聖女誕生
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聖堂の前まで行くと、神父が話しかけて来る。
「おお、やはりこれは神の思し召しか?
先程一緒に居た方は選ばれなかったと言う事でしょうか?
あなたは神がここへお導きになったのですね?」
きっしょ!
なんで神に道を選ばれなきゃいけねえんだよ!
まあNPC相手にそんな事思っても仕方ねえか。
「そうだ。
お前は従順なる神の信徒か?」
「やはり!
一目見た時から私はあなた様こそが神の御使いで在られると信じておりました。
早速司教の座に付き、私達を御導き下さい」
おっ!
司教になれたぞ。
それじゃあ一つ奇跡でも起こしてやるか!
人目に着くと面倒だし、一旦聖堂の中へと入る。
そして、あんまり様変わりすんのも後々面倒か。
ふむふむ。
種族は聖人と聖女か。
男になると悪い事ばっか考えそうだからな。
女性アバターで聖女になっておくか。
名前も見た目もバ夕カフェのまま俺は聖女になった。
よし、これでいいな。
見た目は変わらないが、聖人のオーラの力で周囲の者に好感を得られる能力があるようだ。
「素晴らしい……
これで、この恵まれぬ土地にも、幸福が訪れるのですね」
「哀れな子羊よ。
神に祈りを捧げ、感謝しろ」
神父にそう告げて俺は高笑いしながら聖堂を後にした。
「全然聖女じゃない」
「ん?
俺の中で教会ってのは裏で|武器とか捌いてるイメージなんだよ」
「そう。
でも、この国の聖女ってそれでいいの?」
ちょっと仕事を見ておくか。
診療所を設置して病気の人とか、怪我人の治療をしていくと経験値が溜まるのか。
悪代官で言う討伐クエストみたいなのの代わりに、飢饉やら災厄が訪れるみてえだな。
他にも農作物の育つ畑の整理やら、国の施設なんかを充実させてNPCの幸福度が上がれば経験値もどんどん稼げるって感じか。
なかなか面白そうだ。
街も拡張し放題だが、本来はその為の金を集めるのが大変そうだな。
まあ、悪代官スタートの俺には無縁の苦労だ。
住民であるNPCの幸福度上げるのは結構簡単そうだな。
いきなり発展しても問題無いだろうし、とりあえず診療所を設置して医療用のNPCも雇っておく。
まあ、医療用つっても精霊術士なんだけどな。
病気とかもあるから、優秀な治療系NPCも後々必要になってきそうだし。
専門の奴も考えて置こう。
後は農作物を育てる畑とNPCとかか。
砂漠って耕してどうにかなるもんなのか?
もう夜だし、本格的に考えるのは明日にするか。
「理想を言えば聖女らしい聖女がいいんだろうけど、そんな色々な役をやってたら頭がおかしくなっちまうからな。
俺のやりたい聖女でやらせてもらう」
「ラジャダ!
頑張ってね」
俺達はニースを待たせている宿へと行き。
店主に話して部屋の中へと入ると……土下座してやがる。
こいつずっと土下座して待ってたのかよ……
よっぽど関係が壊れるのが嫌なんだろうけど、こんな風にされると普通は距離を置きたくなる。
予想通り、こいつは崩れた関係の修復が苦手みてえだな。
弱みを握って優位に立つのも良いが、ここは別の作戦でいかせて貰おう。
ニースの傍にいって俺は優しく頭を撫でた後、軽くニースを腕に抱く。
「怖がらせて……ごめん。
でも、ニースは優しい心の持ち主なんだって知ってる……と思う。
だから、こうしてると、多分大丈夫になる」
「い……妹ちゃん……
私が悪いのに、許してくれるの?
お金、いっぱい余ってるから今度持ってくるね!」
「そう言う事を言ってはダメ……だと思う。
人の心はお金では買えないし、物で得た好感は失えば元に戻るんだと思うよ。
だから、私の事を好きになって。
その分私もニースにお返し出来る様になるから」
「妹ちゃん……」
「心の溝を埋める為に人は誰かと結ばれる。
手で触れた場所の溝は埋まり、それは他の誰かの心を埋める力になって溢れ出てくる。
私はニースを赦し、支え合う友となる。
だから……笑いなさい」
なんか聖女になっちまったからテンション上がっちまったな!
