第5話「冒険者になる前に変態認定されていた」
裁判に勝利し、異世界での自由を手に入れた卑野劣呉。
普通の異世界主人公なら、ここでこう考えるだろう。
「冒険者になって、魔物を倒して、仲間を集めて、いつか世界を救う」
しかし、劣呉が最初に考えたことは...
「金がない」
だった。
現実は厳しい。
異世界だろうが何だろうが、食事をするにも、寝る場所を確保するにも、金が必要だった。
そこで劣呉は街の中心にある冒険者ギルドへ向かった。
「冒険者になれば仕事がある」
《生存術》で判断した結果、それが最も効率的な生存方法だった。
……ただし。
劣呉には一つ問題があった。
「……あの人じゃない?」
「森から裸で出てきたっていう……」
「全裸で街に入ろうとした人?」
街を歩くだけで、なぜか視線が集まる。
理由は簡単だった。
卑野劣呉。
異世界初日の行動。
森から全裸で脱出。
門番に発見される。
警察に逮捕。
裁判。
この一連の出来事は、なぜか街の噂話として広まっていた。
しかも異世界の情報伝達速度は異常だった。
魔法通信、冒険者ネットワーク、酒場の噂話
様々な経路を通り、たった数日で。
『森から現れた全裸の男』
という謎の称号が完成していた。
「……違うんだけどな」
劣呉は小さく呟く。
しかし、否定すればするほど怪しく見える。
「俺は好きで裸だったわけじゃない」
そう言うたびに、
「言い訳してる」
「やっぱり変態なのでは?」
という目で見られる。
完全に悪循環だった。
そして、
冒険者ギルドに到着。
巨大な建物。
多くの冒険者。
壁には依頼書。
まさに異世界らしい場所だった。
「ここから始まるのか」
劣呉は少しだけ期待した。
受付へ向かう。
「冒険者登録をお願いします」
「はい、登録料は銀貨5枚です」
「……」
劣呉は財布を見る。
裁判後にもらった、雀の涙ほどの生活支援金。
そのほとんどが。
一瞬で消えた。
「待って」
「はい?」
「俺、冒険者になるために生活費を失ったんだけど」
受付嬢は笑顔で答える。
「よくあることです」
「あるの!?」
劣呉は絶望した。
異世界に来て数日。
魔王にも会っていない。
魔物とも戦っていない。
なのに。
すでに人生最大級の危機に何度も遭遇していた。
登録を終えると、冒険者カードが渡される。
「これで今日から冒険者です」
劣呉はカードを見る。
名前。
ランク。
能力情報。
そして、
備考欄。
「……ん?」
そこには小さく文字が書かれていた。
『通称:森から来た裸の男』
「消してくれません?」
「有名なので無理ですね」
「そんな理由ある!?」
劣呉は天井を見上げた。
勇者として華々しいスタート。
そんなものは存在しなかった。
彼が異世界で最初に獲得した称号。
《生存者》
ではなく。
《全裸の変人》
だった。
しかし、本人はまだ知らない。
この妙な噂が。
後に世界中で知られることになる、卑野劣呉の最初の伝説になることを。
なんかそんな面白くない...
もっとカオスにしなければ!




