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第59話.機略?

誤字・脱字はご容赦下さい

●59.機略?


ガタン、カタガタ・・・・

俺は揺れる馬車のホロ付きの馬車の荷台の中で目を覚ました。

「うーん・・・・」


外はまだ夜のようで貨車の中は小さなランプが灯り、貨車の荷台を薄暗く照らしている。

俺は木造の貨車の固い床にそのまま眠ったせいか体の至る所が痛い。

俺は被っていた毛布をのけ、むくりと起き上がり横を見ると、メイベルはすでに起きていて弾薬の入った箱から弾を取り出しながら静かに弾帯を結ぶ作業をしていた。


「・・・・・」


「ケンスケ、おはよう・・」

メイベルは弾帯を結ぶ手を止めてクスリと笑った。


「あっメイベル。おはよう。もう起きてたのか。体の調子はどうだい?」


「うん、もう平気だよ。少し眠ったらすっかり良くなった。ケンスケはどうなの?」

メイベルは言った。


「はは。メイベルは若いなぁ・・・。俺は少し頭がぼーっとするけどもう大丈夫だ」

俺は頭をポリポリと掻いて枕元においていた帽子を被った。


俺は貨車のホロから顔を出し、馬を引く御者の兵士を見た。

すると御者の兵士は俺に気が付き、嬉しそうに話しかけて来た。


「あっ、マルボル殿。起きられましたか!!」


「ああ、おかげでよく眠れたよ。」

俺は深くかぶった帽子をヒョイとつまみ上げ、御者の兵士にお礼を言った。


「今、状況はどうだい?」俺が聞くと、


御者の兵士は馬の手綱を動かしながら

「はい。進軍は順調です。あと三時間もせず夜が明けます。先頭はまもなくコリンダークの城が見える所まで到着致します。」


「そうか。俺は結構な時間眠ってたんだな。」

俺はその時、かなりの時間眠っていたことに気が付いた。


「マルボル殿は昨日あれだけの戦いをされたのだから仕方ありませんよ。それとつい先程街の偵察に出ておられたグレース殿も任務終えてこちらに戻られています。」


「グレースが?」俺は聞いた。


「はい。先程グレース殿がこちらまで来られたんですよ。それでギリギリまでマルボル殿には休んで頂くようにと言われました。マルボル殿が起きられた事は今から伝令を出して先頭に伝えましょう。」


「ああ。宜しく頼む」


それからしばらくして、俺達を乗せた馬車は少し道を外れ、コリンダークの街が見える小さな丘の上たどり着いた。

そしてその馬車は先頭を進んでいた騎士達が急いで作ったと思われる簡素な陣地にそのまま乗り入れた。


俺とメイベルは馬車から降り、兵士に連れられ二人で陣の中の司令部のある大きなテントの中に入る。

既にテントの中央には鎧を着たティアナ姫とロベルトさん、あと砦の隊長のギブソンさんもいる。そしてその横には見慣れない兵装をしたグレースと黒装束を着こんだ若い女性がいた。


「ケンスケ!」

俺達がテントに入るなり、すぐに気が付いたグレースは俺に声を掛けてきた。

それからグレースは隣の黒装束の女性と一緒に俺の側までやって来ると軽く握った拳を俺の胸元へ出した。


「・・おう」

俺は少し遅れたタイミングだったが、その拳に自分の拳を軽く合わせた。


俺はグレースの元気な様子にホッと安心しながら聞いた。

「グレース、無事でよかった。ところでそちらの方は?」


「今回、街の冒険者ギルドに街への潜入を手伝ってもらったんだ。

そしてこの人はコリンダークの冒険者ギルドの職員をやってる人で、名前はリードだ。」


「そうか。」

俺はリードさんに向かって軽く頭を下げた。


リードさんはにっこり笑って

「はじめましてマルボル殿。リードです。」

リードはケンスケにペコリと頭を下げた。


リードさんはそのまま


「あなたがあのグレースが惚れたという・・・」

その瞬間・・・


スパンッ!!!


