第62話.城門の戦い
誤字・脱字はご容赦下さい。
●62.城門の戦い
「敵だー!! 城門を守れー!!」
城内の見張りの兵士達の叫び声に似た命令が次々と飛び交う。
見張りの兵士に成りすましたエバンスは急いで城壁に駆け上がり、そこから街の街門の方角を見下ろすように眺めた。
街門の方から十数騎の騎馬を先頭とした歩兵の一軍が城の城門へ向かって一斉に駆けて来る。
街を巡回していたテスターの軍勢は既に城門近くまで攻めこまれており、ほぼ潰走しているように見えた。
そして城壁の下を見ると城門は一時的に開かれて、次々と退却してくるテスターの兵士達を城内へと引き入れていた。
姫を先頭とした一軍もその逃げ込む敵兵を追いかけるように城門周辺に次々と集まって来ている。
「さぁて、おいでなすった。ふはは。いやしかし姫様は豪気だなぁ。このまま正門から突入するおつもりなのか?」
エバンスはそう独り言を呟くと自前のリュックを背負い正門の裏に集結する雑踏に向けて駆け出した。
ラッセル領は北のキスヤ帝国との国境に面しており、コリンダーク城はその軍事防衛拠点として高い城壁と頑丈な城門によって守られている。
城壁は最も低い所でも10メートル近くある。
エバンスがグレースと別れ城内に一人残った理由も、コリンダーク城には堅固で高い防衛能力があるが為であった。
城門の上に掛かる大きなゲートハウスの両脇には高い二つの側塔が立てられており、その側塔にはベヒナーゼと呼ばれる鼻のように突き出した迎撃用の出窓が塔のいたる所に取り付けられている。
そしてそれは城門を攻め込まれた際、そのゲートハウスや側塔の出窓から外の攻城兵に向かって弓での攻撃や、上から熱湯等をかける等の攻撃が出来るようになっていた。
しばらくしてエバンスは城門の裏までたどり着く
しかしその時には城門は既に閉じられてしまっており、城内の兵士たちは次々と資材や岩等を抱え城門の裏へ次々と積み重ねていた。
「くそっ・・・・動きが早いな。」
エバンスは城門裏に積み上げられた資材を見て舌打ちをする。
周りを見渡すと城門の上や城壁にかかる階段では次々と兵士達が矢の束を担ぎこんで運んでいるのが見える。
そして城門の上のゲートハウスとその上の城壁には沢山の兵士達が弓を番えて城門前の守備を固めていた。
しばらくすると城門の警備兵から
「矢を撃てー!」
と叫ぶ声が聞こえると
一斉にヒュンヒュンヒュンと城外に向けて弓を放つ音が城壁の各地から聞こえだした。
「・・・・もう始まりやがったのか・・」
エバンスはそう言うとリュックの中から袋のような物をいくつか取り出し、その中に燃料を急いで詰め込んだ。
「急がねえとな・・・・。仕方ない・・・・・・アレをやるか。」
そう呟いて覚悟を決めたエバンスは、その袋と城壁裏に束ねられて置かれてある矢束を両腕に担いだ。
そして城門の裏を駆け回る雑踏の兵士に混ざって城壁の階段を上ると、彼は急いで城門の真上にある大きなゲートハウスの中へ向かって駆けだして行ったのだった。
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ヒュンヒュンヒュンヒュン・・・・・
城門から沢山の矢が降って来る。
しかし飛んでくる矢は、まだ飛距離が十分には足りない様で、俺達の軍の先頭の騎馬の少し手前にバラバラと落ちた。
俺達は先頭の一軍と合流し、その矢の落ちた少し後方で後続の部隊を待つ事にした。
「あの辺りが矢の届く限界か・・・」
俺は貨車の上から矢の落ちた辺りを指さした。
城門から300メートル位ありそうだ。
「マルボル殿」
しばらくするとギブソンさんがやって来た。
