第37話.鉱山へ
誤字・脱字はご容赦下さい
●37.鉱山へ
翌朝
「準備はいいか。」
グレースさんは言った
「ああ。」
俺達は役場へ行き、爺さんとメイベルの分の馬を借りた。
俺達は夜明けとともにグレースさんと一緒にラサンの街を出発した。
荒野にはまだ朝もやが広がっており、空には雲はなかった。
しばらくたって鉱山の集石場へ向かう足場のあまり良くなさそうな街道に差し掛かり、
一区切りついたところでグレースさんが口を開いた
「マルボル殿、聞きたかった事があるのだがいいか?」
「何ですか?」
「ホーストの力の事だ。この子を狙っている理由は本当に分からないのか?」
「はい。今の所全く。ただ敵の作戦は今回おれ達を直接攻撃せず、一時的に別の人質を取るやり方です。これは街の戦闘や領主や軍との直接的な衝突を避ける狙いで行っているかと俺は思っています。
しかもこのメイベルはあの街道殺しにも何かの理由で狙われていた。
メイベルの存在はそいつらに大きな影響を与える何かがあるんでしょうね。おれ達がこの子を守るのはおれの個人的な理由からなんですが、今回、グレースさん達を巻き込む形となり大変申し訳ないと思っています。」
「それは気にすることはない。この子には全く罪はない。今回、マルボル殿が立てた作戦で行くのも私は問題はないと思っている。それと私が今回動いているのは自分の意志だ。私は人を守るために冒険者になった。街の者が危機に遭っている時に助けに向かうのは当たり前の事だ」
「有難う。それでは向かいましょう。グレースさん」
そうして俺達は鉱山へ向かった。
丘の尾根に上がり、そこから俺達は下方の視界に広がる集石場らしき広場を見下ろした。
集石場にある小さな小屋には何者かに襲撃された跡があり、所々から煙が出ていた。
倒れて動かない人影(死体)もちらほら見える。
岩影に隠れグレースさんはその集石場の先の方の一帯を指さす。
「ここは鉱山の集石場だ。この先に行くと大きく広い縦穴があってそこが採石場となっている。そしてその縦穴の壁から各方向へ坑道の入口があるとの事だ。」
「・・・・・・」
俺はしばらく考えて言った。
「採石場の方には化け物がいるそうですね。此処までの道中に俺達へ罠らしき物も襲撃もなかった。それならば敵はまずメイベルの身柄を確認したいはずです。だから必ずレオナルドはメイベルの前に現れるはず。そして今回の敵は交渉に来たレオナルドと坑道入口を守っている化け物の最低2体。ですから俺達は今回一時的に二手に分かれて、正面と裏手の二方から鉱夫の救出へ向かうというのはどうでしょうか?」
「・・・・うむ。確かにそうじゃな。ならばメイベルとおぬしは正面から向かいレオナルドと交渉を行い、儂とグレースはおぬしが交渉している間に隠れて裏から直接採石場の縦穴に入り化け物を倒すというのはどうじゃ?」
うむ。坑道内部の捜査は当然、坑道内部に詳しいグレースさんが向かうのは当然で、化け物も敵の切り札と想像できる上、早急に坑道の人質を解放するには確かに俺より強い爺さんがそちらへ向かうべきだろう。
「私もそれで異論はありません。・・・・本当ならばメイベルさんの安全を考えて一緒に行動をするべきかとは思いますが、人質の鉱夫達の命も大切です。マルボル殿が正面から注意を引いている間に私は裏手からエドリックさんと鉱夫の救出に向かいましょう」
と言ってグレースさんも了解した。
「最終確認だがこれでOKじゃな。」
「それではみんなこの作戦で。宜しくお願いします。」
俺とメイベルの二人は丘の尾根を降り街道へ出た後そのまま道に従って集石場へ向かう。
そしてエド爺さんとグレースさんは尾根伝いに集石場を回り込み、採石場のある縦穴へ向かった。
俺達は街道に降りて谷間を抜けるように進んだ。
