第17話 復職 ギルドハローワークへ
卒業試験から数日後。
卑野劣呉は魔法都市レグナス中央庁舎を訪れていた。
目的は一つ。
国家資格の受け取りである。
「卑野劣呉さん。」
「はい。」
受付係が一枚のカードを差し出した。
そこには金色の文字が刻まれている。
国家魔法使い資格証
氏名:卑野 劣呉
年齢:40歳
所属国:魔法都市レグナス
資格:国家魔法使い『レグナス』
この国で魔法使いとして正式に認められた証だった。
前世でいう高等学校卒業資格のようなものであり、魔法使いのほとんどが取得している基本資格である。
なお、資格名は国ごとに異なる。
他国で取得すれば、その国の名称へ変更される仕組みだ。
「おめでとうございます。」
「これで単独での冒険、中級クエストへの参加が可能になります。」
「ありがとうございます。」
受付係は続けてもう一枚の書類を取り出した。
「続いて、国から指定された二つ名を通知します。」
「二つ名?」
「はい。国家魔法使いには、国が管理する二つ名が必ず与えられます。」
劣呉は少し期待した。
(『生存王』とか、『不死身』とかだったら格好いいな。)
受付係は淡々と読み上げる。
「卑野劣呉さん。」
「あなたの二つ名は――」
一拍置いて。
「**『卑劣な転生者』**です。」
「…………。」
「え?」
「『卑劣な転生者』です。」
「いやいやいや!」
劣呉は思わず立ち上がった。
「もっとこう……あるでしょ!」
「変更はできません。」
「何でその名前なんですか!」
「審査基準は非公開です。」
「絶対嫌なんだけど!」
受付係は終始真顔だった。
こうして。
国家公認で『卑劣な転生者』が誕生した。
数時間後。
劣呉は冒険者ギルドへ向かっていた。
入口の看板には大きく書かれている。
『ギルド総合受付・ハローワーク』
「更新をお願いします。」
受付嬢は資格証を確認し、笑顔で頷いた。
「国家魔法使い『レグナス』の取得、おめでとうございます。」
「これより冒険者資格を更新します。」
魔法陣が淡く光る。
カードの文字が書き換わった。
冒険者ランク:E → D
単独行動:許可
中級クエスト:受注可能
「これで一人でも依頼を受けられます。」
「ようやくか……。」
一年間。
学院で勉強し、命懸けの実習を乗り越え、意味不明な法律まで覚えた。
その努力が、ようやく形になった。
ギルドを出た劣呉は、新しい冒険者カードを見つめる。
「ここからが、本当のスタートか。」
その言葉とともに、四十歳の新人冒険者は街へと歩き出した。




