第64話.戦槌
誤字・脱字はご容赦下さい
●64.戦槌
「急いで西塔へ向かえー!!」
ティアナ姫は騎馬の上から剣を振り上げ追随する兵士達を鼓舞する。
ロベルトは城内の立ちはだかる兵士を蹴散らしながら活路を切り開いた。
一軍は城内、西塔に向かって進軍していく。
すると城内の奥から出て来た敵が次々と西塔の方向へ向かって流れているのが分かった。
グレースはロベルトに言った
「まずい!ロベルト殿!私は先に西塔へ駆けます。」
「わかった!グレース殿、頼む!」
すぐにロベルトはグレースに頷いた。
グレースは急いで馬を蹴って西塔へ向かって単騎で駆け出した。
グレースが西塔の近くへたどり着くと、既に敵兵が西塔の入口付近を取り囲んでいるのが分かった。
その取り巻きの中心では必死に剣を振り回し、必死に地下牢への入口を守っている数名の兵士がいる。その中の一人に親衛隊のトールがいた。
「!!!」
彼は既にかなり疲労している状態で体のいたる所に新たに剣戟でつけられた様な傷があちこちに見られる。彼は敵の戟を脇に抱き込み、敵兵を振り払いながら決死の覚悟で敵に応戦をしていた。
「トール殿!!」
グレースはその敵の取り巻きの一団の中に騎馬で突っ込むとトールに戟を掴まれている敵兵をバスターソードで馬上から一気に薙ぎ払った。その敵兵はグレースの斬撃に吹っ飛び、囲んでいた兵士にぶち当たって包囲が崩れた。
「グレース殿!!・・・・はぁはぁ・・・・」
トールは肩で息をしながら馬上のグレースに苦しそうな笑顔を向けた。
「・・・カイン様は無事です。この奥におられます」
トールはそのままぜいぜいと息を切らしながら入口を背にして再び剣を構える。
「なんとか間に合ったようですね!まもなく味方がこちらへ駆けつけます」
グレースは騎馬からジャンプするように飛び降りるとトールの側へ駆け寄った。
「有難う・・・。必ず来てくれると信じていました。」
トールはそう言うと剣を構えてグレースと並び立つ。
「トール殿は入口をお願いします。」
グレースはそう言うと一歩前に出た。
トールもコクリと頷き塔の入口の前へ下がった。
WOOOOOO――――――!!
すると敵の一団が前へ出たグレースに向かって一斉に斬りかかってきた。
グレースは構えたバスターソードに魔力を込める
「行くぞ!!! でやぁああああ!!!」
そう叫ぶとグレースは正面の敵に向かってくる兵士数人に向かってそれを思いっきり薙ぎ払った。すると取り囲んでいた兵士の数人が後方へ吹き飛んだ。
そしてそのままグレースは恐るべき速度で前方にいる敵兵の一団まで間合いを詰めると下からバスターソードで掬い上げた。するとズガンという金属の弾ける音と共に一気に数名の敵兵がその斬撃に巻かれ上空へ弾かれる。
「ぐぁああああああ!!!!」
敵兵の絶叫する声が響いた。
「くらえ!!」
そしてグレースは勢いよく飛び上がるとその巻き上がった兵士をバスターソードで地面へ叩きつけた。
ガシャガシャズダダダーー!!
地面へ叩きつけられた兵士は他の兵士数人を巻き込みながら吹っ飛んでいく。
そしてグレースはそのまま空中で方向を転換し、今度は空中から滑り降りるようにしながら今度は横を敵の一団へ突っ込んだ。
斬り込まれた一帯の兵士達はグレースのバスターソードに吹き飛ばされ、なぎ倒されるようにバタバタと倒れていった。
そして横方の敵の一団をひとしきり薙ぎ払うと
「縮地!!」グレースは叫ぶ
そしてグレースはトールの目の前を低空で飛ぶように駆け抜ける。
そして今度は先程の反対にいる敵の一団に向かって一気に斬り込み、凄まじい斬撃を次々と放った。
敵の兵士達はグレースのその斬撃に巻き上げられバタバタと倒されていく。
気が付くと先程まで西塔の入口の周りを取り囲んでいた敵兵はすべて彼女一人に倒されてしまっていた。
「凄い・・・・・」
トールはあれだけの数の敵に圧倒しているグレースの強さに息を飲んだ。
しばらくしてティアナ姫とロベルト達の一軍が駆けつけてきた。
後続の味方の兵士達は次々と現れる新手の敵に向かって戦いを始める。
WAAAAAAAA――――――!!
