第13章 動く要塞:首里防衛体制
座礁艦隊による陸の防御線が構築されつつある中、沖合では、海上自衛隊と戦艦大和による「動く要塞」が、第二防御ラインの構築の準備へと進んだ。シュガーローフ方面の防御は固められたが、沖縄本島の中央部に位置する首里は、日本軍の主要な司令部が置かれ、同時に米軍の主要な攻撃目標となることが予測されていた。
海上自衛隊艦隊司令・片倉大佐は、「いずも」艦橋の大型モニターに映し出された最新の戦況図を凝視していた。そこには、首里周辺に集結しつつある米軍の新たな部隊配置と、日本軍の防衛線が詳細に示されている。
「首里防衛は、陸軍の最重要防衛線だ。ここを破られれば、沖縄全体の戦況が決定的に傾く。陸軍からの情報要求も、首里方面への火力支援に集中している」片倉はそう呟くと、隣に立つ三条律に視線を向けた。「律、大和の最終砲撃位置への誘導は可能か?輪形陣の形成と、精密な目標情報の提供を頼む」
「承知いたしました、艦長」三条律は、神経質そうに眉をひそめながらも、素早く計器を操作した。「大和を輪形陣の中央に配置し、最大限の主砲射程を確保します。F35Bからのリアルタイム偵察情報と、無人機からのレーザー測距データに基づき、首里周辺の米軍陣地、特に司令部や補給拠点への精密な対地攻撃を可能にします。また、沖合に展開する米軍艦艇への対艦攻撃も視野に入れます」
指令を受け、海上自衛隊の艦艇群が動き出した。イージス艦「まや」が前方で警戒網を張り、護衛艦「むらさめ」と潜水艦「そうりゅう」が両側面を固める。その中央を、巨大な戦艦大和が堂々と進む。これまでの戦いで築き上げられた信頼関係は、無線通信のぎこちなさを乗り越え、艦隊全体に浸透していた。
大和の艦橋では、有賀幸作艦長と森下耕作副長が、海自からの詳細な指令を真剣な面持ちで受け取っていた。
「首里防御への対地攻撃、そして沖合の敵艦艇への対艦攻撃、同時に行うと申すか……?」森下副長は、その大胆な作戦に驚きを隠せない。
有賀は静かに頷いた。我々は、この機会を最大限に生かす。江島砲術長には、最高精度の砲撃を期待する」