すると程なく上から眺めていた集石場のある広場に出た。
そのまま俺達はその集石場の広がった一面を進んで行くと周りにはブスブスと焼け焦げた小屋や鉱夫の亡骸が所々に散らばっていた。
俺は顔をしかめ、メイベルは死体から目を背けた。
俺とメイベルは銃を持ったままそのまま集石場の広場を進んでいくと
その先には黒いフードを着たレオナルドが俺達を待ち構えていた。
「ケンスケ=マルボルさん、パーティーへようこそ」
黒フードのレオナルドは口を開いた。
すると取り巻きの男たちが俺達の周りから現れて俺達を遠巻きに囲んだ。
「・・・・・・・・・」
周りを見渡す。おそらく15人程のように思える。
武器を構えじりじりと俺達に近づいて来ている
「ホーストの子供も一緒ですね。有難う御座います。ですがあと一人、そうそう、エドリックさんの姿が見えないですがどうしたんですか?」
俺はレオナルドの質問には答えずに聞いた
「お前の言う通りに子供は連れてきた。この子を狙う理由はなんだ」
「くくく・・・・。まぁいいでしょう。約束通りお話しますよ。見たところエドリックさんは抜け駆けして先に坑道に向かったかもしれませんが、まぁ無駄な事ですしね。」
「どういうことだ!」
「ああ、ご心配なさらず。坑道にいる人質はまだ無事ですよ。ただエドリックさんでは採石場にいる私の仲間には勝てないでしょうからね。こういう事など我々も予想出来ましたから。ははは。」
「・・・・・・・・」
俺はレオナルドの挑発をこらえつつレオナルドに聞いた
「・・・・この子を狙う理由を聞こうか」
レオナルドはフードの下からニヤリとして嗤う
「そうですね。約束でしたね。・・・・ではホーストについて知っていますか?」
「名前だと聞いているが」
「そうですね。確かにその認識で間違いありませんよ。
そしてその子供はホーストの末裔です。
はるか昔、古代の神メルシオールに偉大な力と知識を貰った者がいました。
その人物の名がホースト。ホーストは魔法というものの存在を発見し、我々の世界に魔法をもたらした。その神に与えられた知識と力でね。そして、その魔法や知識の力を使って小国の入り乱れたこの大陸の戦乱の時代を終わらせ、現在のアステル王国の建国へ王朝を導いたとされています。」
そう言うとさらにレオナルドは続けた。
「そうしてそのホーストの死後、その子孫は王国の研究所でその受け継がれた膨大な知識でさらなる魔法の研究を進めていたんですよ。それがホースト一族なのです。・・・・・そして我々はホーストの末裔が作り出した研究成果を奪ったんです。偉大な力を得る為にね。くふふふふ・・・・」
「この子には関係がないはずだ!」
「いいえ。それが関係あったのですよ。この子供の父親は殺される直前に、我々が奪った研究成果とは別のものを魔法の箱の中に封じ、隠した。おそらくホーストの最高機密、もしくは最新の研究成果の論文か何かの設計図のようですがね。しかし、その魔法はホーストの力を受け継ぐ者にしか開けられないという事が最近になってから分かったという事なんですよ。」
「この子の両親を殺したのもお前らの差し金だったんだな!」
「くくく・・・そうですよ。それとケリーにお願いしたのも我々です。まぁ役立たずでしたがね。
そう言う事で、その子供を渡してください。採石場に向かったエドリックさんはすでに殺されてしまっているかもしれませんが、その子を渡せば、人質は解放して我々は引きますよ」
「・・・・・そうかい」
周りを見渡せば、敵に俺達は15メートル程の距離にまで囲まれて剣を向けられていた。
(この外道共が・・・)
俺はメイベルに目をあわせた。
同時にメイベルはコクリとうなずいた。
「受け取れ!」
俺は手榴弾のピンを抜きレオナルドに投げつけた。
読んで頂きまして誠に有難う御座います。




