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第25話 残りの時間

 王都レグナス。

 緊急会議室。

 壊された城門の修復が進む中、勇者と卑野劣呉は地図を広げていた。

「奴は必ずまた来る。」

 勇者が静かに言う。

「それまでに情報を整理する。」

 劣呉は手を挙げた。

「あの斎藤って人、いったい何者なんです?」

 勇者は少しだけ目を閉じる。

「……元は教師だ。」

「教師?」

「ああ。」

「科学を教える教員だった。」

 劣呉は意外そうな顔をする。

「普通じゃないですか。」

「普通ではなかった。」

 勇者は首を横に振る。

「発想が常軌を逸していた。」

「生徒からも恐れられ、嫌われていた。」

「授業中でも実験を優先するような男だった。」

 劣呉は思わず苦笑する。

「なるほど……。」

「いや、なるほどじゃない。」

 勇者は真顔だった。

「奴はこの世界へ転生したあとも変わらなかった。」

「むしろ加速した。」

「知識と狂気。」

「その二つだけで魔王を倒した。」

「えっ。」

 劣呉は思わず立ち上がる。

「魔王を!?」

「正確には。」

「種族値を極端に振った。」

 勇者は紙に二つの項目を書いた。

 テカリ率

 カリスマ

「この二つだ。」

 劣呉は紙を見る。

「……ん?」

「テカリ率?」

「そうだ。」

「そして。」

 勇者はもう一つの項目を指差す。

「カリスマ。」

 数値を見る。

 -∞

「マイナス!?」

 勇者は真顔でうなずく。

「誰からも好かれない。」

「誰もついて来ない。」

「本人も気にしない。」

「だが。」

「テカリ率だけは異常だった。」

「意味が分からないんですが。」

 勇者は腕を組む。

「私にも分からない。」

「分からないが。」

「その異常なテカリが奴の能力と結び付き、魔王を倒すほどの力になった。」

 劣呉は頭を抱えた。

「テカリで魔王倒したんですか……。」

「そうだ。」

 勇者は迷いなく答える。

 会議室に沈黙が流れる。

 しばらくして、勇者が窓の外を見た。

「問題はそこじゃない。」

「え?」

「奴には、もう時間がない。」

「時間?」

「神になるための準備は、ほぼ終わっている。」

「巨大魔鉱石。」

「黒染結晶。」

「新たな生命。」

「すべてが揃い始めている。」

 勇者は静かに剣へ手を置いた。

「次に動き出した時。」

「世界は本当に終わる。」

 劣呉は乾いた笑みを浮かべる。

「……なんか、国家魔法使いになったばっかりなのに、仕事のスケールがおかしくないですか?」

 勇者は初めて小さく笑った。

「安心しろ。」

「私もそう思っている。」

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