表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン1
74/2052

第32章 アニメ風



同じ頃、東シナ海。旗艦「いずも」の作戦室にも、暗い影が落ちていた。

厚い鋼板に囲まれた室内で、オペレーターの声が鋭く響く。


「艦長! 米軍の極秘通信を傍受、解析しました……『マンハッタン計画』に関するものです!」


室内の視線が一斉にスクリーンへ向かう。モニターには暗号化通信の断片が映し出され、情報幕僚・三条律がその解析結果を読み上げた。


「……製造ラインを増強し、原子爆弾を四発製造せよ」

「……投下目標は広島、長崎に加え、東京、北九州とする」

「……投下時期は、約三か月後と推定される」


言葉を重ねるごとに、作戦室の空気が冷え込んでいく。

沖縄での必死の戦いが、意図せず原爆計画を加速させ、投下数を倍増させた。しかも首都・東京が新たに標的に加わる。歴史が、彼らの介入によって恐ろしい形に歪んでいくのが明白だった。


「……我々が守ろうとした未来そのものが、消えていくのか」


艦橋にいた誰かが、唇を噛みしめるように呟いた。

希望を抱いてこの時代に介入したはずが、結果は真逆。より大きな破滅を呼び込んでいるのではないか――その絶望感が、全員の胸を締めつけた。


緊張に耐えかねたように、三条律がさらに声を震わせる。


「そして……もう一つ。陸上の山名三尉から緊急報告が届きました!」


全員が息を呑む中、三条が続けた。


「太平洋の遥か東方で、新たな大規模な特異点が観測されました。レーダーの結果……その正体は――原子力空母『ドナルド・レーガン』! 2025年、我々が合同演習で共に行動した、あの米海軍の最新鋭艦です!」


その名が告げられた瞬間、室内がざわめきに揺れた。

未来から現れた艦が、今度は敵として牙を剥く――。


艦長は拳を握り締め、絞り出すように言った。


「……米軍は、我々の力を見て恐れたのだ。そして、レーガンを沖縄へ投入する腹を決めた」


言葉を重ねるたびに、作戦室は深い沈黙に沈み込む。

希望を抱いたはずの戦いが、逆に未来を壊していく。

その現実を、誰一人否定できなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