第54話.潜入
誤字・脱字はご容赦下さい
●54.潜入
夜、グレース達はコリンダークの街に到着した。
グレース達三人は街の正門前をうかがうと
街の入口であるその街門にはかがり火が焚かれ、槍を携えた門番が数名入口の警備をしていた。
グレースはひとまずロベルト配下の騎士ディックとトールに近くに隠れているように指示し、グレースは一人、その街門へ向かった。
グレースがその街門を通ろうとした時、門番はグレースに声を掛けた。
「止れ。今夜は領主様からの命令で街への通行は出来ない。」
「そうなのか?」
グレースはとぼけながら門番に尋ねた
「一体なにがあったんだ?私はラサンの冒険者ギルドのグレース。ギルド長から緊急の要件でコリンダークのギルド長へ会わなきゃならないんだが・・・。」
門番の男は首を振ってグレースに言った。
「ラサンの冒険者か。今何があったのかは箝口令が出ていて言えない。てか俺達みたいな下っ端は何も聞いてないから分からないんだけどな。とりあえず今夜は誰も通すなと領主様からの命令が街の各門に出ている。うーむ、しかしラサンのギルド長からの緊急の要件ならせめて要件を書いた書状とかは持っていないのか?それなら一応、今から上に取り次ぐ事くらいなら出来ると思うが・・・。」
グレースは困った顔をして
「ああ、まさか街に入れないとかは思わなかったから何も持って無いんだ。仕方ないな。ではここの門番でハンスかマグニーという者がいると思うが呼んでくれないか。」
「わかった。マグニーは今非番で居ないがハンスならいる。しばらく待ってろ」
門番の男はそう言って街門の奥にある屯所の中に入って行った。
しばらく待っていると、さっきの門番の男はもう一人の男を連れて屯所から出てきた
「やぁ。グレースじゃないか」
出てきた男はグレースに手を挙げて話しかけた
門番の男は
「ハンス。知り合いか?」
「ああ。この人はグレース。ラサンの冒険者ギルドの教官だよ。決して怪しい人じゃないよ」
「ふーっ。そうか」
先程の門番の男は肩の力を抜いて答えた。
ハンスはグレースに言った
「グレース、さっき聞いたと思うけど今は街には通行できないんだよ。ところで俺に何の用だい?」
「すまないハンス。実は頼みがあってな。これを急いで冒険者ギルドのギルドマスターの所に届けてくれないか?これでとりあえず私の要件は伝わるはずだ」
グレースは小さなメダルの様なものを取り出してハンスに渡した。
「あとこれも。頼む。」
グレースは小さなナイフを取り出して自分の髪を少し切り取りハンスに渡した。
「・・・・ああ、わかった。急いで行ってくる。」
「すまない」
ハンスは急いで街の中へ走っていった。
グレースは門番の男に明日の朝にまた来ると告げて街の外へ去った。
その後グレースはディック達と合流し街の離れの森で小さな焚火を囲って待つ事にした。
しばらくすると
焚火のむこうからニ人の影が現れた。
「グレース。付いてこい」
「ああ。みんな行こう」
グレースはディックとトールに声をかけ、急いで焚火に砂をかけて消火し、立ち上がった。
「そちらの二人は?」
黒い影がグレースに聞いて来た。
「すまないが一緒に頼む」
「わかった。」
グレース達はニつの黒い影について行った。
その二人の影のような人物は真っ黒の服装をして目出しのマスクをしている。
二つの影と共にグレース達はコリンダークの街を囲う長い石壁のしばらく沿うように進む。
すると街の中央を流れる小川が街の防塁の外へ流れ出る場所があった。
小川の中にも鉄で大きな柵が設けられており街への侵入は出来そうにない。しかしその小川の側、繁みに隠れて小さな溝のように作られた堀があった。
二つの影はその堀の中へ飛び込む。
その堀の奥には人が一人通れるくらいの街への抜け穴が隠されてあった。
その抜け穴に入り、狭く長い通路をしばらく進むと先には小さな戸板があり、その戸板を外すと、街の中の小さな民家の床に繋がっていた。
「ここまで来れば安心だ」
二人の影は顔の黒いマスクをとった。
二人は精悍な顔立ちをした男女だった。
男は坊主頭で碧眼の偉丈夫。女はやや小柄ながら鍛えられた体躯をした褐色の髪の美しい女性だった。
「助かったよ。エバンス、リード」
グレースはその二人ににっこり笑ってお礼を言った。
グレースの後ろにいる騎士二人は、その男女に敬礼をして感謝の意を示した。
「こちらのおふた方は?」
