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第39話.採石場の化物

誤字・脱字はご容赦下さい

●39.採石場の化物


「グレース、ここを一番下まで下れば採石場じゃな?化け物の他に敵が隠れているやもしれんが妙に静かじゃな・・・。」


採石場へ続く縦穴の崖に添う坂道を慎重に下りながらエドリックは呟いた。

縦穴に添う坂道を下る途中には所々に点々と横穴が開いているのが見受けられる。

それは以前に掘られた古い坑道のようだ。


グレースはエドリックに言った。

「新しい坑道はこの縦穴の底、一番奥から真横に伸びている。おそらく人質はその坑道の中に取り残されていると思う・・・」


「・・・・・・そうじゃな。急ごう」


縦穴を下へ下っていくにつれ所々に無残に転がる鉱夫達の死骸が次々と見える。それは焼け焦げて炭のようになった人型のものや、体の半分以上が潰れたもの、上半身と下半身を真っ二つにされて惨殺された人間の死体であった。


「・・・ゴクリ。」


先を進むグレースは頭を振って、脳裏によぎる不安を追い払う。

彼女は小さな街とはいえラサンで一番の腕の立つ冒険者であった。

今、彼女の心臓はドクドクと全力で走った後のような音を立てている。


グレースの容姿は美しく、彼女の体は所々に小さな古傷が見受けられるが見事に鍛え抜かれた体つきをしており、剣の腕も街の兵士達よりも格段に上だった。若いがギルド長のカーネルと同じくAランクの冒険者資格を持ち、街の副ギルド長として冒険者たちの教官も兼任している。

だが、今回に限り、幼少の頃から冒険者として数々のモンスターとの闘いや依頼をこなして来たそんな歴戦の彼女でも、採石場へ続く坂道を下っていくに連れ、その敵のヤバさに彼女の美しい顔は引き攣りはじめ、毛穴は逆立ち、次第に心臓が驚くほどの警鐘を鳴らし始めていた。


最下層の採石場に到達した時、その一面に広がる惨たらしい光景にグレースの体は激しい鼓動が高鳴っているのにも関わらず、全身に悪寒を感じてガタガタと震えそうになる。


「大丈夫じゃ。心配するな」

エドリックはその様子のグレースに優しく声をかけると、彼女の肩をポンポンと叩き、彼女の気持ちを落ち着かせた。


「・・・・すまない、エドリック。もう心配ない」

グレースは歯を食いしばりその恐怖を懸命に打ち殺した。


「・・・そうか?・・・おお、ようやく意識が切り替わったようじゃの。流石はAランクの冒険者じゃ。おぬし、おなごなのになかなか強いの。・・・・まぁ儂はおぬしの不安はわかるがの。ヤツは凄まじい強敵の様じゃ。でも心をしっかり持つんじゃぞ。ここには儂もおるし、近くにはケンスケ達もおるんじゃ。おぬしは人質の救助も大切じゃが、まずは自分の身を守る事の方も大切じゃ。こういう時はグレース、真っ先に生き残る事を考えるんじゃ。無理はするな。これはおぬしの助けを待っている人達のためにもな・・・・・・。では共に坑道へ向かうぞ。」


「ああ。わかった。」

二人はゆっくりと不気味な静寂の中、採掘場の中央へ向かう。


薄暗い縦穴の最下層。

周りには惨殺された死体や、人体の残骸の一部などが地面のいたるところに点々と散らばっている。

採石場の一帯は日の光は真上からわずかに差し込む程度で薄暗く、焼け焦げた煙や砂埃でうっすらモヤが掛かっている状態だった。その中央には、各坑道からトロッコのケーブルを引っ張る為の大きな滑車のついた小屋が数軒並んでいる。


「!!!!」

薄暗いモヤの先に大きな影が浮かぶ。


「何かいるぞ!!」

グレースは叫んだ。

グレースの声と同時に暗闇の大きな影から二つの真っ赤な光がギラリと輝いた。


「!!」


ドルルル・・・・ギュイィィイイィィィィーーーーーン!!


けたたましい音を立ててモヤの先から巨大な影がゆっくりと近づいてきた。

二つの赤い光を放つ眼はゆっくりと立ちすくむ二人を見下ろす


「なんじゃぁ!!!!ありゃーーー!!?」

エドリックは叫んだ。


うっすらと見えるモヤの先に映ったのは


大きな黒い鉄の塊。塊の正面には短い筒のような物が真ん中に一つ付いている。そしてその鉄塊からは蜘蛛のような長い脚が左右に四本ずつ。前方には別に長い鉄の腕が左右二本伸びており、先端には巨大な円盤の様な物がついていた。その円盤はギュイーンと凄まじい機械音を立て物凄いスピードで回転している。胴体の後ろには長い鉄の尻尾のような物まで付いていた。


