第19話 探索と発見
ダンジョン閉鎖から数週間。
異変の原因を調査するため、各国は合同調査を開始した。
国家魔法使いにも召集がかかる。
その中には、卑野劣呉の姿もあった。
「本任務は北部ダンジョンの調査である。」
国連魔導隊の隊長が地図を広げる。
「未知の空間を発見した場合、戦闘よりも報告を優先しろ。」
「了解!」
一行はダンジョンへ足を踏み入れた。
薄暗い通路を慎重に進む。
異常はない。
……そう思われた。
カチッ。
「……え?」
劣呉の足元で嫌な音が鳴る。
次の瞬間。
床が崩壊した。
「うわあああああっ!!」
劣呉は暗闇へ落下していく。
どれほど落ちたのか分からない。
目を覚ますと、そこは誰も見たことのない巨大な空洞だった。
「ここ……どこだ?」
周囲を見回した劣呉は息をのむ。
目の前には、高さ数十メートルにも及ぶ巨大な壁画が描かれていた。
「これは……。」
見覚えがある。
魔法歴史学で学んだ。
『ハゲカタストロフの大予言』
その壁画だった。
中央には、不気味な太陽。
燃え上がるような光ではない。
世界を飲み込むかのような、禍々しい黒い太陽。
その真下には、一人の人間。
足元には、地面から広がる漆黒の影。
そして、その対面には。
巨大な角を持つ、魔王を思わせる存在が描かれていた。
さらに周囲には。
炎に包まれた村。
黒く光る異形の魔物。
そして。
「……何だ、あれ。」
壁の片隅には、見たこともない奇妙な生物が描かれていた。
脳のような塊から、無数の麺状の触手が伸びている。
教科書で見た、禁忌の神獣の挿絵にどこか似ていた。
見ているだけで吐き気がする。
劣呉の全身から冷や汗が流れた。
「こんなの……聞いてない。」
腰が抜け、その場へ座り込む。
だが。
(駄目だ。)
(これを伝えなきゃ。)
震える足で立ち上がる。
壁を伝い。
崩れた岩をよじ登り。
必死にもがき続けた。
「誰か……!」
「誰かいるか!!」
叫び続けた、その時。
「卑野!」
聞き覚えのある声が響く。
「いたぞ!」
「生きていた!」
調査部隊だった。
劣呉は力が抜け、その場へ倒れ込む。
荒い息をしながら、一言だけ告げる。
「……見つけた。」
「予言の壁画を。」
その報告は後に、世界中を震撼させることになる。




