始めての赤ちゃん。
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朝になり目覚めると、じっとこっちを見ているバタカフェと目が合ってビックリした。
小さく「おはよ」と言って来たので、俺も同じ様に挨拶を返す。
ちょっと不満げな表情を見せたので「お姉ちゃん」と呼ぶとニコリと笑みを零した。
体を持ち上げるとニースが床で寝ているのが見えた。
こいつもしかして、ずっと俺達と一緒にいるつもりか?
階段を誰かが上がって来る音がして、ドアをノックされたので「どうぞ」と言うとひょん太郎がサキュバス達を連れてやって来た。
なんか全員メイド服を着てて可愛らしくなっている。
ひょん太郎の趣味……か?
「バタカフェ、我に預けたこの子達をここで働かせている。
受付に頼んで仕事も覚えさせた。
プレイヤー達からは好評。
問題ないか?」
そうか、ニースがいるしバタカフェを主って事にしているんだな。
でも、肝心のバタカフェがサキュバス達の事を知らないんじゃねえのか?
まあ、とりあえず話は合わせてくれるだろう。
「GJ、問題ない。
“私の妹”と朝食を食べに出掛けるけど一緒に行く?」
「む?
いや、我はここでニースが起きるのを待っているとしよう。
妹と二人でゆっくり食べて来い」
なんかバタカフェは妹役の俺にゾッコンだな。
バタカフェは俺の腕を引っ張って街にでる。
近くをウロウロしながら、近場のレストランへと入った。
適当に注文を頼んだ後、何をどう組み上げていくのかで思考を埋め尽くす。
手っ取り早くギルド長のレベルも上げたいし、IDを更に複数作って兵士達に攻略させる。
金は沢山あるし、名誉ポイントと交換して大量に兵を向かわせた。
ロンティオールの聖女の方も手っ取り早くレベルを上げたい。
医療施設とあらゆる病気に対応出来る様にドクターと研究施設を設置。
住民の幸福度を上げる為にクラスアップさせた建築家と畜産をする為の小屋と広い囲いを作り、ファーマーなどのNPCも配置した。
他には……ん?
バタカフェがコンコンと机を指で叩いてんな。
ちょっとムッとしている感じだが……
「どうしたのお姉ちゃん?」
「食事中に考え事するのは行儀が悪い。
しっかり食べた後にしなさい」
俺は「ハーイ」と返事して料理に手を付ける。
ちゃちゃっと食っちまおうとしたら、“はしたないからゆっくり食べる”だの、“スープは音を立てるな”だのとここぞとばかりにお姉ちゃんぶって来やがったな!
面倒だが顔の緩んだバタカフェを見てるのも面白いので付き合ってやる。
「ごめんなさいお姉ちゃん」と言って行儀よく食べ始めると、ニッコニコだな。
普段あまり表情を変えないから新鮮な感じがする。
俺としてはロンティオールの南にある山に囲まれた国リオフレッドの攻略に行きたい所だが、距離も遠いしニースがいるとやはり邪魔になるからな。
……ん?
うおっ!?
なんか懐でモゾモゾしてるぞ!?
そう言えばずっと懐にペットの卵をいれてたか。
闇皇帝の時に懐にしまったんだが……お腹の辺りにいるな。
服を上からめくって中を除いて見ると!?
二つの谷間があった!
そう言えば俺女だったわ。
服の下から生まれたペットを取り出すと、灰色の毛むくじゃらの小っちゃいのが出て来た。
尻尾の少し上の辺りから羽も生えているし、なんだこれは?
バタカフェに聞いても何の生物か分からないが、小さくて可愛いと言う感想を聞けた。
とりあえずステータスを確認すると、これが猫である事が分った。
種族名はフライングキャットデーモン。
名前はマウント一号とかでいいか。
俺が「よろしくな、マウント一号」と呟くと、即座にバタカフェによって却下されたので、バタカフェに名前を決めさせると、タナトスになっちまった。
自分はコーヒー飲料の名前ばっか付けるのに、なんで俺のペットはタナトスなんだ?
まあ、名前何てなんでもいいけどな。
「宜しくね、タナトス」
「にゃーん」
む!
顔を見ているとこいつ「よろしく」と返事したのがなんとなくだが分るぞ?
いや、それだけじゃねえ。
お腹が空いているみたいだ。
俺はすぐに金でペットの餌を生産して食べさせようとするが、上手く食べれねえみてえだな。
バタカフェのアドバイスで赤ちゃん用のミルクを飲ませろと言われたので、金で生産して哺乳瓶を口元に持っていくとパクっと加えてゴクゴクと飲み始めやがった……
俺の腕の中で、こんな無防備な姿で哺乳瓶を必死に掴んでゴクゴクと飲んでやがる!
この飲みっぷりはすげえぞ。
こんな小さいのに、こんなにも力強く生きようとしているなんて、タナトスは天才か?
こんな上手に最初からミルク飲めるのは天才以外の何ものでもないだろう。
む!
今度は甘えたいか。
俺はヨシヨシと体を振ってユラユラしていると、タナトスはゴロゴロと喉の奥を鳴らして喜んでくれている。
俺の顔を見てママ大好きと伝えて来てくれている……
タナトスってこの世界で一番可愛いんじゃね?
いや、こんな愛くるしいのだからそうに違いない!
リオフレッドまでは遠いし、タナトスが育ってからの方が動きやすい。
今日はタナトスの面倒を一日中見よう。
目を離すときっと誰かが連れ去ってしまうに違いねえしな!
そうと決まれば色々と充実している西治大帝国へと戻りたい所だが、ニースをどうする?
帰れと言って素直に帰るとは思えねえ。
「お姉ちゃん、ニースを連れて何処か遠くへ行って貰えるかな?
タナトスの面倒を見る為に、城へ戻りたい」
「ん?
それなら、ニースの国へ行けばいい。
特殊進化出来るアイテムが何種類かある」
「それって、アイドルイベントの時と同じ物?」
「見た目が違ってたから、同じ物では無いと思う。
多分効果も少し劣る」
少し劣るのか……
俺もアイドルイベントに参加しときゃよかったかもしれねえな。
だが、何も無い状態よりは効果があるんだろうし、頼んでみるか。
タナトスの成長の為ならなんでもしてやりたい!
冒険者ギルドの執務室に戻るとニースがサキュバス達に集られていた。
しかも硬くて不味いらしい。
だが、「背に腹は代えられない」と言って精気を吸おうとしている。
まあ……ここ非戦闘区域だからな。
地下じゃねえとサキュバス達に上手く吸えないだろうと言う事を教え、とりあえずサキュバス達をどかして、ニースを起こす。
ペットを特殊進化させるアイテムを譲って欲しいと伝えると、快く了承してくれたので外に出てホルスにまたニースを挟んで三人で跨る。
スカイサン・ドナートの偵察もこの目で出来るし一石二鳥だな。
ホルスが空高く舞い上がり、俺達は天空の国スカイサン・ドナートへと向かった。




