第13話 禁止事項
翌日の授業。
教壇に立った教師は開口一番、黒板へ大きく書いた。
『禁術・禁止事項』
「今日は皆さんに、絶対に手を出してはいけないものを教えます。」
教室の空気が引き締まる。
第一項 転移魔法
「現在、この魔法は全面禁止されています。」
教師は古い写真を掲げる。
「かつて転移魔法は物流や旅行で一般的に利用されていました。」
「しかし、ある日――」
黒板に数字を書く。
『372名 行方不明』
「大規模転移事故が発生。」
「転移した372名は現在も発見されていません。」
「遺体もありません。」
「原因も分かっていません。」
教室が静まり返る。
「その日以降、転移魔法は禁止されました。」
劣呉は思わず呟く。
「怖すぎるだろ……。」
第二項 遺伝子組み換え
「正式にはMPRNA改変。」
教師は昨日習った図を映す。
「魔法や能力を司るMPRNAを人工的に合成・分解する禁術です。」
「成功すれば能力を書き換えられます。」
「ですが。」
教師は表情を曇らせる。
「関係ない遺伝領域まで壊れます。」
「結果。」
「人間ではない存在になります。」
一人の生徒が手を挙げる。
「元に戻せるんですか?」
「確認された例はありません。」
誰もそれ以上質問しなかった。
第三項 白髪染め
教師は真顔になった。
「白髪染め。」
教室中が首を傾げる。
「え?」
「髪染めですか?」
「はい。」
「この世界では白髪染めの使用は禁止されています。」
「所持も許可制です。」
劣呉は思わず立ち上がった。
「何で!?」
「理由は国家機密です。」
「なお。」
教師は教科書を読み上げる。
「飲料として使用した場合。」
一拍置く。
「極刑です。」
「「「何でぇぇぇぇ!?」」」
教室中が叫んだ。
「理由は国家機密です。」
「絶対嘘だろ!」
第四項 ラーメン
教師はさらに黒板へ書く。
『アーメン』
その横へ。
『ラーメン』
「祈りの際。」
「アーメンを。」
一文字消す。
「ラーメンと言ってはいけません。」
「…………」
教室が静まり返る。
「見つけ次第。」
教師は静かに告げた。
「極刑です。」
「いや意味分からん!!」
「過去に重大事件が起きました。」
「詳細は国家機密です。」
「また国家機密かよ!」
教師は咳払いを一つした。
「以上が代表的な禁止事項です。」
「他にも487項目あります。」
「全部暗記してください。」
「無理だぁぁぁ!!」
その日、劣呉は確信した。
魔物よりも。
この世界の法律の方が恐ろしい、と。




