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第65話.黒鋼の一撃

誤字・脱字はご容赦下さい

●65.黒鋼の一撃


WOOOOO―――――!!!!

敵兵の一団が雄叫びを上げながら一斉に向かってくる。


「迎え撃てー!!」

ロベルトは叫ぶ。


味方の兵士達は一斉に向かってくる敵の一団を迎え撃った。

敵の一軍の進撃は幾重にも固めた味方の壁で食い止められる。


「数では我が方が有利だ!!複数で敵に当たれ!!!」

ロベルトは叫ぶように指示を出した。


味方の兵士達はロベルトの指示に従い、一人の敵に対し複数の人数で迎え撃つ。

味方の一軍は敵の一軍を押し返すように次第に前進していった。


「良し!」ロベルトは呟く。


しばらくして敵の一軍の前衛が崩れた。

ロベルトは優勢な味方の流れに喜色を浮かべた。


「そのまま押し返せー!!」

ロベルトは一軍に鼓舞するように叫んだ。


すると敵の一軍は味方の兵士達の奮戦によりさらに後方へ押し流される。

そして戦いは次第に混戦となり敵の兵士達は押され、徐々に敵は後退するように引いていく。


だがその後ろにいる異形の騎士は兵士達が後退していく様子など何も視界に映らないかのように平然としたまま真っすぐこちらに向かって歩いて来ていた。


「・・・・・・・」


そして異形に騎士は歩きながら巨大な戦槌をおもむろに振り上げた。

すると突然、中央の敵の一帯が瞬く間に左右に分かれ、ついさっきまで混戦していたはずの視界がガラリと開けた。


その開けた場所の中央にはただ一人、巨大な戦槌を上段に構えた悪魔のようなフルプレートを着た異形の騎士がいる。


その流れはまるでロベルト達の一軍をそこへと誘っているかの様だった。

異形の騎士はその中央で立ち止り、ロベルト達の一軍へ纏めて突っ込んで来いと言わんばかりに巨大な戦槌を構えていた。


それを見た味方の兵士達は叫ぶ。

「突っ込めー!!!」


「・・ま・・まずい!!!」

同時にロベルトは呟いた。


すると中央を固めていた味方の兵士達の一団はその誘いに乗るかのように

その中央にいる異形の騎士に向かって一気に突っ込んでいく。


WAAAAAAAA――――――!!


「・・・・・・・・!!!」


・・・・・ゴシャ!!!


すると突然、味方の先頭の一団が何かが潰れるような音を立てて弾けた!!

突撃していった兵士達の粉々になった残骸や肉片がはるか上空まで巻き上がる。


「なにぃ!!!」ロベルトは叫んだ。


異形の騎士が横なぎに振り抜いたその戦槌は

20人以上はいたはずだったその兵士の一団を全て吹き飛ばしていた。


・・・・たったの一振りだった。


その一振りでロベルトの目の前の視界は突然開ける。

そしてその視界の先には戦槌を振り抜いた姿勢のままで静止した異形の騎士の恐ろしげな姿があった。


「・・・・・・・・・!!」

ロベルトは戦慄する。


「・・・なんて奴だ!」

グレースもその信じられない光景に思わず呟いた。


「・・・・・・・!!」

ティアナ姫も前方に立ちはだかる異形の騎士を見詰めながら戦慄していた。


ロベルトは叫ぶ

「ティアナ姫!!お下がり下さい!ここは私がなんとか食い止めます。

グレース殿はそれまでに急ぎティアナ姫とカイン様を西塔の入口までお連れして避難させて下さい!!」

形相をしたロベルトの必死の指示にグレースはコクリと頷いた。


「参る!!」


ロベルトはそう言ってティアナ姫達を下がらせると、正面に立ちはだかる異形の騎士の方へ向かって駆け出していった。


それを見た異形の騎士もゆっくりとロベルトに向かって歩き出した。


ロベルトは剣を構えてその異形の騎士と正面に立ちはだかる。

だが異形の騎士はそのまま平然とロベルトに向かって歩いてきた。


ロベルトはその異形の騎士を睨みつけると剣先をその異形の騎士へと向けた。


「・・・・・」


すると異形の騎士は立ち止り、無言のまま片手でその巨大な戦槌をゆっくりと上へ持ち上げ、振りかぶった。


「・・・・・・・」

「・・・・・・・」


しばらく二人はそのままの姿勢で膠着した。


西塔の入口にたどり着いたグレースはティアナ姫とその様子を見守る。


するとティアナ姫は震えながら静かに両手を組み

「・・・きっとロベルトなら大丈夫です。彼はラッセル騎士団の親衛隊。ロベルトはその中でも一番強い人なのです・・・・」

彼女はそう独り言のように呟くとロベルトの勝利を信じ、それをただひたすらに祈っていた。


「・・・・・」

ティアナの言葉にグレースは静かに頷いた。



目の前の二人の騎士の間には恐ろしい程の殺気と緊張した空気がビリビリと流れる。

しばらくして


「・・・・・・てやっ!!」


ビュン!!


ロベルトは隙を窺うと異形の騎士に向かって間合いを詰めて物凄い速度で斬りかかった。

それと同時に異形の騎士も上に構えた巨大な戦槌を恐ろしい速度で振り下ろす。


ぶぅん!!!


ドガン!!!