グレースは無言でペコリと下げたリードの頭を横から引っぱたいた。


「!?ッ」


「ケ、ケンスケ・・・!!おっ・・奥でティアナ姫達がお待ちだ!作戦会議を始めようじゃないか!!」

グレースは大慌てしながらそう言うと、真っ赤な顔をして俺の腕をぐいっと掴み、テントの奥へと引っ張っていった。


「・・・・・おっ・・おう。」

俺はグレースにされるがまま、反射的な返事をした。


俺はグレースに引っ張られながら隣にいるメイベルを見ると

メイベルはグレースを見てクスクスと笑っていた。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・と言う事だ。


俺達は簡素なテーブルを囲い、用意された椅子に座ってグレースの報告を聞いた。

グレースは皆の前で立ったまま街に到着してから今までの事を報告した。


グレースは街の門番や予備兵の事、街を巡回するテスターの兵士の事等、それと彼女と一緒に協力して城へ潜入したこの街のギルドマスターの事なんかも詳しく話をしてくれた。

そして現在、グレースと一緒に偵察に出ていたディックさんは既に街の予備兵を集めて待機しており、街へ入る際には内側から街の入口を解放し、街を巡回するテスターの兵士の足止めをするといった段取りが出来ている事。

そしてトールさんは城内で捕まったふりをして領主の近くで待機している事を聞いた。


俺とメイベル以外の皆には既に報告済みだったようで、皆、無言でグレースの話を聞いていた。


「お父様・・・・・」

ティアナ姫は心配そうに呟いた。


「姫、トールはいざという時にはとても頼りになる男です。きっとカイン様を全力でお守りするでしょう。さぁ我々の戦いはこれからです。姫はお気を強く持たれるのです・・」

ロベルトはそう言ってティアナ姫を勇気づけた。


ロベルトは俺を見て言った。

「マルボル殿、これからの首尾はいかがいたしましょうか?」


(え!?)


「・・・・・・・・」

俺はまたもや皆に作戦を振られ、泣きそうな気分になる。


(こまったな。・・・・てかもうわかんねぇよ(泣)。城攻めとかやった事無いし。)


ふと目線を外すと、メイベルが俺をじっと見詰めている。


(いかんいかん。ここで俺、何か言わないと・・・・)


俺は帽子を深くかぶり考える。


俺は泣きそうになった表情を帽子で隠し、気を引き締める。

とにかく話を進めないと・・・な。


「うーむ、やはり問題なのは城門の攻略だな。エバンスさんの協力があるとはいえ、

今の話じゃ城門を開けるのに時間がかかればかかる程、領主やトールさんの命が危険になる。混乱した城内では捕まえた領主の命が敵の唯一の“切り札”になるからな。

最初、俺は城への隠し通路を使って城内への侵入もありかと考えていたんだが、聞いた所、それじゃ間に合いそうにない。俺は城門に回った方がいいかもな。」


うん。・・・・コレは咄嗟にうまく周りを誤魔化す為、思いついた事を言っただけ。

単に隠し通路を使って城内へ少数精鋭で攻め込むような作戦にでもなってしまえば、必ず自分に先頭を切るような危険なご指名が来るだろう。

俺は単純にそれが嫌だったの・・・。


そんな危険な作戦は今のうちにもっともらしい理由をつけて潰しておこう・・・・・。


それはサラリーマン的に“リスクマネージメント“ともいうんだっけ。


「・・・・・・・・」

それからケンスケは出来るだけ自分に危険が少なく、しかも重要な役割がないか考える

やがて思いついた事を急いで纏め終わると・・・・


「次の作戦だが・・・・・」

周りの皆は立ち上がった俺に注目する。


俺は皆に作戦を話した。

「・・・・・俺はやはり主力とともに城門を突破する。

城門が開いたらロベルトさんは主力を率いて西の淵塔へ向かって進軍してくれ。

領主を救出して身柄を確保するのが先決だ。

そうなれば敵の警戒の半分はそっちへ向くだろう。俺とメイベルはそっちへ向かう敵の足止めをしながら手薄になった城に入って城内の敵の親玉を倒す事にするよ。」


(うーん、もっともらしい作戦。そもそも城門が開かなきゃどうせ失敗なんだし。

その後もわざわざ敵が殺到する領主のいる場所なんかにはずっと居たくないしなぁ・・・)