次第に味方の兵士達は西塔に現れる新手の敵兵達をどんどん押し返していった。
「トール!!!」
ティアナ姫は入口を守るボロボロの姿のトールに声を掛けた。
味方の兵士の参入で一息ついたトールは立ったまま拳自分の胸へ当てるようにして敬礼をした。ティアナ姫は鉄仮面を脱ぎ、急いで馬から降りると
「トール!!無事で良かった!!! お父様は?」
「はい、無事で御座います!この奥に避難して頂いております。ですがカイン様は疲労が激しいご様子なのですぐに保護をお願い致します。」
そう言い終えるとトールは力尽きるように膝をついた。
側にいたグレースはぐったりするトールに肩を貸す。
「グレース殿、私は平気です。少し休めば動けますから・・・・」
ティアナ姫はトールの様子を見ると
「わかったわ!まずはトールを安全な所へ。それからすぐにお父様を助けます。」
ティアナ姫はそう言うと数名騎士達を地下牢へ向かわせた。
しばらくするとカインも兵士の肩を借りてヨロヨロと西塔の入口から出て来た。
見ると、カインは激しい拷問を受けた事で衣服のいたる所が破れ、体も鞭で打たれたような傷だらけの痛ましい姿だった。
「お父様!!」
ティアナ姫は叫ぶ。
「おお・・・おお・・ティ・・・・ティアナ・・・!!!」
カインはティアナ姫を見つけるとボロボロと涙を流して手を伸ばした
「お父様!!!」
ティアナ姫もカインに駆け、二人で寄り抱き合った。
「お・・・お父様・・・よくご無事で・・・・ぐすん、ひっく・・・・」
「ティ・・・ティアナ・・・・」
「お父様・・・・・」
二人は暫く抱き合いながら涙を流した。
ロベルトは抱き合う二人をしばらく見守ると二人に言った。
「まもなく馬車が来ますのでカイン様はその馬車の中で。我々はその馬車を守ります。
ティアナ姫!しばらくするとまた新手の敵がここへ押し寄せてくるかもしれません。すぐに指揮に戻られて下さい。」
「・・・・・・・」
ティアナ姫は涙を拭いて立ち上がった。
彼女は凛とした表情で鉄仮面を被る。
「分かりました!皆の者!領主の救出には成功した!!我等はここで領主をお守りする!西塔周辺の敵を一掃せよ!!」
そう言って彼女は腰の剣を振り上げた。
WAAAAAAAA――――――!!
一軍の兵士達はティアナ姫の鼓舞に大いに沸き立った。
すると突然・・・
ぶぅん!!!!
遠くで巨大な物を振り抜く音がした。巨大な何かが飛んでくる。
「危ない!!!!」
グレースは叫んだ
ロベルトはティアナ姫を横から庇うようにしてその飛来物を避ける。
その飛来物はティアナ姫から僅かに逸れて彼女の横を物凄い速度で通り過ぎる。
「!!!!」
ドカドカドカ・・・・バキバキ ズダ――――ン!!!!
その飛来物は太い鎖のついた巨大な鉄球だった。
その鉄球は味方の兵士達を数名巻き込み、城壁の壁に凄まじい音を立てぶち当っていた。
城壁は物凄い衝撃を受けて城壁の石壁までもが大きく剥がれてしまっている。
そしてその鉄球に巻き込まれた数人の兵士達も城壁の側まで吹き飛ばされて無残な姿のままに死んでいた。
「・・・・なにぃ!?」
ロベルトは背後の大きく剥がれた石壁を見て驚く。
歓声が一気に沈黙した。
「・・・・・・・・」
ロベルトはすぐに鉄球が飛んで来た方向を振り向くと遥か先に一団の兵士を連れた巨人の様な異形の騎士の姿が見えた。
「なにぃ!!!・・・あれは!!」
WOOOOOOO――――――!!
するとその敵の歩兵の一団は戟や剣を構え、雄叫びを上げながらこっちに向かって駆けだしてきた。その中央にいる異形の騎士はその歩兵の進軍を見守る様に後ろをゆっくりと歩きながら近づいてくる。
右手には人の大きさ程もある巨大で禍々しい形状をした戦槌の様な物を持ち、分厚い金属の甲冑で全身を固めた巨人のような騎士だった。
ロベルトは焦る
「まずい!!ロズワルドの親衛隊だー!!!大急ぎでカイン様を守れ!!」
ロベルトは叫んだ。
一軍の兵士達はティアナ姫とカインを守るように敵に向かって幾重にも壁を作り、戟を構えた。
「こんな所にヤツが出てくるとは・・・・・・・」
ロベルトは悔しそうに呟いた。
グレースの側にいたトールも歯を食いしばって頷く。
「トール殿、知っているのか?」
グレースは隣にいたトールに聞いた。
トールは悔しそうにその騎士を遠目に見ながらグレースに答えた。
「・・ええ。ヤツなら下っ端の私ですら知っています。あいつはロズワルド親衛隊の猛将。戦槌です。」
「!? 戦槌?」
「そうです。・・・ロズワルド親衛隊には朧と戦槌という二人のとんでもない猛将がいるんです。そしてコイツは恐らくその戦槌の方です。騎士団の間では不死身の重歩兵「戦槌のイゴール」などと呼ばれています。」
「ふ・・不死身だと!?」
グレースはその言葉に驚く。
「はい。ヤツはどんな死地にもほぼ単騎で乗り込んで敵を殲滅。その戦況をひっくり返して必ず生還する事からそういう風に言われているとの事です。」
「それ程のヤツなのか・・・・。」
「ええ。そしてヤツの右手に持つ禍々しい巨大な武器は鉄蒺藜骨朶と呼ばれる鋼で出来た化け物のような戦槌です。それとあの傷だらけの分厚い鉄板で覆われた悪魔のようなフルプレート・・・・。きっとヤツに間違いありません!!」
そう聞くとグレースは
「戦槌のイゴール・・・・・」
そう呟きその異形の騎士を遠目に睨むように見詰めたのだった。
読んで頂き誠に有難う御座います。




