第2章 アニメ風
戦艦大和が現代の護衛艦群と共に姿を現した衝撃が収まると、次に待っていたのは――戦力の統合だった。
だが、それは簡単な作業ではない。
大和艦上、作戦会議室。
分厚い軍服に身を包んだ艦長・古賀少将が、信じがたいものを手にしていた。自衛隊の最新型タブレット端末である。画面を見つめ、眉間に深い皺を刻む。
その横に立つのは、海上自衛隊第2護衛艦隊司令・神谷一佐。背後には戦術幕僚、電子戦に長けた今村三佐が控えていた。
「……つまり、我が艦の主砲は射程が短い。だが、そちらの“ミサイル”とやらは……40キロ先からでも撃てるのか?」
古賀の声は低い。理解は追いつかぬ。それでも核心だけは掴もうとする。
「はい。対艦ミサイル90式、最大射程は200キロです。レーダーと電子妨害装置を組み合わせれば、敵は近づくことすら困難でしょう」
神谷の言葉に、古賀は大きく頷いた。細かい理屈は分からずとも、遠距離から敵を叩ける火力が存在する――それだけで十分だった。
やがて艦隊は再編成を開始する。
護衛艦「むらさめ」が大和の正面に入り、対空防御とレーダー網を拡張する。上空にはF35B戦闘機。未来の眼となり、大和の視界を補った。
通信士・林三曹は旧海軍の通信兵に向き合い、符号やプロトコルを一つひとつ噛み砕いて説明する。共通の敵機情報を共有するための、地道な作業だった。
さらに「いずも」から発進したMQ-9無人機が、米艦隊の動きを逐一伝える。
旧式の双眼鏡では到底捉えられない索敵能力。その情報をもとに大和の副砲が修正砲撃を放ち、戦果を挙げ始める。
――未来と過去の融合が、少しずつ形になっていった。
戦術幕僚・今村は新しい戦法を提案する。
「レーダーで捕捉、ミサイルで先制、大和の主砲で残存艦を叩く――重層打撃戦術です」
それは旧海軍の肉弾突撃とは正反対の発想だった。
兵器だけでなく、戦の思想そのものが、根底から変わろうとしていた。
だが、最後に立ちはだかったのは技術ではない。心だった。
「この戦争……勝てると思っているのか?」
古賀は重く問いかける。
「我々の大義とは何だ? 命を投げ出してまで、何を残す?」
神谷は視線を逸らさず、静かに答えた。
「我々は“平和を守るため”に戦っています。あなた方が死を覚悟したその先で――我々は、未来をどう引き継ぐかを問われているのです」
室内に沈黙が落ちた。
大和の乗員たちが覚悟していた“死地”――沖縄。その意味が、ゆっくりと塗り替えられようとしていた。