「なるほど・・・了解です。」

ロベルトさんはうんうんと相槌を打つ。


「・・・ロベルト、私も行きます!」

ティアナ姫が立ち上がってロベルトに言った。


俺はティアナ姫を見ると、ティアナ姫は震えながら

「父上は私が救い出します。父上にそう約束致しました。」


「・・・・・」(すごい事になってきたな・・・汗)

俺は黙ってロベルトを見る。


「分かりました。ではこのロベルト、命に代えましてもそれまで姫をお守り致します」

ロベルトは頷いた。


すると


「私達はどうしたらいい?」

グレースは聞いて来た。その隣にはリードさん、砦の隊長のギブソンさんもいる。


(・・・え!?・・・・あっごめん、忘れてた・・・・汗)


俺は三人には特別、重要な役割があるように言った。


「・・・ゴホン。ええと、三人はそれぞれ大事な役があるんだ。

グレースは主力のロベルトさんを助けてくれ。

ティアナ姫もいる、当初の流れでは俺はグレースには姫の仮面を被って貰い、主力を率いて進軍し、敵を西の淵塔に引き付けてもらおうかと思っていたんだがな。」


「そうだったのか!」

グレースは言った


「・・ああ。だがしかし今、姫は主力と一緒に領主の救出へ向かう事に決まった。作戦としては敵を引き付ける役が本物の姫に代わっただけだ。その分、兵の士気は上がる。しかしそれによってきっとリスクもそれなりに増えるだろう。だから腕の立つグレースが姫の側にいるとなれば俺は随分と心強い。すまないが俺の代わりに姫を守ってくれ」


「ああ。引き受けた。」

グレースはそう言って力強く頷いた。


俺は続いてリードさんを見る。


「・・・リードさんは城門が開いたら街の冒険者と一緒に城門に潜入しているエバンスさんをいち早く見つけて救出するんだ。

彼の勇気ある行動を俺は絶対に見捨てる事なんて出来ない・・・・。」


「!!!!」

リードさんは俺を見て震えている。


「・・・英雄だ・・・・」

リードさんはポツリと呟く。


最後にギブソンさん・・・・どうしよう・・・。


「そしてギブソンさんは城門を抑え、テスターやロズワルドが脱走するのを防ぐんだ。

そしてディックさんや城外の予備兵とも連携をとって余裕が出来次第、城内へ増援を送って欲しい。」


「分かった。」

三人はそう言ってこくりと頷く。


「・・・・・・」


俺は三人を見詰める。

咄嗟に思いついた事を言っただけだが・・・・

・・・・うまく誤魔化せた。ふぅ。


それに周りを見ると皆はズブの素人である俺なんかが立てた即興の奪還作戦なのにもかからわず、とても満足した様子で了解してくれているようだった。


・・・・まぁ。とりあえず良かったのかな。


さて、渡されたボールは返すとしよう。これ以上俺に色々話を振られるとボロが出そうだ。


そして俺はティアナ姫に言った。


「・・・・ティアナ姫。そしてこれはあなたの最後の戦いだ。これからあなたは軍を奮い立たせ、主力の先頭を切るんだ。・・・・決してあきらめるな。勝敗はあなたに掛かっているんだからな。」


「はい!」

ティアナ姫は細い拳を握りしめ意を決して立ち上がった。


うん。うまくボールは返せた・・・・。


よかった。

あとは皆が上手くやってくれるでしょ・・・。たぶん。


俺は両手で顔をパンパンと軽く叩き、皆ににっこりと笑顔をみせた。




読んで下さり誠に有難う御座います。

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