく。


その中で先ほどアトラスの命を狙った男だけは、拘束されていなかった。

だが、剣を振るう気力もなく、ただ立ち尽くしている。


『……俺たちは、騙されていたのか?』

『一族の掟を破り、罪のない者たちに刃を向けてまで……』

『それでも俺たちは被害者で、大義があると疑いもしなかった』


黒鳳兵団の兵が斬りかかってくる。

男はそれを反射的にいなし、打ち倒す。

だが、そこに意思はなかった。


『それが今はどうだ』

『白服の男は、俺たちをただの駒として使っただけだ』

『それに、疑いもせず乗せられた』

『今や大義も、未来もない』

『……この戦が終われば、過去すら失う』


気づけば、男の前にはアレスが立っていた。

怒りを抑えきれぬ瞳で。


「重力系魔法 グラヴィティ・ショット」


重力が一点に収束し、男を吹き飛ばす。

同じ光景。

だが、先ほどとは違う。

男の胸に、もはや闘争心はなかった。

あるのは後悔と、底知れぬ憎悪だけだった。


『俺たちが何をした』

『山奥で、伝統と共に生きていただけじゃないか』

『害をなす者以外には、何もしていない』

『なのに王国は俺たちを蛮族と呼び、欲のために消そうとする』

『……欲で人を消そうとする奴らの方が、よほど蛮族じゃないか』

『どこで間違えた』

『白服の男の話を聞いた時か』

『信じた時か』

『それとも、変わることを拒んだ時か』


その前に、アトラスが歩み寄る。

男は、かすれた声で問いかけた。


「なぁ……俺たちは、どこで間違えたんだ?」


アトラスは即答しなかった。

だが、静かに告げる。


「それは俺には分からない」

「だが、あえて答えるなら」

「自分たちの未来を懸ける選択を、他者の言葉で決めたことだ」


男は歯を食いしばり、頭を下げる。


「騙されたとはいえ……」

「お前たちの領地を荒らし、民を傷つけた」

「許されるとは思っていない」

「だが……」

「俺たちの死で」

「ガキ共だけは、許して助けてくれ」


その言葉に、アレスの身体が怒りで震えた。


「……なんて自分勝手な要求」

「私たちの地を、家族を傷つけたのだぞ?」

「そんな者たちの頼みを聞く義理などない!」


セラフィナが制止しようとするが、アレスはそれを振り払う。

アトラスは、冷たい目で男を見下ろした。


「その要求を、俺が聞くと思うか?」


男は地に手をつき、叫ぶ。


「頼む!」

「ガキ共は何も悪くない!」

「大人に巻き込まれただけだ!」

「あいつらは……まだ生きなきゃならないんだ!」


アレスは剣を抜き、構える。


「……もう聞くに堪えない」

「死ね」


剣が振り下ろされ――

途中で止まった。

アトラスが、素手で刃を掴んでいた。


「アトラス様!?」

「なぜ……!」

「お手から血が……!」


アレスは自身がアトラスを傷つけたことに狼狽える。

アトラスは気にも留めず、第1部隊に問いかける。


「被害状況は?」

「死者ゼロ。重傷者少数、軽傷者多数です」


その報告に、アトラスはわずかに安堵の息を吐いた。


「……よくやった」


そして、ウルガ族の男へ向き直る。


「報告通り、死者はいない」

「だが――」

「死が迫る恐怖」

「家を無くす絶望」

「大切なものを失うかもしれない恐怖」

「それを刻まれた者は大勢いる」

「その傷は、癒えないかもしれない」

「彼らにとって、お前たちは恐怖であり、憎悪の対象だ」


また視線が冷たく鋭くなる。


「それで?」

「死ぬだけで許されると思うか?」

「死など、甘い」

「甘すぎる」

「お前たちは、償わねばならない」

「ヴァスタスの民を守れ」

「ヴァスタスの発展に、その身を捧げろ」

「お前たちの過去の栄光もこれから残すはずだった歴史も無くす」

「憎まれ続けるだろう」


一拍置いて、告げる。


「さぁ、選べ」

「弱者のまま、騙された蛮族として自死するか」

「俺の配下となり」

「ヴァスタスの盾となり、剣となる――猟犬になるか」


男は震える声で問い返す。


「後者を選べば……」

「奴らに、復讐できるのか?」

「ガキ共は、助かるのか?」


アトラスは静かに頷く。


「あぁ」

「――お前たち次第だがな」


男は、深く、深く頭を下げた。


「俺たちは償う」

「そして……」

「領主たるあんたの、ヴァスタスの盾となり、剣となる」

「猟犬になってやる!!」

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