第16話 卒業試験 実技
学科試験終了後。
受験生たちは学院の広大な校庭へ集められていた。
「これより実技試験を開始します。」
試験官が大声で告げる。
「受験番号順に一人ずつ前へ。」
一人。
また一人。
受験生が呼ばれていく。
炎魔法。
氷魔法。
雷魔法。
それぞれが得意魔法を駆使し、試験を突破していく。
「次。」
「受験番号三七二番。」
「卑野劣呉。」
「はい。」
劣呉はゆっくり前へ出た。
試験官が説明する。
「試験内容は上級ゴーレム一体の討伐。」
「最後は得意魔法、または自ら開発した魔法で止めを刺してください。」
劣呉は周囲を見回した。
逃げ道なし。
罠を仕掛ける時間なし。
奇襲もできない。
しかも試験官が四方から監視している。
(……終わった。)
劣呉が最も苦手とする。
真正面からの戦闘だった。
「始め!」
開始の合図。
「うおおおおっ!!」
劣呉は一直線に突っ込んだ。
一年間。
毎日ジムへ通い。
毎日プロテインを飲み。
鍛え上げた筋肉。
「食らえぇぇ!!」
全力の拳。
ゴン!!
「…………。」
上級ゴーレムは一ミリも動かなかった。
「痛っ!!」
逆に劣呉が拳を押さえて飛び跳ねる。
試験官が呟く。
「鉄製ですから。」
「知ってますよ!!」
目の前に立つのは。
四角く巨大な鉄のゴーレム。
岩ではない。
鉄だった。
「ゴォォォ……。」
ゴーレムの巨大な腕が振り下ろされる。
「うわぁぁぁ!!」
避けきれない。
そのまま地面へ押さえ付けられる。
「ぐっ……!」
身体が動かない。
(まずい。)
(負ける。)
(卒業できない。)
焦る。
考える。
使える魔法は。
嫌がらせ魔法ばかり。
砂。
髪。
武器強奪。
全部効かない。
「だったら……!」
劣呉は最後の手段を使った。
「唾液を針状にして飛ばす魔法!!」
ピシュッ!!
細い一筋の光が一直線に飛ぶ。
次の瞬間。
ゴーレムの胸部に埋め込まれていた魔力核を、
正確に貫いた。
パキン。
「…………。」
ゴーレムが止まる。
一秒。
二秒。
三秒。
ズドォォォン!!
巨体がその場へ崩れ落ちた。
校庭が静まり返る。
「…………。」
試験官全員が固まっている。
一人が恐る恐る口を開いた。
「……合格。」
「え?」
「核を破壊しました。」
「規定通りです。」
「合格。」
周囲から拍手が起こる。
「まさかあんな魔法で……。」
「誰が教えたんだ?」
「いや、自作魔法らしい。」
劣呉は立ち上がり、服についた砂を払った。
「……勝てばいいんだ。」
その言葉に、試験官たちは何とも言えない表情を浮かべるのだった。




