第34話.指南
誤字・脱字はご容赦下さい
●34.指南
カンカン、
ボカッ、ずざざーーーー
「ぐはぁーーはぁ・・・・はぁ・・・・」
俺は何度もぶっ倒されて肩で息をしている。
「あんっ!!ほれケンスケ、しっかりせんか!」
今日も俺はエド爺さんに杖でしこたまボコられている。
いや、修行らしい。
ここ数日、毎日。
「メイベルちゃんは、こういう時はの、剣をこんな風に持つんじゃぞ。
そうそう。おおおお!!!天才かの!?すばらしぃのぉおおおおお~!!!」
「・・・・・・汗」
つかメイベルと俺の差ってあんまりじゃない?
メイベルはあれから数日落ち込んでいたが、だんだん元気になり、昨日からエド爺さんとの修行に参加していた。
爺さんは俺の家の小部屋の一室を借りてしばらく住むことになった。
爺さんの荷物はズタ袋にあったものだけで必要最低限な物持ちだった。
酒好きのようで、家の冷蔵庫にあったエールは勝手に飲んでいた。
ちなみにメイベルには激甘でメイベルも爺さんにすぐに打ち解けた。
それからというもの毎日、朝と夕方の一日二回
俺に爺さんの鬼のような訓練が始まった。
メイベルには爺さんのとっても優しい訓練が始まった。
訓練の後の爺さんはたまに酒場にいったり、本を読んでたり、好きな事をしている。
ちなみにグレッグの奴がさっき工房に遊びに来たが、ソッコーで逃げやがった。
とりあえず思った事。
爺さんは半端なく強かった。
スピードは全く追いつかない。
剣術については、俺も心得があったがまるで大人と子供の差のようだった。
初日、一通り型を俺に教えた後は棒切れを使って実践。
俺も本気でやった。空砲だが銃も使った。
だが爺さんにはかすりもせず平然と間合いを詰めてくる。
とにかく全く相手にならなかった。
その後、爺さんは俺に魔法を使った戦いを俺に教えた。
今日はそれを使って実践形式で訓練している。
爺さんは無属性魔法と氷魔法のニつが使えると言っていた。
この世界でニ種類も魔法が使える人物は稀なようで
騎士団の中でも爺さん以外ほとんどいなかったとか。
爺さんの戦い方はまさに魔法剣士という戦い方だった。
爺さんの装備は腰の短剣に氷魔法の刻印があり、靴には無属性の魔法の紋を入れてあると言っていた。
靴の刻印の理由は自分の体重を減らす為のものだった。
魔法で少なくなった体重を駆使し驚異的な跳躍力と瞬発力を可能にしているとの事だ。
しかも本気で戦うときはジャンプ後に空中で重力の方向を靴の向きで切り替え、少しの間なら空中戦も可能になると言っていた。
ただ、高く飛び過ぎると着地に失敗した時にケガするらしいが・・・・。
もちろん爺さんが俺に魔法など使わなくても全く相手にならなかった。
全く化け物のようなジジイだった。
俺達は装備や靴にも同じような刻印をいれ、爺さんと同じ戦闘スタイルを取り入れて
今日から早速練習していた。
「今日はここまでのようじゃな。」
爺さんの言う事では俺は剣のスジがいいらしい。
だが、魔法の使い方が悪く、戦いにまだ生かしていないと言っていた。
「メイベルちゃん、儂とご飯にしよおかのぉおおおおお!!!」
「・・・・・・・嫌。」
メイベルはぼそりと言った。
・・・・・・・・爺さんはしょんぼり落ち込んでいた。
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その頃
アステル王国、王都アステリア。
大陸中部、王国中央に流れるボルトア川の河口にあるアステル王国の中心都市。
王国の文化の中枢であるその王国王都、その中心には豪華を極めた巨大な王宮がある。
その周りには国内の豪商や貴族の住まう屋敷が並んでいる。
その中心部は等間隔で区画された綺麗な街並みが広がっており、その中には劇場や王立の図書館や魔法等の研究所施設といった施設も存在している。
しかしこの王国は今、政治は貴族や官僚の汚職、王宮の権力争い等で国王の権力は衰退し、すでに一部の有力な貴族や官僚に権力は握られてしまっていた。
王宮の中ではすでに賄賂による汚職が日常的に蔓延っており、派閥による王族や貴族の粛清などが繰り返し、それはやがて国内や王都に悪政となり長く続いていた。
治安が悪くなると同時に、その度、市民による暴動も起きた。
その王都の中心には豪華な貴族街があり、その貴族街を取り巻く雑居とした平民街がある。その片隅にあるスラム街には多くの貧民が溢れている。
その中心にある貴族街はまるで周囲の栄華を吸い尽くすような形で存在しているようにも見えた。
アステリアの街。とある貴族の屋敷にて
・・・・・・・・・・・・・
「ケリーが死んだのは本当か?」
男は跪く部下の男に聞いた。
「申し訳ございません。報告によると、アルフレッドの馬車の襲撃後、ケリーはとある魔法使いの男にラサンの街で倒されたと聞いております」
部下の男は部屋の奥で静かに背を向け立っている己の主人に目を伏せ跪いたまま答えた。
「ふん。もう少し使える奴かと思っていたが・・・・。それで今、ホーストの子供はどこにいるのだ。奴隷の身分なんだろう?ラサンで買い付けることは出来ないのか?」
「残念ながらそれは出来ないとの事です。いまそのホーストの子供はラサンの街の市民権を買い、奴隷の身分ではないそうです。」
「なに?どういう事だ?」
男は予想外な事が起こった事のように部下の男に尋ねた
「はい。ケリーを倒した男がそのままホーストの子供を保護し市民権を買い与えたと聞いています。」
「くっ・・・・・ううむ、厄介な事になったな。ようやくアルフレッドの奴隷になっていたという情報まで突き止めたというのに。しかしホーストの子供は生きているという事ははっきりしているのだな?」
「はい。すでに部下には見張らせております。しかし、王宮の方も我々の動きに気が付いているようです。慎重に行動しないといけないかもしれません」
「確かな情報なのか?」
「はい。すでに元王国騎士団長のエドリックが付いているとのことです。」
「エドリックだと!?」
「・・・・・・・・・」
しばらく男は考えると
「それで、そのケリーを倒した男は何という奴だ。」
「ラサン街にいるケンスケ=マルボルという魔道士で、今はラサンの街で鍛冶屋まがいな商売をしているとの事です。ホーストの子供もエドリックも一緒です。」
「領主のラッセルはこちらに動きに気が付いているのか?」
「まだラッセルは何も知らないようです。ホーストの事も・・・」
「では急ぎ刺客を送れ。ラッセルに気づかれる前にだ。エドリックとその魔導士を殺し、ホーストの子供を捕らえるのだ。」
そして男は振りかえると跪く男に命令した。
「・・・・夜行の五指。好きなのを使え。」
「かしこまりました。」
跪いていた男は立ち上がり、己の主人に静かに礼をしてその部屋から出て行った。
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