第48話.動乱
誤字・脱字はご容赦下さい
●48.動乱
昨日の夜の事。コリンダーク城内にて
突然事件は起きた。
WAAAAA――――!!
城内の下の階層で沢山の叫び声が上がる
「!? 何事だ!!!! 誰かおらぬか!!」
自室でロズワルドとの夜の晩餐の準備をしていたカインは城内の叫び声を聞き、急いで従者を呼びつけた。
ドタドタドタ・・・・バァン!!!
カインの部屋の扉が激しい音を立てて開いた。部屋に飛び飛んで来たのはカインとよく面識のある護衛の騎士団の兵士の一人だった。
「領主様大変です!」
その兵士はカインの元へ大急ぎで駆けつけた。
その兵士はカインの前で片膝をつき急ぎ臣下の礼をとる
「なんだ!? 一体どうしたのだ!?」
カインは慌ててその兵士に何が起こっているのかを聞いた。
「む、謀反で御座います!!先程城へ到着されたご子息のテスター様が一軍を率いて突然この城内へ攻め入って参りました! しかも城内にも複数の内通者がいる模様です!」
その兵士は領主へ緊急の事態である事を報告する。
「なにぃ!! テ、テスターが裏切ったというのか!!??」
カインはその兵士の報告を受け、愕然となって叫んだ。
カインは前もって三男のテスターには本日ロズワルド卿がコリンダークの城へ来訪する為、城内の警備の強化を図るという目的で、彼の管轄する領地の騎士団の兵200名を引き連れコリンダークの城に一時帰還するようにとの指示を出していたのだ
兵士の報告は続く。
「しかも今回、テスター様はロズワルドの騎士団と共謀している模様!内通者によって内側から城門が開けられた後、城門はロズワルド騎士団に抑えられてしまいました。まもなくテスター様の軍勢がこちらへ雪崩込んで来るかと思われます!!!」
「なんだと!! 我が騎士団は今一体何をしている!!?」
カインは状況を整理しようと慌ててその兵士に今の自軍の現状を聞いた。
「城内には200名程の兵は残っておりましたが、城内に入ったテスター様の突然の奇襲を受けて半数が壊滅しました。その他の兵はテスター様の一軍がご到着の際に、テスター様からの城内や街の警備の交代の指示が出されて、それまで城内にいた残りの兵300は今、街の外に出されております。城門が抑えられた現在、外へ出た兵へ帰還の命令は敵の情報封鎖により指示が出せません!!」
「ぐぬぬぬぬ・・・・・・くそぉ、戦況は一体どうなっておるのだ!」
「はっ!城内で戦える我が兵力は現在僅か100名程、敵は城内に400程となります。現在ご長男のヘンリー様が指揮を執り、城の一階の広間、二階の回廊とで敵と激しく交戦中で御座います。城内の敵の内訳はテスター様とロズワルドの騎士団を合わせて300の他、テスタ―様が民に変装させ街に埋伏していたとみられる兵約100がその後続々と城内へ侵入して来ました。そして現在、城の外にも敵の一団がおり、それらに城門は抑えられている模様です。」
「な・・・・なんという事だ・・・・。」
カインは真っ青になってその場に跪いた。
しばらくすると
「お父様――――!!!」
ティアナが泣きながら部屋へ駆けつけてきた。力なく膝をついているカインに抱きついた。彼女は既に自分の甲冑を着ており、彼女の側には彼女の護衛を任せている騎士ロベルト達数名が控えている。
「ティアナか!! おお・・無事だったか!!」
カインは慌ててティアナと抱き合った。
だが一呼吸ほどの時間をおいてカインはティアナを引き離し、彼女に厳として言った。
「・・・・ティアナ!お前の兄、テスターがロズワルドと共謀しこの城で謀反を起こしたのだ。今からお前はロベルト達と共に行動し、何としても城外へ落ち延びるのだ。分かったね。」
するとティアナは涙ながら首を振り、カインの命令を懸命に拒んだ。
「嫌です!!嫌です!! 私はお父様と共にこの城に残り最後まで戦います!」
カインは静かに首を振り、ティアナの目を見つめながら
「ダメだ!お前はロズワルドの息子からも狙われているのだ。テスターとロズワルドが共謀している今、捕まるときっとお前はロズワルドへ引き渡されるだろう。お前が奴らの手に落ちれば必ず悲惨な運命が待っている。私はそんなお前を見殺しには出来んのだ!!」
カインはティアナの両肩へ手を置き懸命に泣きじゃくる娘に言い聞かせた。
「ロベルト!!」
「はっ!ここに!」
ロベルトはカインの側で片膝を立てて臣下の礼をとる。
「お前は残った手勢10名を連れティアナとこの城を脱出せよ!」
そういってカインは立ち上がり懐から小さな鍵を取り出し、ロベルトに手渡した。
その後、カインは自分の部屋の脇に並ぶ本棚の側へ行くとその大きな本棚をぐいっと横にずらした。
その先には人が一人通れる程の小さな抜け穴があった。
「これは秘密の抜け穴だ。この抜け穴の事は城内で私だけしか知らん。そしてこの通路の先は階段があって地下にまで繋がっている。そしてこの鍵は通路の中にある扉の鍵だ。外側から鍵をかけ、もしもの場合の敵の追跡を防げ。この通路は長く城下街の西側にある第三馬厩舎の裏まで繋がっている。そこから馬を出し繁みを抜ければ敵に気付かれぬようこの街からの脱出が出来るはずだ」
「ではカイン様もご一緒にここを脱出すべきです!!」
ロベルトはカインに言った
「いや、私はこの城に残り出来るだけ時間を稼ぐ。その間にお前はティアナを連れて逃げよ!」
「・・・・しかし・・」
ロベルトは俯きカインの命令に不満を漏らす。
「嫌!!嫌!! お父様も一緒に逃げるのです!!」
ティアナもカインに向かって叫ぶ。
カインは二人言った
「私は領主として沢山の部下を城に残し一人だけ逃げ延びるなんて事は出来んのだ。それに私はきっと大丈夫な筈だ。私は領主である身分であるが故、私の身柄はひとまず敵に捕らえられるだけであろう。国の法の裁きも無く、無下に領主を殺す事などは国家への反逆罪となるが故、やつらにはそれは簡単に出来ないはずだ。奴らが私を殺すのは奴らが私を捕まえた後に何かの罪をでっち上げ、私を王都へ送ったその後だ・・・・・」
WAAAAA――――!!