ディックはグレースに聞いた。
「この街の冒険者ギルド長のエバンス。それとギルド職員のリードだ」
グレースは二人を紹介した。
「かたじけない。エバンス殿、リード殿。私はラッセル騎士団 親衛隊のディック。そしてこちらは同じく親衛隊のトール。訳あってこの街への潜入をグレース殿にお願いした次第です」
「んん?ラッセル騎士団が? グレース、一体何があった!?」
エバンスはビックリしてグレースに聞いた。
グレースは事の経緯を二人に詳しく話した。
「・・・・まさか・・・。そんな事が城で起こっているとはな・・・・」
エバンスとリードは呆然としてグレースや二人の騎士の話を聞いた。
「ああ。ティアナ姫からこの手紙も直接預かっている」
グレースはティアナ姫からの手紙をエバンスに渡した。
エバンスは手紙を急いで目を通す。読んでいくに連れ彼の大きな両手は次第にわなわなと震えてだしていた
「・・・・たしかに・・・緊急だな。」
「ああ」
グレースが街の門番のハンスに渡したのは冒険者ギルドの副ギルド長のメダル。それに自分の特長である赤い髪を添える事でグレース本人からコリンダークのギルド長へ街や領内の存亡レベルの緊急の危機が迫っているという事を意味していたのだ。
この符号については冒険者ギルド内でも副ギルド長以上の人間しか知らない。
「・・・・どうする気だ?」
エバンスはグレースに聞いた。
「今は街の情報が欲しい。そして今、ティアナ姫は500の軍と一緒こちらへ向かっている。到着はおそらく明け方近くになると思う。そして街中にラッセル騎士団の予備兵がいると思うがそれまでにひそかに集めてほしいんだ。たぶん街の中にいる予備兵達には今何が起こっているのかまだ伝わってはいないと思う。」
「そうだな。門番のハンスの奴もいつも通りだったからな。多分城内で何が起こっているのかはまだ知らされていなんだろう」
「それとエバンス、テスター軍とロズワルド騎士団の動きはあるか?」
グレースはエバンスに聞いた。
「ああ。朝方、ロズワルドの騎士団の大軍が街を出て行ってからその後は街の中ではあまり見ないな。だがテスターの軍は今でも街の中を巡回しているようだ。昨日に比べて数はかなり少ないがな。」
「・・・・・・・」
グレースは暫く考えるとディックとトールに尋ねた
「急いで街の予備兵の収集を行いたいのですが。どうしたらいいですか?」
ディックは答えた。
「はっ。おそらく今街の屯所にいる予備兵は主に第四騎士団と第七騎士団の予備兵です。彼らとは面識がありますので説得は私らが行うと良いでしょう。」
「わかりました。そこはディック殿、お願い致します。集合は夜明け前。それまで兵士達は出来るだけテスターやロズワルドの兵に見つからないよう屯所近辺にて待機。夜明け前にひそかに街の正門へ移動、お願い致します。」
「は!了解致しました。」
ディックは頷く。
それからグレースはその隣にいるトールに言った。
「あとトール殿。そういえば城内へ繋がる抜け穴があると言ってましたよね。私と二人で城内へ侵入出来ませんか?領主の救出まではいかないまでも領主の無事と城内の様子くらいは探っておこうかと思うから。」
トールはグレースに答えた。
「は!侵入は出来ると思います。しかしカイン様の救出は難しいでしょうね。城内の牢といえば、その場所は城内の四つの淵塔のうち北塔と西塔の地下にあります。カイン様が牢に幽閉されているならばこの二か所のうちどちらかになると思います。城内への抜け穴の出口が中央棟の三階まで登った所ですから、そこから地下牢までは遠く、城内に潜入しても見つかる可能性は高いと。もしそうなった場合は脱出も非常に困難になるかと思います」
「・・・なるほど、困ったわね・・・・」
グレースはそう言って考え込む
するとエバンスが言った。
「それじゃあ俺も行こう。俺は何度か領主との会談で何度も城内に入った事はある。領主も俺には面識があるから助けに来ても怪しまれないはずだ。そしてリード・・・」
「なに?ギルド長」
リードはすぐに返事した。
「お前は今からギルドに戻り冒険者を集めろ。それと集め終わったら城外の北と西に数人寄越せ。逃げるときには合図する。」
「了解したわ」
そう言うとリードは急いで外へ出て行った。
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