間合いを詰めて来たロベルトの足元が巨大な戦槌の一撃で爆砕した。

爆発した地表から砂煙が舞い上がる。


「!!!!」


だがその時ロベルトはとっさに斬り込む姿勢から真横へ飛びのき、上段からの巨槌の一撃をフェイントを使って紙一重の状態で躱していた。


その直後、ロベルトは側方から異形の騎士に向かって飛び上がるとその首元へ剣先を向けて高速の突きを放つ。

異形の騎士は左腕を大きく振りかざしてその剣先を払いのけた。


バチィン!!


ロベルトの渾身の突きは異形の騎士の分厚い金属のガントレットによって簡単に弾かれていた。


「うぐっ!!」

ロベルトは弾かれた衝撃で後方に吹っ飛ばされる。


だがロベルトは体勢を崩されつつも着地と同時にその体勢を立て直し、すかさずその足元へ飛び込む。


「くらえっ!!」

ロベルトが今度はそのまま異形の騎士の足元に向けて横なぎに剣を振るった。


バチィン!!


ロベルトの剣が異形の騎士の膝下に当たる。

しかしそれも異形の騎士の分厚い金属の脛当てによって簡単に弾かれてしまった。


「!!!な!!?」

ロベルトは甲冑の分厚さに驚愕する。


ロベルトは慌ててその異形の騎士との間合いを取った。

「・・・・なんて装甲だ・・・・」

ロベルトは痺れる自分の腕を見ながら呟いた。


「・・・・・・」

異形の騎士は無言のままゆっくりと戦槌を構えた。


ロベルトは歯を食いしばると再び剣を握り込みその剣先を相手に向ける。

今度はじりじりとロベルトは間合いを詰めていった。


ぶぅん!!


今度は異形の騎士が巨大な戦槌を凄まじい速度で振り下ろしてきた


ドガン!!!


振り下ろされた戦槌はまたしてその付近の地面を爆発させ砂煙がぶわりと巻き上がる。


「くッ!!」


ロベルトは飛びのくように後方へ下がった。ロベルトは叫ぶ。

「ゆくぞ!!」


そしてロベルトは後方へ飛んだ反動を利用し、ダンッと地面を蹴り上げて一気の異形の騎士との間合いを詰める


「流烈斬!」

ロベルトはそう叫びながら流れるような斬撃をその騎士の胸元に目掛けて放った


ガキン!!

だが異形の騎士はその斬撃を戦槌の柄を仰ぐように翻し咄嗟にその剣先を弾く。


するとロベルトはそれを狙っていたかの様にそのガラ空きになった騎士の胸元に向けて高速の突きの連打を乱れ撃った


「・・・・百矢(ひゃくや)突き!!!」


ズガガガガガッガガガ!!!


異形の騎士はその高速の突きの連打を全身に浴びる。

しかしその剣撃は空しい金属音を上げるだけで分厚い鉄板で覆われたその装甲を貫く事は出来ない。だがロベルトにはその異形に騎士はその衝撃で数歩後退したかのように見えた。


(よし!)


その隙にロベルトは異形の騎士の足元に屈み剣を両手に持ち直す。


(これならどうだ!!)

そこから一気に異形の騎士の顎に向かってロベルトは最後の渾身の斬り上げを放とうした。


「!!?」


その瞬間、ロベルトは全身が凍りつくような凄まじい殺気を感じた。

ロベルトは急いで目の前にいる異形の騎士を見上る。

しかしその時には既に異形の騎士の巨大な戦槌が横なぎにロベルトを振り抜いていた。


バチィイイイン!!

ロベルトは強烈な横なぎの一撃を剣に受けた。


「こぉ・・・・!!」ロベルトの叫び声が巨槌の凄まじい一撃で掻き消される。


そのまま物凄い勢いでロベルトは横方へ吹き飛ばされた。


ドガガガガガガガーーーーー!!ズシャーーー!!!


ロベルトの体は遥か向こうまで地面を滑りながらゴロゴロと転がっていく。


「ロッ・・・ロベルト――――――!!!!!」

ティアナ姫は悲鳴のような声で絶叫した。


「・・・・・」


ロベルトは右手にへし折れた剣を握ったままうつ伏せに倒れ、動かない。


「まずい!!!」

グレースはロベルトのいる方へ急いで駆け出した。


異形の騎士は吹き飛んだロベルトを見るとその戦槌を持ち上げ、

ロベルトに向かって歩き出す。


「・・・・・うっ うう」

ロベルトは唸り声を上げて起き上がろうとした。


ドシャ!


しかしロベルトは立ち上がる事が出来ずに再び地にゴロリと転がる様に倒れた。

「・・・・ぐぐぎ・・・」


ロベルトは異形の騎士の足音がすぐ自分の側まで来ているのに気が付き

血を吐き、歯を食いしばりながらその場で立ち上がろうと足掻く。


「・・・・・・」


すると異形の騎士はロベルトの前に来ると立ち止まった。

ロベルトはその異形の騎士を睨むようにゆっくりと見上げる。


「・・・・・・」


異形に騎士は足元で足掻くロベルトを見下ろし、憐れむように言った。


「・・・・許されよ。これも戦場での倣(なら)い。私は死ぬ訳にはいかんのだ・・・」


そう言うと異形の騎士はロベルトに向かってゆっくりとその巨大な戦槌を振り上げ、一気にそれを振り下ろしたのだった。


読んで下さり誠に有難う御座います。

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