里同士の憎しみ
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既に総大将の二人が揃ったと言う事で、朝食を終えて、片付けさせてから二人を通す。
入って来たのは四人。
総大将の二人と、八尾の狐の爺さんの方の蓮華蓬莱柿。
もう一人は見た事が無いが狸だな。
「お初にお目に掛かる。
某は素戔嗚。
この度は若き総大将紫音の護衛として着いて来た。
紫音の傍らにいる事を許して頂きたい」
「構わん。
早速ではあるのだが、本題から話すとするか。
まず、西治帝国に必ず敵が現れる。
その敵は強大で、我等が団結せねば勝てん相手だ。
そこで、戦闘面に置いてその方等の力を頼りにしているのだが、過去の恨みを忘れ、互いに手を取り合う事は出来ぬか?」
「妾の母、玉藻前は、あなた様を裏切り殺そうとした。
それは母の本心であるが故、罪を受けるのは当然の報いじゃ。
じゃが……刑部狸の卑劣な罠に貶められ、そうせねば成らぬよう、仕組まれたのじゃと妾は思うておる。
母は今も地獄の業火に焼かれ、無限の地獄の最中を彷徨い乍、刑部狸の悪辣な嫌がらせに追うておる。
このような細い腕で良ければ手は差し出そう。
じゃがな、我等一族の恨みは決して消えぬ地獄の業火じゃ。
その事は忘れんで欲しい」
妖怪怖えな。
朱瓜の奴、可愛げのある顔してんのに、血の涙を流す程隠神刑部の一族を恨んでんのか。
これはお見合いどころじゃねえな。
まあ、手を取り合ってくれると言うのならそれでいい。
「親父殿、俺からも話がある。
女狐共のやり方は気に入らないんだ。
裏切り者と手を取り合うなんて出来るはずが無い。
今一度考えなおして欲しい」
「紫音!
汝は、何ぞや?」
「素戔嗚……急に何を?」
「いいから答えろ。
汝は、何ぞや?」
「霞の里の、総大将……」
「ならば、汝の言葉は里の相違。
先代隠神刑部の残した霞の里は、今や主君の願いにも応えられぬ愚かな里と化したか?」
「そんな訳……あるもんか。
親父殿、今し方俺は言った言葉を改める。
答えは、仰せのままに、だ」
「二人共良い返事だ。
儂はその方等を信じておったぞ。
最後に互いの手を結び合い、解散とする」
紫音と朱瓜が立ち上がり、手を結ぶと、お互い獣の顔をして、牙をむき出しにし、頭髪がブワっと膨れ上がった!
手を離すと元に戻って、礼をした後、この部屋から出て行った。
一人を除いて……
「蓮華蓬莱柿、儂に何か用があるのか?」
「はい、このままでは互いの足を引っ張り合い、実力も出せぬまま里は滅びの道を行く事は目に見えております。
なれば、どちらか有能である方を生かし、無能は切り捨てた方が良いのではありますまいか?」
「里同士で戦争をし、勝者が互いの里の上に立つと言う事か?」
「いえ、敗者は皆殺しにした方が良いでしょう。
さすれば遺恨など残る事もありますまい」
「確かにそうだ。
だが、互いに別の長所と短所がある。
一概に敗者が無能とは限らないのではないか?」
「心の底から信頼し合えると言うのであればそうでしょう。
ですが、互いに背中を気にして先陣に立てば、どちらも無能となってしまいます。
どちからを滅ぼさねば、互いに遺恨は消えず、無能を晒す結果だけが残るでしょう。
今一度御考え直し下され」
「わかった。
だが、それは今後の働きを見て決める事にする。
下がって良いぞ」
あの爺さんよっぽど霞の里を滅ぼしたいんだろうなぁ……
って事は今後あいつ等に何か頼んでも、あらゆる手を使って失敗に導こうとするんじゃねえのか?
面倒だな。
とりあえず二つの陣営には同じ仕事を割り振らない方が良いか。
一仕事終えた所で、昨晩忍者に頼んでいた装備を倉庫から持って来させ、それを受け取ってからショコラを連れてカルトリアへと帰還する。
いつまでも冒険者ギルドを開けておくわけにはいかねえし、あれもこれもと中々忙しい。
次に狙う領地はロンティオールから北へ行った場所にある大きな湿地帯のヤクレインか、その北にある領地がプレイヤーがいると予想しているアンメルンだ。
ヤクレインもアンメルンのプレイヤーが支配している可能性は高いし、警戒しておかないとな。
方角は違うが、距離的にはリオフレッドと同じくらいだし、最短で往復三日って所だな。
地上は圧倒的に優位に立てているし、後回しでもいい。
ちょっと早い気もするが、先に西治帝国を落として動きやすくする。
いつまでもニースに西治帝国の偵察にいかせるのもおかしいしな。
もうすぐカルトリアに着くので、バタ影に変身してから門をくぐった。
冒険者ギルドに戻ると、サキュバス達と共にひょん太郎が出迎えてくれた。
「私達が出ている間、変化はあった……かな?」
「特になし。
だが、公式のイベントが始まっている事には気付いているか?
