第15話 卒業試験 学科
全国共通魔法学試験当日。
巨大な試験会場には全国から集まった受験生が並んでいた。
入口では厳重な検査が行われる。
「対カンニング魔法、展開。」
「透明化解除。」
「思考共有遮断。」
「空間収納解除。」
「幻覚魔法反応……なし。」
劣呉は思わず苦笑した。
(刑務所かよ。)
ようやく席へ着く。
机の上には問題用紙が一枚。
試験官が静かに告げた。
「それでは始め。」
一斉に紙をめくる。
第一問
MPRNAを翻訳するときに使用される細胞小器官を二つ答えなさい。
劣呉はすぐに書いた。
『魔粗面小胞体』
『マリョソーム』
(これは授業でやった。)
第二問
グルコースからMTPを合成する過程を反応式を用いて説明しなさい。
「…………。」
劣呉の手が止まる。
(終わった。)
カルプス・ペストン回路。
カルプスCOA。
MDPH。
MTP合成酵素。
全部覚えた。
しかし、
(式までは覚えてねぇ!!)
頭を抱える。
十秒。
二十秒。
三十秒。
「……頑張れ俺。」
とりあえず知っている単語を書き始めた。
第三問
第二ハゲカタストロフは魔法歴何年に発生すると予言されていますか。
(これはいける。)
『魔法歴810年』
即答だった。
第四問
世界で最も触れてはならない存在を答えなさい。
劣呉は少し考える。
(白髪染め……いや違う。)
(ラーメン……もっと違う。)
授業を思い出す。
教師は静かに言っていた。
『管理側の世界の理』
劣呉はそのまま書いた。
問題を解き進める。
だが。
「……。」
教室全体がおかしいほど静かだった。
誰一人咳すらしない。
視線を動かしただけで試験官がこちらを見る。
(カンニングなんて無理だ。)
異世界へ来る前なら。
答えを盗み見ようと考えていた。
しかし今は違う。
全部。
自分の頭だけで解くしかない。
「……。」
残り十分。
劣呉は深呼吸した。
(俺は一年勉強した。)
(逃げるな。)
震える手で最後の問題へ向かう。
最終問題 白髪染めは飲み物か?




