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大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン1
20/2046

第9章 アニメ風



米軍の衝撃と新戦術

沖縄沖での壊滅的敗北は、太平洋艦隊司令官レイモンド・スプルーアンス大将を奈落の底へ突き落とした。

数時間で失われた上陸部隊。そして、幻のように現れては米軍を打ち砕いた“謎の艦隊”。

従来の戦術や情報網では説明のつかない異常事態だった。


スプルーアンスは決断する。

「これは、日本が秘かに開発した新型兵器だ」

そう位置づけるしかなかった。


全艦隊に厳戒態勢が敷かれ、全将兵へ通達が飛ぶ。

――日本は想像を超える兵器を手にした。未知の脅威に備えよ。


情報部は奔走した。

ドイツからの技術供与か、日本独自の超兵器か。

だが、答えはどこにもなかった。存在しないはずの艦艇、識別不能のレーダー波、空中で煙のように消える航空機。

米軍は理解不能の敵に直面し、焦燥を募らせていった。


止まらぬ空襲、歴史の抵抗

沖縄での敗北を受け、米軍は戦略を切り替えた。

それが、本土空襲の前倒しだった。


グアム、サイパン、テニアンから、銀色のB-29が次々と飛び立つ。

炎の雨は東京を、名古屋を、大阪を焼き尽くし、木造家屋は一夜にして灰となった。


「いずも」の作戦室。

本土から送られてくる無惨な通信記録に、片倉大佐は険しい顔を崩さなかった。

沖縄での勝利が、本土の悲劇を止めることにはならない。

救われた命は確かにあった。だが、それは時代の奔流の中に浮かぶ、ひとつの泡にすぎぬのではないか――。


歴史の大きな流れは、容易には変わらない。

冷厳な現実が、海自の面々に突きつけられていた。


米軍の対抗策

米軍は諦めなかった。

謎の艦隊が持つ“見えぬ力”に対抗するため、必死の模索を始めた。


戦闘機のレーダーを強化し、低空を飛ぶ機影を探知する。

海自のミサイルの軌道を解析し、対電磁波妨害(ECM)を試作する。

急ごしらえの偵察機は、未熟ながら電子戦機の萌芽だった。


さらに、艦載機に搭載する魚雷の改良に着手する。

既存の兵器では、あの艦隊の機動に追いつけない。ならば、新しい兵器を作るまで。

未来からの介入は、米軍にすら技術革新の刺激を与えていた。


「ダウンフォール作戦」の加速

沖縄での痛手は、米軍を苛烈な方向へと突き動かした。

当初は沖縄制圧後とされた本土上陸作戦――「ダウンフォール作戦」。

その準備が、異例の速さで進められた。


九州、本州の沿岸部に、容赦ない事前砲撃。

爆撃機の群れが空を覆い、艦隊の砲撃が防御陣地を粉砕する。


それは、未来から来た艦隊の存在が、米軍をして早期終戦へと追い立てている証だった。


「我々の介入が……悲劇を加速させているのかもしれん」

片倉は、作戦室の静けさの中で吐き出すように言った。


勝利を重ねても、流れは変わらない。

歴史は抵抗する。

そして、その先に待つのは――彼ら自身の未来を賭けた選択だった。


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