「ギブソンさん。・・・頑丈そうな城門だな。」
俺はやって来たギブソンさんに軽く会釈程度の挨拶をした後、貨車から飛び降りると、目の前にある頑丈そうな城門とその上にそびえるように建つ巨大なゲートハウスを眺めながら呟いた。
「はい。コリンダーク城は王国屈指の強固な城です。城壁は高く、沢山の梯子を同時に掛けるのは難しいでしょう。そして城門は分厚く、扉を破るのは困難を極めます。
それに城門に兵を集めればゲートハウスやあの側塔から一斉に弓を射かけて来るはずです。」
ギブソンさんはゲートハウスや城門横の側塔を指さしながら苦々しくそう答える。
「・・・・・・」
俺はしばらくその城門を眺めながら考えた。
俺達は北の砦から進軍して来ただけのただの歩兵の一団である。
攻城用の破城槌のような兵器等は無く、まして梯子すら十分な数を持ち合わせていない。
ギブソンさん歩兵部隊の各隊長達を呼び寄せて俺に言った。
「マルボル殿。やはり、かなりの犠牲を出すかもしれませんが、当初の予定通り、城門をこじ開けるしか方法は無さそうですね。」
ギブソンさんはそう言って城門を恨めしそうに見ている。
俺もギブソンに答えた。
「ああ。仕方ないがそうしよう。俺は打ち合わせ通り、ここから援護して城壁の弓兵を抑えます。後はギブソンさん、大変ですが城門を頼みます。」
「分かりました」
ギブソンさんはこくりと頷いた。
城門の攻略について、俺は既にギブソンさんとは打ち合わせをしていた。
扉の構造についてもギブソンさんから聞いている。
この時代、全ての城門は当然のように内開きなのだそうだ。
理由は扉の前に岩や土砂など置かれてしまうと逆に城内に閉じ込められてしまい、攻める時に兵を出す事が出来なくなる為らしい。
そして門の扉には蝶番の様な物は無く、扉の両脇には枢という柱が埋め込まれ、その柱が軸として回転し開く仕組みになっているとの事。
そして内開きの扉の裏には頑丈な鉄の閂があり、城門を開けるにはその閂を抜くか扉の両側にある枢を抜くかへし折るといった方法があるとの事。
ちなみに枢は扉の内側からなら数人で抜くことが出来るらしい。
戦時には扉を交換する事もあるらしく、扉の内側からなら数人掛かりで引き抜けるようになっているとの事。
しかしながらコリンダーク城の城門はそういった攻撃にも対応できるように扉に工夫が施されているとの事だった。
その扉の構造は鉄の柱を格子状に組んだ物が中心にあって、その外側と内側で太い丸太のような材木を挟みこんで打ち付けた三重の構造になっているとの事。
それによって先端の尖った丸太や破城槌のような攻城兵器で城門を正面から突かれても、その槌は扉に局所的な穴をあけるだけで、裏にある閂や枢は折れる事が無く、簡単には扉が開かないようにしているとの事だった。
なので結果として正面からその扉をこじ開けようとなると実際にはこういうやり事になる。
この手の城扉の開け方は、バールのような物で外側の丸太を削りとった後、バールを鉄の格子の間にねじ込んで歪めて隙間を作り、その隙間から侵入して内側の閂か枢を引き抜く事。
だが当然、それをやるとしても鉄の格子の裏にも頑丈な木材の壁が貼り付けてあり、その裏の木材も格子の隙間からバール突っ込んでガリガリと削り取らねばならない。
しかも扉の裏も岩や資材が積まれたりもするので結局、開門には尋常ではない程の手間が掛かるというのがギブソンさんの考察であった。
だが俺からすれば他に方法がない訳ではない。
例えば単純に手榴弾を城門に投げて扉を吹き飛ばすといった方法もあるにはあった。
だがギブソンさんに言わせると、それは同時に発生する激しい閃光によって受ける味方の被害が甚大となる恐れがあるのでそれは使えないとの事だった。