メアがやる気満々で手を貸せと言って来ている」
「知らない。
ちょっと見てみる」
公式HPを開いてイベントを確認する。
何々、全部で八つの塔でプレイヤーVSプレイヤーの攻防戦をやるのか。
報酬は塔によって違うが、どれもプレイヤーなら欲しくなるものばかりだし、売っても良い稼ぎになる……のか?
いや、ライバルが多いと赤字になりそうだな。
その他には、イベント後に公式から重大発表か。
とりあえず内容を確認する。
イベント中は塔の中で死んでもデスペナルティーは無い。
報酬はイベント時間が終わった時に占領しているギルドが、その後のイベントで二階防衛したら貰えるシステムになっている。
報酬が貰えるまで結構長いな。
しかも防衛に失敗したら一からになっちまうから相当きつい。
防衛するギルドは一つ。
それに対して攻めて来るギルドは一つじゃねえって考えると、人数の多い大手ギルド以外に報酬は狙えないな。
正直俺達にとって魅力的な報酬は無い。
だが、メアの名前を売るには良いかもしれねえ。
俺達は死んだらゲームオーバーだが、イベント中なら大丈夫だと思うし、手を貸してやるか。
日時は……今日の夕方だと!?
公式もプレイヤーを飽きさせない為に頻繁にイベントを行う様になるだろうし、仕方ねえんだけど忙しいな。
とりあえず全員集めるか。
忍者を呼び出し、ここには居ない雪之丞とニース、そしてバタカフェに招集をかける。
ニースの前に忍者が現れたらまずいが、あいつ等は鷹とか笛とか使って連絡を取れるみたいだから問題ねえ。
全員集まるまで時間があるな……
よし、地下へ行こう。
俺はタナトスと、ひょん太郎とショコラとアニマを連れて地下へ行く。
目的は新しく地下にアニマの部屋を作ったからそこへ行って、ひょん太郎にアニマの事を紹介する。
この二人には俺達とは別で色々と動いて貰うつもりだからな。
作ったばかりのアニマの部屋は広く作ってあるし、中々の出来だな。
「アニマにはこの部屋を与える。
好きに使ってくれていいぞ、タナトスは預けていたアニマの荷物を適当においてやってくれ」
「新しいペットでも飼い始めたのかと思ったが、なんだそれは?」
「リオフレッドの支配者は正確に言うと魔王だったんだ。
その配下のNPCなんだけど、魔王の支配する領地は後で建てるっぽいんだよな。
だから、こいつの拠点もねえしここに住んで貰う」
「初めましてひょん太郎さん。
私は魔王様にお仕えする従順なる僕、アニマ・アルバグランデと申します。
よろしくお願いしますね」
「承知した。
宜しく頼む」
「それで、俺一人じゃ流石に四つの領地を支配するのはきつい。
今後はお前達二人で組んで色々と動いて貰おうと思うんだが、まずはリオフレッドを調べて来て欲しい。
なんか引っかかってるんだよ。
一応他の支配者は、本来の拠点を制圧して、徐々に範囲を解放していくって制限があるんだが、俺の場合西治帝国領を支配済みだからその制限は開放済みになってるんだよ。
だが、リオフレッドの支配者が魔王なのはいいが、その制限が元々ねえんだよ」
「確かにそれはおかしい。
分かった、徹底的に調べ上げる」
俺達の会話にアニマは平然と聞いていたが、大方理解したらしい。
自分が作られた存在と言う事には懐疑的であると長々と語ってくれたが、俺もその辺りは疑問に思っている。
一色重盛なんかは、このゲームの始まる以前の記憶を持っていたが、日葵は持っていなかった。
と言う事は、元々この世界に居たNPCが存在しているって可能性もあるかもしれねえんだよな。
そういう記憶が植え付けられていたって言うのなら、日葵にも過去の記憶があっても良いと思う。
考えても仕方ねえし、考えない様にしているんだがな。
そんな事は時間がある時にゆっくり考えれば良いし、ひょん太郎とアニマには対人イベント終了後から活動してもらう。
戦闘に参加しないアニマを部屋に置いて、俺達はギルドにある執務室で待機する。
ギルド長の席には既にバタカフェが座っており、後は雪之丞達が来るのを待つだけだな。
旅に出ていた三日の情報交換をしつつ、俺達は雑談をして全員が集まるのを待った。




