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大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン23

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第184章 第6章:カオスの海 —— 暇つぶしサークルにて


場所: 大学のサークル棟、「暇つぶしサークル」部室。


野本:(絡まったイヤホンのコードを解きながら、ボソボソと語り始める)

「……警告音が鳴り響きます。ノティール号はこれ以上近づけません。そこは『鋭利な刃物の森』だからです」


橋本副部長:(知恵の輪をいじりながら)

「刃物の森って、また物騒だな。不燃ゴミの集積所かよ」


野本:

「いいえ、副部長。戦艦大和の中央破断エリアです。鉄骨や配管がスパゲッティのように絡み合い、有人潜水艇が近づけば絡まって動けなくなります。……まるで、カバンの中で勝手に絡まるイヤホンコードの巨大版です」


小宮部長:(粘土をこねながら)

「野本さん、その『スパゲッティ』という表現、もっと芸術的に言えない? 『カオス』よ。秩序の崩壊が生む、無作為の造形美。ジャクソン・ポロックのアクション・ペインティングね」


野本:

「部長、これは絵画ではありません。爆発で腹を割かれた船の内臓です。……そこで、ロボットの『ロビン』が投入されます。人間が行けない危険地帯へ、身代わりとして送り込まれるのです」


橋本副部長:

「パシリだな。焼きそばパン買ってこいって言われて、ヤンキーの溜まり場に行かされる一年生みたいなもんだ」


野本:

「……そうですね。ロビンは文句も言わずに、鉄のジャングルへ潜入しました。偉らいです。私なら時給が上がらないと行きません」


場所: 大学の芝生広場。


野本:

「……ロビンのカメラが捉えたのは、原形を留めないほどひしゃげた高角砲や、ボイラーの残骸でした。……山田さん、ここで重要なのは鉄板の『曲がり方』です」


山田:

「曲がり方? どっちに曲がってても一緒じゃね?」


野本:

「違います。装甲板が『外側に向かって(ベント・アウト)』めくれていました。これは、爆発が船の内側で起きた証拠です」


重子:

「内側からドカン? どういうこと?」


野本:

「重子さん、電子レンジで卵を爆発させたことはありますか?」


重子:

「ある! あれ掃除大変なんだよねー。殻が飛び散って」


野本:

「それです。外部からの攻撃ではなく、内部のエネルギーが限界を超えて弾け飛んだのです。……大和は、自分の火薬で腹を裂いたのです。いわば、巨大な電子レンジ爆発事故の現場です」


山田:

「野本、お前の例えを聞いてると、悲劇なんだかギャグなんだか分からなくなるな」


野本:

「……そこは『大和が死んだ場所』でした。熱で変質した床材。センサーを狂わせる磁気異常。……怨念が渦巻いています」


重子:

「やだ、心霊スポット? 怖い話やめてよー」


野本:

「いいえ、物理現象です。……でも、ロビンもノイズに襲われて逃げ帰りました。機械でさえ『やばい』と感じる場所だったのです」


場所: ファミレス「ジョリーズ」。


亀山:

(シンクの排水溝をブラシで掃除しながら)

「やだわぁ、このヌメリ。スパゲッティの麺が詰まってるじゃない。誰よ、ちゃんとゴミ受け捨てなかったの」


野本:

「亀山さん。その排水溝の惨状は、大和の中央破断エリアに通じるものがあります」


富山:

「野本さん、戦艦と排水溝を一緒にしないで。怒られるよ」


野本:

「……ロビンが見たボイラーの破裂跡。それは、圧力に耐えきれずに破綻したシステムの末路です。……まるで、ランチタイムのピーク時に、オーダーが集中しすぎてキッチンのチーフがキレて、フライパンを投げ出した時の空気感です」


亀山:

「あー、あるわねぇ。こないだの土曜日も凄かったわよ。チーフ、顔真っ赤にして『もう無理だ!』って叫んでたもん」


野本:

「はい。その時のキッチンは、まさに『カオスの海』でした。……外へ向かってめくれ上がる怒りのエネルギー。私たちは近づくこともできず、ただ遠くから見守るしかありませんでした」


富山:

「そう考えると、バイト先も戦場だね……」


野本:

「はい。私たちは生き残りました。……次は艦橋に向かいます。そこには、切断された日本の頭脳があります。……野本と申します。こちら、取り皿をお下げします」


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