第24話 厄災の始まり
城門の下に刻まれた巨大な転移魔法陣。
淡い光は次第に強くなり、辺り一帯を照らし始めた。
「来るぞ!」
勇者が静かに剣へ手を添える。
次の瞬間。
ブワァッ!!
眩い光が弾けた。
そこから現れたのは――
「……。」
「…………。」
誰も言葉を失った。
現れたのは一人の老人。
頭は見事なセンターパート。
しかし、その中央だけが綺麗に禿げ上がっている。
服装はパンツ一丁。
その上から白衣を羽織っている。
だが、その白衣は煤でも付いたように黒ずんでいた。
老人は周囲を見渡し、満足そうに頷く。
「ふぉっふぉっふぉ。」
「良い空気じゃ。」
沈黙。
兵士たちは混乱するばかりだった。
「……誰だ?」
勇者だけは険しい表情を崩さない。
「あいつか。」
劣呉が小声で尋ねる。
「知っているんですか?」
勇者は静かに答えた。
「ああ。」
「ハゲカタストロフを引き起こした張本人。」
「名前は――」
「斎藤」
その名が響いた瞬間。
空気が一変した。
「馬鹿な……。」
「死んだはずでは?」
勇者は頷く。
「かつて魔王との戦いで相打ちとなり、死亡した。」
「……そう記録されている。」
勇者は斎藤を睨み続ける。
「だが違った。」
「奴を神として崇拝する集団。」
「禿光教会」
「奴らが儀式によって斎藤を復活させた。」
劣呉は思わず息を呑む。
「復活……。」
斎藤はニヤリと笑った。
「その通りじゃ。」
「いやぁ、死ぬかと思ったわい。」
「死んでたんですよ!」
劣呉が思わずツッコむ。
斎藤は気にする様子もない。
「さて」
「わしの目的を教えてやろう。」
白衣を翻し、両手を広げる。
「わしは神になる。」
静まり返る広場。
「そのためには三つ必要じゃ。」
一本目の指を立てる。
「新たな生命を誕生させること。」
二本目。
「世界を支配すること。」
三本目。
「湿布を貼ること。」
勇者は真顔のままだった。
「笑えない。」
その一言で場が静まる。
斎藤は不気味な笑みを浮かべる。
「生命創造は、もう成功しとる。」
「何……?」
勇者の表情がわずかに変わる。
「次は世界支配じゃ。」
斎藤は王城の方角を見る。
「あそこには巨大魔鉱石が眠っておる。」
「あれがあれば計画は完成する。」
勇者は剣を抜こうとした。
しかし。
斎藤は手をひらひらと振る。
「今日は帰るわい。」
「実験には準備が必要じゃからの。」
「また会おう。」
パチン。
指を鳴らした瞬間。
巨大な転移魔法陣が再び展開される。
斎藤の姿は光に包まれ、ゆっくりと消えていった。
静寂だけが残る。
勇者は転移魔法陣が消えた地面を見つめ、小さく呟いた。
「……もう時間がない。」
誰も、その言葉の本当の意味を知らなかった。




