ロンティオールでお泊り。
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神父の話しによると、この聖堂は聖人ティベリエルが祀られている。
英雄ミナティスと最後まで旅を続け、この地で英雄に抱かれて聖人ティベリエルは看取られていったらしい。
ティベリエルの死因はこの地に眠る大いなる呪い。
魔王シャドゥーラが関係しているみたいだが詳細は不明。
「聖人ティベリエルはその呪いを一身に背負い、自らの封印を持ってこの地にお眠りになられた。
私にはそのティベリエルの血が僅かに流れております。
その血は大いなる呪いを解く鍵となり、大いなる呪いを解き放つでしょう。
私は聖人ティベリエルの開放を望んでいるのです。
聖女様、私を導き、大いなる呪いを滅し我が一族の悲願を成就して下さい」
「魔王シャドゥーラの残した傷跡か。
でもな。
そいつが封印されてるお陰でこの国の人間共は呪いに侵されないんだろ?
それならそいつも本望なんだろうさ。
子孫のお前が勝手に望む悲願なんて、そいつにとっちゃ迷惑なんじゃねえのか?」
「また、聖女様を怒られせてしまいましたか。
確かにその通りなのかもしれません。
ですが、救われる事を望んでいなくとも、救われてはいけないと言う道理は御座いません。
ああ、英霊よ、安らか成れ」
「掌に収まる分くらいは救ってやる。
敬愛なる神の信徒よ、安らか成れ」
聖堂には寝具は無いので、孤児院の院長室に寝具を用意して寝る事にした。
まだ誰もこの孤児院にはいないが、明日には沢山孤児達が湧くんだろうな……
「ご主人様ぁ?」
「どうした?」
「死んでしまった人の魂は救われないのかなぁ?」
「救われるって信じるのは生者の傲慢じゃないか?
そいつ等は生きている内に救って欲しかったに違いねえ」
「過去は戻っては来ない。
傲慢なのかもしれないけど、きっと救われるんだと思う。
ショコラはそう願いながら祈りを捧げたいって思うよ」
「手を差し伸べて、その手を取る事の出来るのは生者だけだ。
だが、そう思ってんなら好きなだけ祈れ。
誰もそれを止める奴なんていねえからな」
ベッドに潜って目を閉じる。
ちょっとセンチは気分だが、起きたらリセットだ。
頭の中を空っぽにして、呼吸の音を聞きながら眠りについた。
◇
「――さまぁ。 おきてー」
なんかガキ共の声が聞こえるなぁ。
体を起こすと、汚ねえ身なりのガキ共がわんさかいた。
NPC達の幸福度が低いほど孤児達は増えるシステムになってるんだが、あれだけやってもこんなに湧いて来ちまうのか……
まあ、こいつらを育てたら一気に改善する様な気がする。
ショコラはどこ行った?
纏わり着いて来るガキ共に感謝されながら孤児院を歩き回ってると厨房でショコラが朝食を作っている。
NPCに任せりゃ一瞬で作ってくれるから、俺を起こしてくれればいいのに。
一応料理人を配置してショコラの手伝いをさせた。
人数が多いので大きなテーブルを用意すると、ショコラと料理人が食事を並べていってくれる。
沢山のパンと野菜が沢山入ったクリームシチューだな。
食材はショコラが買って来たのか。
皆席に着くと行儀よく膝の上に手を置いて俺の方をじっと見つめている。
ああ、食事の前に祈りとか捧げた方がそれっぽいな。
「手を合わせて、感謝の言葉を思い浮かべなさい。
そして、大地の恵みをその身に刻みこめ!
噛みしめて溢れた出た唾液がお前達の奪った生命なのだと知れ!
大地は見返りを求めている!
その手を土、あるいは獲物の血で汚し、額には汗を流せ!
お前達の労力は国の力となり、大地を潤す力となる!
この乾いた砂漠に繁栄の息吹を齎すのだ!
ディスケ・ガウデーレ」
ん?
ガキ共は俺の行った言葉に着いてこれない様だな。
それじゃあ最後の言葉だけもう一度ゆっくり言ってやるか。
「ディスケ・ガウデーレ」
ゆっくり言ってやると皆一緒に声を揃えて「ディスケ・ガウデーレ」と復唱してくれた。
ラテン語の“楽しむことを学べ”って意味の言葉だ。
ただ俺の頭にあった言葉なので、ここで使う意味はねえ。
それっぽいと思って言っただけだ。
俺が食事に手を付けると、ガキ共も喜んで食事を始める。
ん!?
ショコラって料理出来るんだな!
絶対に料理出来ないと確信していたから、美味しくてビックリだ!
パンはまだ温かくて真ん中から二つに割ると、真っ白な毛糸が解ける様に柔らかい粘りを残して解けていく。
裂けた二つのパンの間からは、ふんわりと優しいバターの香ばしい香りが漂ってきて腹の虫が鳴き声を上げる。
食感はモチモチしててリアルで食べるパンと比べてもまるで遜色がないほどに柔らかく、そのまま食べても甘くて美味しい。
この国でこれだけのパンをどうやって作ったんだ?
それにパン作ったって事は結構早起きしたんだな……
シチューはしっかりとミルクの味が舌に残り、非常に味わい深い……
野菜と肉も柔らかくてミルク感に負けないくらいしっかりした下味が付けられている。
贅沢な味だな、こんなの食べたら普通のクリームシチューが食べられなくなるぞ。
しかし……試さずにはいられない!
既にガキ共はそれを試しているが、俺も禁断の領域へと進出する!
クリームシチューをつけたパンを頬張る!
あはぁー……旨いに決まってんだろ。
クリームシチューの染みて無い軽い口当たりのパンを土台にしてフワッフワにトロけた染みパンを乗せて食べると、香ばしくて柔らかく、濃厚なミルク感との素晴らしい三重奏。
シンプルな旨さにバランスは必要無く、それだけで何重にも味を重ねたオルケストラにも匹敵する最高のハーモニーを味わせてくれる。
食事が終わり俺は手を合わせて一言、感謝の気持ちを込めてこう言った。
「メルシー・ボークー」
俺の真似をして「メルシー・ボークー」とガキ共も手を合わせて唱え始めた。
フランス語でありがとうを丁寧に言った言葉だが、メルシーは神様の慈悲的な意味合いもあるしこれで良いだろう。
「ショコラ、ベラボーに旨かったぜ。
店を開けば婚姻届けでポストが破裂する程旨かった。
ごちそうさん」
食器の片づけを手伝ってからリオフレッドに向けて出発する。
孤児院の奴等は神父が面倒みるだろうし、食料不足も解消しているだろうから問題ねえだろ。
ショコラのペットのメロンに跨り、リオフレッドへ向けて砂漠の中を走りだした。