なので結局の所、俺達は先程言ったような手作業で城門をこじ開けねばならないという事になる。
そしてそれをやるには時間との勝負でもあった。
城門は城の中で最も防御と攻撃力の優れた場所であり、城門をこじ開けるのに時間が掛かれば側塔やゲートハウスからひたすら敵兵に狙い撃ちにされてしまう。
ましてこちらは500程度の寡兵
時間が掛かれば扉をこじ開ける前に味方が全滅してしまう恐れだってあるのだ。
まぁそのへんの忖度があり、俺が城門へ行く事になっているのだが・・・・。
「ギブソンさん、準備を」
俺はギブソンさんに声を掛けた。
「工作隊準備せよ!」
ギブソンさんがそう言うと歩兵部隊は馬車から一斉にバールや槌のような物を取り出し始めた。
それは先端がL字型に曲がった巨大なくぎ抜きのような戦用のバールで、砦の防衛をしている兵士達には建物や資材の解体用にこういった武器も常備されていた。実際にそれを使って戦う事も出来る。
俺はその間に馬車を城門の正面に回してもらい
貨車の奥からガトリング砲を引っ張り出した。
既にガドリング砲には200発程の弾帯を繋いでいる。
つまり、俺のここでの役目とはこのガドリング砲を使って、城門の扉に張り付いた分厚い木材や裏に積まれた岩や資材を一気に吹き飛ばす事だ。
威力はあるので鉄の格子とはいえにまともに当たれば少しくらいは変形もするだろう。
後はギブソンさん率いる工作部隊が城門に一斉に突っ込み、格子を捻じ曲げ、隙間から城へ入り込み扉の枢か閂を破壊する
・・・・といった作戦であった。
しかしながら格子をねじ曲げたり、侵入するのにもそれなりに時間が掛かる。
その時間が掛かれば掛かるほどこちらの被害はどんどん増える事になるのだ。
「・・・・・・」
俺は同時にその次の手を考える。
もし城門の開門に時間がかかりそうな場合の事だ。
その場合は無属性魔法を自分に掛けて城門または城壁まで飛び移り、城門の敵の注意を反らす方法もバックアップとして考えている。
ただしこれは自分にとって命がけの作戦になるので極力したくはないのだが・・・・。
俺はメイベルに声を掛ける。
「メイベルも援護を頼むよ。俺はギブソンさん達が城門へ突入している間、ここで援護する。
でももし城門がなかなか開きそうに無かったら俺は単独で城門の上に登るつもりだ。その時は此処からこいつで俺達を援護してくれ。」
俺はガドリング砲をさすりながらメイベルに言った。
「・・・わかった。 ケンスケ・・・でも無理はしないでね。」
メイベルは心配そうにしながらもそれに了解してくれた。
城門の兵士達を見ると、既にこちらへ弓を射るのを止めており、こちらの様子をじっと見ている。
「・・・・・・・・・」
俺は覚悟を決め、城門へ向かってガドリング砲を構えた。
その周りにはギブソンさん達の部隊がバールを構え、じっと突撃の号令を待っている。
俺は一息ごくりと唾を飲み込むと
・・・・・いけぇ!!!
俺は城門に向かってガドリング砲のハンドルを一気に回した。
ZDOOOOOOOOOOOO!!!!
DDODDODODODODOOODODO!!!!
すると同時に城門から凄まじい轟雷のような爆音と土煙が一斉に巻き上がる。
ズバババッババババッババ!!!!
城門の丸太は軋み上げボロボロと剥げ落ちるように飛び散り、次第に中の鉄の格子がむき出しとなっていく。
扉の裏面にある木材や、その奥に置いてある岩や資材もその爆風に削り取られるように城門の向こうへ物凄い爆煙を上げて吹き飛んでいった。
DDODDODODODODOOODODO!!!!・・・・・DOWNNN!!!!