次第にドタドタとした城内の騒ぎ声や騒音がカインの部屋にまで大きく届くようになって来た。
しばらくして
「カイン様!!ご長男ヘンリー様が討ち死になされました!!まもなくこの階層へも敵が攻め込んで参ります。」
ボロボロになった数人の兵士達がカインの元に駆け込んで来て叫ぶ様に報告した。
「!!」
「ヘンリーお兄様―――っ!!!」
ティアナは泣き叫んだ。
「私もこの部屋を出て参戦する!それまではここの階の階段を何としても死守せよ!」
カインはその兵士達に命令を出した。
「・・・ロベルト!ティアナの事は任せる!これは私の最後の命令だ。よろしく頼む!」
そう言ってカインはロベルトの肩に静かに手を置いて目を瞑った。
「・・・・この命に代えても姫の事をお守り致します!」
ロベルトは涙を流しその鍵を握りしめた。
「姫!!今はカイン様のご命令に従うのです。これより我々は急いで城外へ脱出致します。」
ロベルトはそう言って自分の脇に抱えている鉄仮面をティアナの頭にそっと被せた。
「お・・お父さま・・・必ず助けに参ります。・・ぐすん・・・ひっく。」
ティアナは泣きながら呟く。
「・・・カイン様。不甲斐ない我々騎士団をお許し下さい。」
ロベルトは震える声でそう言うと一度だけカインに向けて深く頭を下げた。
そして彼は近くにいた10人程の配下と泣きじゃくるティアナを連れその抜け穴の中に逃げ込んでいった。
ガラガラ・・・・バタン。
ロベルト達全員がその抜け道に入るとカインはすぐに大きな本棚で抜け穴を隠した。
「・・・・・・必ず、我々はカイン様をお救いする為に戻ります」
真っ暗なその小さな抜け穴の中でロベルトも涙ながらに小さくそう呟いたのだった。
ロベルト達一団は通路を抜け、城下の馬宿舎で馬に乗った。
そして夜の暗闇の中、街の裏門を抜け、大急ぎでコリンダークの街を離れた。
「ロベルト!これから私達はどちらへ向かうのです?私達は街の外にいる味方の兵と合流するのではないのですか?」
ティアナはロベルトに聞いた。馬上の彼女の表情は鉄仮面で覆われ分からない。
しかし彼女の声は必死に泣くのをこらえているような悲しい声だった。
ロベルトはティアナに答えた。
「姫。コリンダークの城が落ちた今、街の外にいる我が守備隊の兵士と早々に合流するのは非常に危険なのです。その兵の中にもテスターやロズワルドと内通している者がいるかもしれないのです。我々は10名程。もしそうであった場合もはや我々には逃げ場などありません。」
そう言うとロベルトは自分の信頼のおける配下二名を呼ぶ。
「ディック!トール!いるか!!」
「「はっ!!」」
二人の騎士がロベルトの前に来る。
「お前達二人は今から此処より離れ、街の外に出された守備隊300とすみやかに合流せよ。そして各隊長にはコリンダークがテスターとロズワルドの共謀により落ちた事を伝え、極力敵とは交戦をせず速やかに北の砦へ退却するのだ。そこにはヘンリー様の配下の国境防衛の騎士団が砦を守っている筈だ。あそこは早々には落ちん。後、出来れば退却の際、守備隊の女性騎士の数名に仮面を被せるんだ。そして姫が城外へ逃げて北の砦へ向かったような偽情報を流し、追手を攪乱してくれればなお良い。我々は暫く身を隠した後に北の砦にて合流する」
「「はっ!! 了解致しました!!」」
そう答えるとその二人の騎士はロベルト達から離れ、彼らは暗闇の中、まだ城外いるであろう守備隊の方へ馬に乗って急いで駆けて行った。
「姫、我々は一旦西へ。今晩は近隣の村にて潜伏し食料等を調達した後、明日頃合いを見てラサンの街へ向かいましょう。姫は我々と一緒にそこでひとまずお姿を隠して頂きます。そしてかの英雄ケンスケ=マルボル殿をお探しし、我等にご助力頂けるようにお願いするのです。聞くところによると、あの方はまだラサンの街の近辺におられる筈です。きっとあのお方ならば我々の力になってくれる筈でございます。」
ロベルトはそう言って、今も泣きそうになりながらも気丈に振る舞っているティアナを思い、彼女を元気づけるように今後の方針を伝えたのだった。
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