まるで黒い金属で出来た巨大な蠍のような物体だった。

さらに蠍の頭部付近には人間らしき形をした上半身がくっついている。

その人間らしき形の人物の手には分厚い盾と長いハルバードのようなものが握られている。真っ黒い甲冑を着て、頭には真っ黒の兜を被り、顔は漆黒の骸骨のようなフルフェイスの面を付けていた。その骸骨の面の眼窩から不気味な赤い光が出ており、立ち竦んでいる二人をゆっくり見下ろしていた。


「来タカ・・・・待ッテイタゾ・・・・・・」

金属の蠍についている漆黒の人間が喋った。


「ああああ・・・・・・・・!!」

グレースは驚愕して思わず声をあげた


エドリックも驚愕しながらも蠍と一体化したような化け物に聞いた。

「人間なのか!?・・・・・・おぬしは・・一体何者じゃ!?」


「ククク・・・・我ハ、夜行ノ五指ノ一人。斬鬼グラインダー・・・」


「なに!! 夜行だと!? 夜行はとうの昔に全員死んだはずじゃ!そんな馬鹿な!!!!・・・・・ではこれ・が・・・これが・・・ホーストの力なのか?」

わなわなと震えながらエドリックは不気味に光る赤い眼の蠍、グラインダーに聞いた。


「クククク・・・ソウダ・・・我等ハ遂ニにホーストノ英知ヲ手ニ入レタノダ。コレハ魔導機関ノヒトツ、我等ガ開発シタ魔導兵器、魔導騎獣ダ」


「なんじゃと!!!!」

エドリックは驚愕して叫んだ。


「ククク・・・・・デハ、ソノ女トモドモ死ンデモラオウカ。エドリック」


グレースは震えながらも両手のバスターソードを握り込み構える

エドリックも腰の短剣を抜いた。

その瞬間、グラインダーの目が赤く光った。


ギュイィィイイィィィィーーーーーン!!


「!!」


巨大な鉄蠍の両腕がけたたましい音を立てる円盤と共に振り上げられ、

エドリックやグレースの頭上にそれらが渾身の力で振り下ろされた。


「避けるんじゃーーー!!」

エドリックは叫ぶ

エドリックは後ろへ飛びグレースは横に飛んだ。


ボガン!!!ドガガガガッガガが!!!


二人にいた所に大きな砂煙が立ち上がった。

周辺の岩石は爆砕し小石を一面にまき散らす


「うわぁあああ!!」


エドリックはグラインダーの一撃と爆風をすんでの所を躱したが

グレースの方は飛び散る岩石の爆風の小石を浴びて態勢を崩した。


「ソノ女、死ネ!」

グラインダーは蠍の両腕を再び振り上げ、その瞬間、蠍の体の上部が物凄い勢いで横回転した。すると砂の爆煙の中から猛スピードで蠍の尻尾がグレースに横殴りで振りぬいて来た。


「!!!!」


バキン!ドガアアアアン!


グレースはバスターソードを盾に尻尾を防ぐ。

その瞬間、凄い金属の衝突音をあげ、振りぬかれた尻尾にグレースは吹っ飛ばされてそのまま滑車小屋に激突した。


「!!!」

「グレーース!!!!!」

エドリックは叫んだ。


ガラガラ・・・・・


滑車小屋の壁には大穴が開き、砂埃が立ち込めている。

エドリックは滑車小屋へ全力で駆けた。


「グレース!! グレース!!しっかりしろ」

すぐにグレースを確認、倒れているグレースの手を引き起き上がらせる


「くうう・・・油断した」

グレースは凄まじい衝撃を全身に受けてヨロヨロしながらもゆっくり立ち上がった。


「グレース、一旦体力が戻るまで下がるんじゃ。それまでしばらく儂が持ちこたえる!」


「すまない・・・・・」

グレースはそう言うとエドリックと一旦距離を取るように下がった。


エドリックはグレースを庇うようにそのまま滑車小屋の前に立ちはだかり、グラインダーと対峙した。


グラインダーはハルバードを振りかぶりエドリックに突っ込んできた

エドリックは迎え撃つ。


グラインダーの持つハルバードは横振りでエドリックを襲う。

エドリックはその横振りを斜め後ろへジャンプして躱した。

エドリックは空中で方向転換しようとした刹那

蠍の巨大な腕がエドリックに向けて叩きつけられる。

ギュイィィイイィィィィーーーーーン!!

バキバキバキバキ!!!

背後の滑車小屋は粉々になる。


エドリックはその蠍の腕も空中で躱し、その巨腕を剣で叩きつけた。

「!!」

ガキンといった金属音が空しく鳴るだけでグラインダーには全く効果が無かった。


「くそぉおお・・・・・」

グラインダーの正面にエドリックは着地する。


その瞬間

「ククク・・・・・死ネ!」

グラインダーは嗤うと同時に蠍は両腕を上げた。その瞬間


「なんじゃ!!!?」

「!!!!!」


BOWWWWWWWWW!!!!

突然、蠍の前方にある筒から巨大な火柱がエドリックに向けて噴出した。


「エドリックーーーー!!!!」

グレースはその光景に絶叫した。


エドリックのいた一帯は巨大な炎の海に包まれた。





読んで頂き誠に有難う御座います

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