暫くして
WAAAAAAAA――――――!!
城門の奥から砂煙が城の外へ吹き出すように舞い上がり、城門の先から悲鳴のような叫び声が一斉に上がる。
城門を見ると、砂煙の中、格子は完全にむき出しの状態となり、その格子もガドリング砲の銃撃を受けて至る所が歪にぐにゃりと曲がり変形していた。
「いけぇ!!」
俺は叫んだ!!
「攻城兵!!突撃――!!!」
ギブソンさんもそれに合わせて歩兵部隊を率いて城門に向かって突撃して行った。
城門の弓兵も呼応するように弓を射って必死に応戦を開始する。
俺はガドリング砲の照準を城壁の上の兵に向け、そのまま撃ち続けた。
DDODDODODODODOOODODO・・・・!!!!
今度は城壁の上にいた兵士達がガドリング砲の砲撃に飲まれ次々と爆砕していく。
(・・・・・ん?)
しばらくすると城門上の大きなゲートハウスの中から濛々と煙が噴き出てきた。
(!?なんだ!?)
よく見るとゲートハウスの中で何かが燃えている様だ。
しばらくするとその煙はゲートハウス内部を伝って扉の両側の側塔の出窓からも濛々と噴き出し始めた。
次第にゲートハウスや側塔の出窓から弓を放っていた兵士達が次々と煙に飲まれていく。
すると煙に燻された敵の兵士達は目やのどを抑え、苦しみながらその出窓から押し出されるように次々と落ちていった。城門の上の方からまるで絶叫に似たような兵士達の叫び声が次々と木霊する。
(なんだ!? 異変か!?)
俺はガドリング砲の銃撃を止め、様子を伺うと
城門の方から凄い刺激臭がする。
唐辛子の焼けるような、薬草の焼けるようなそんな匂いだった。
「ギルド長!!」
俺の横にいたリードさんがゲートハウスを指さして叫んだ。
「たぶんあのゲートハウスの中にギルド長がいます。」
「なんだって!?」
俺は慌ててリードさんを見た。
「マルボル殿。あれはおそらく洞窟にいるモンスターを燻り出す時に使う煙幕です。
特にギルド長のはご自分で作った超強力な特製品らしくて・・・・・。
実際、その煙に当たると目や喉に悶絶する程の激痛が走り、涙が止まらなくなるんです。」
リードさんの話によるとその煙幕の正体は唐辛子のような刺激の強い香辛料やハーブを漬け込んだ酒をしみこませて乾燥させた布を特殊な燃料を使って燃やしたものらしい。
煙を吸うと死にはしないがとんでもない事になるとの事。
「ええッ!? でもそれじゃあ、ギブソンさん達も?」
俺はビックリしてリードさんに聞いた。
「・・・・それはたぶんですが大丈夫です。まぁ、少しは影響があるかもしれませんが、煙は上へと昇るので被害のほとんどはゲートハウスの中や側塔の中でしょう。でもきっと中はとんでもない地獄なんでしょうね・・・・・」
彼女は濛々と煙の吹き出すゲートハウスをぼんやりと眺めながら答えた。
「ええっ!でもエバンスさんはその中にいて平気なんですか!?」
俺は不安になってリードさんに聞いた。
「・・・・いえ。あの方なので恐らく死にはしないとは思いますが・・・・。きっと中で敵の兵士と一緒に死ぬ程もがき苦しんでのたうち回っているんでしょうねぇ・・・」
リードさんは城門に向かって目をつぶって手を合わせていた。
「・・・・ははは・・は。」
・・・・・・とりあえず俺は城門を登りに行く事を止めた。
(・・・・・・無理。)
メイベルを見る
彼女も俺にそこへは行くなと何度もぷるぷると首を振っていた。
・・・・・うん。そうする。
ちーん。
読んで頂き誠に有難う御座います。月初は仕事が忙しくて更新が少し遅れます。
申し訳ございませんm(__)m




