第6話「パーティー編成」
冒険者ギルド。
そこは夢と希望が集まる場所。
魔物を倒し、財宝を手に入れ、仲間と共に成長する。
普通なら、異世界に来た主人公が最も輝く場所。
しかし、卑野劣呉にとっては。
人生で最も居心地の悪い場所だった。
「……」
ギルド内に入った瞬間、大量の視線が突き刺さる。
「……あれが噂の」
「森から来た全裸の男」
「裁判で勝った変人だろ?」
違う。
違うのだ。
劣呉は心の中で何度も叫ぶ。
しかし、説明しようとすると余計怪しまれる未来しか見えない。
なぜなら、
「俺は裸になりたくてなったわけじゃなくてですね」
この説明。
普通の人間から聞いたら。
完全に変態の言い訳だった。
そんな劣呉にも、冒険者として避けられない試練があった。
ギルド条例。
『冒険者登録した初心者は、安全確保のため最低4人以上のパーティーを結成し、共同で依頼を受けること』
つまり、1人では冒険できない。
「パーティーを組んでください」
受付嬢は笑顔で言った。
「……」
劣呉は周囲を見る。
冒険者たちが仲間を探している。
楽しそうに話す人々。
自然に輪ができていく。
だが、劣呉は動けなかった。
(話しかける……?)
(いや無理だ)
(何て言えばいい?)
(こんにちは? 一緒に冒険しませんか?)
(いや、その前に俺の噂を知ってたら終わる)
元引きこもり。
コミュニケーション能力。
ほぼゼロ。
さらに。
名前より先に広まった称号。
《森から来た全裸男》
これが強すぎた。
「……」
「……」
誰も近づいてこない。
劣呉も近づかない。
結果。
数十分後。
ギルド内で一人だけ余る男が完成した。
「……」
受付嬢が困った顔をする。
「卑野さん」
「はい」
「あと一人だけ空いているパーティーがあります」
「お願いします」
もはや選択肢はなかった。
案内された先。
そこには三人の男がいた。
一人目。
身長二メートル近い大男。
腕の太さが普通の人間の太ももくらいある。
二人目。
巨大な斧を背負った筋肉の塊。
三人目。
笑顔なのに威圧感がすごい、筋肉系冒険者。
全員。
筋肉。
筋肉。
そして筋肉。
「おう、新入りか!」
大男が笑う。
「俺たちのパーティーに入れてやる!」
劣呉は思った。
(怖い)
(絶対怖い)
(でも断ったら一人)
「よろしくお願いします」
こうして。
卑野劣呉は筋肉マッチョ三人組に加入した。
「ちなみに名前は?」
一人が聞く。
「卑野劣呉です」
「ほう」
「変わった名前だな」
そして、
数秒後。
「……あ」
一人が気づく。
「もしかして」
「森から来た裸の?」
空気が止まる。
劣呉も止まる。
「違います」
「いやでも」
「違います」
「裁判になった?」
「なりました」
「本物じゃねぇか!」
三人の筋肉男たちは大爆笑した。
「面白いやつが入ってきた!」
「こんな新人初めてだ!」
「冒険する前に伝説作ってるじゃねぇか!」
劣呉は困惑する。
(え、そこ笑うところなの?)
普通は引くだろ。
距離を取るだろ。
なのに。
この三人は違った。
「まあいい!」
「冒険者なんて変な奴の集まりだ!」
「裸で街に来るくらい普通だ!」
「普通ではないです」
劣呉は即答した。
こうして。
卑野劣呉の初パーティーが完成した。
コミュ障勇者。
噂だけ有名な変態疑惑男。
そして、筋肉だけで会話する三人の男たち。
世界を救う予定のパーティー。
その始まりは、史上最高に不安だった。




