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大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン1
23/2046

第10章 アニメ風



沖縄沖での激戦から数日後。

米軍の反撃と本土空襲が続くなか、海上自衛隊と旧帝国海軍の連携は、次の段階へと進もうとしていた。


艦隊司令・片倉大佐は、作戦室で短く言い渡した。


「沖縄への上陸班には、情報幕僚の山名三尉を指名する。護衛は駆逐艦《雪風》に頼む。

現地の第32軍司令官、牛島満大将との会見を実現し、情報共有と緊密な連携を確立してほしい」


未来から来た者が、過去の戦場に足を踏み入れる――。

その決断の重さを、山名は痛感していた。緊張の面持ちで頷き、敬礼する。

護衛には、海自から選抜された精鋭数名が同行することとなった。


1945年4月13日、未明。

漆黒の海を、陽炎のように滑る影があった。駆逐艦《雪風》。

史実では数々の激戦を生き延び“奇跡の駆逐艦”と呼ばれるその艦は、今は現代の海自による精密な航海支援を受け、沖縄本島へと静かに近づいていた。


電子戦の妨害で米軍レーダーがかき乱されるなか、雪風は浅瀬に艦首を向け、小舟を下ろす。

山名と護衛班が波打ち際に降り立った。


視界に広がるのは、焼け焦げた木々、砲弾に抉られた赤土、瓦礫と化した家屋。

遠くで鳴り止まぬ砲声。時折、空を切り裂く航空機の唸り。

――これが、七十六年前の日本の最前線。


第32軍の兵士たちが待ち構え、山名たちは即座に地下壕へ案内された。

入り組んだ通路を進むと、薄暗い灯りの下、地図を広げて沈思する男が姿を現した。


第32軍司令官・牛島満大将。

その顔には極限の疲労が刻まれていたが、同時に揺るがぬ覚悟が宿っていた。


「ようこそ……。海軍の、いや……」

牛島の視線が山名の現代的な制服に一瞬とどまる。だがすぐに平静を取り戻した。

「……未来の日本から来たという貴官らが、この危険を冒して我々を訪れるとは、驚きだ」


山名は背筋を伸ばし、敬礼した。

「海上自衛隊情報幕僚、山名です。大和の艦上にて、片倉大佐より直接の連携強化を命ぜられました。

これまで通り情報は送り続けますが、より確実な協力のため、参上いたしました」


牛島は深く頷き、椅子を勧める。

「貴官らがもたらす“未来の情報”は、我々にとって天啓に等しい。

これまで読めなかった米軍の動きが、まるで掌に載るように分かる。

そのおかげで、我らは抵抗を続けられている。感謝する」


そう言いながら牛島は、机上の戦況図を示した。

それは、海自のドローンが撮影した米軍の陣地や、艦砲射撃の着弾点が克明に記されたものだった。

時代を超えた地図が、いま沖縄の地下壕で広がっていた。


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