ちょっと聖女っぽい事いっちまったぜ!
なんかニースの奴……赤く腫れた目を見開いて俺の顔を覗き込んできたぞ……
本当に怖いから止めて欲しい。
ん?
いきなり剣を抜いたんだが?
大丈夫かこれ?
それを見たバタカフェも武器を手に取る。
やべえな。
もしかしたらゲームオーバーか?
「カフェタソ……ごめんなさい。
結婚の事だけど、皆にも伝えておいて欲しい事が出来た!
私!
妹ちゃん一筋になる!」
「私から妹を取ろうとしないで」
「ごめん!
もう無理!
止められないのよ……
きっと私は妹ちゃんに仕える為に生まれて来たの!
私の命も力も富も財産も何もかも妹ちゃんの為に捧げる!」
「その気持ちが本当なら構わない。
でも、そんなに簡単には妹は奪わせない」
何の戦いが始まってんだ?
そんな事よりもだ。
ニースが同盟関係以上にこっち側に来るのはちょっと困るな。
俺ずっと演技しなくちゃならねえじゃねえか!
でも仕方ねえか。
こいつ、感情で動くタイプっぽいから、上手い事言いくるめてもすぐに舞い戻ってくる感じだろ。
それなら、倒しきれる算段が付いたら早いうちに切り捨てられる様に手筈を整えるだけだ。
それまでは上手く利用して、邪魔くさい演技にも付き合ってやる。
それにこいつ自体は強力な手駒の一つだ。
上手く手綱を握っていれば、役に立つ。
ニースは俺の前で片膝を付き、抜いた剣の刀身を持って俺に持ちての部分を差しだす。
これ、騎士がお姫様とか王様にする忠誠の義みたいな奴か。
この剣を取って肩の辺りに刀身を置けばいいのか?
首にあてるんだっけか?
とりあえずなる様になるだろ。
俺がニースの剣をしっかり握ると全身に何かが走っていった!
今の妙な感じはなんだ?
一瞬俺の動きが止まったのを見て、ニースは「あっ!」っと大きな声を上げた!?
俺は即座に剣を手放し、受け身を取らずに後ろへ倒れる。
さっきニースの上げた「あっ!」って声は、ガチでなんかやらかした時に出す感じだ。
一瞬で思考を廻らせて俺はこの行動に出た。
まあ、この行動が間違っていた所で色々と言い訳は出来る自信がある。
俺の予想だと、こいつの剣は装備制限か何か掛けられていた。
元々光ってたし、特殊な武器なんだろうなとは思っていたが、剣を握って妙な感覚の後、俺の体には何も効果が無かった所と、ニースが何をやらかしたのかを考えると、多分掛かっている制限はレベルか支配者の資格があるのかどうかって所か。
本人以外に装備出来ないとかなら、流石に渡さないだろうと思うし、別にそれならそれで構わない。
とにかくこいつの反応から、もし制限が掛かってるのだとしたら、俺がその制限に引っかかると思って声を出したんだから、俺の行動は正しいと言えるだろう。
全然違う可能性もあるんだけどな……
バタカフェも状況は掴めていないだろうし、【号令】を使って指示をだす。
『別に俺は何とも無いから安心しろ。
俺の予想だと、この剣にはなんらかの制限が掛けられてると思う。
とりあえず、ニースから情報を探ってくれ』
「わ……私の妹に……何をしたァ!
ニース!」
バタカフェは怒りを露にして、手に持った槍で横なぎの一閃!
宿の屋根が吹っ飛んで行ってしまった!?
バタカフェってこんなキャラじゃねえだろ。
演技に集中して自分を見失ってるのか?
いや、こいつリアルでプロだからそれは無いか……
とりあえず任せておいて大丈夫……だよな?
「ごめんなさい!
その剣が支配者達にしか装備出来ないワールドルーラー級の武器だって忘れてて渡しちゃったの!
しばらくすれば動ける様になると思う!
本当に悪気は無かったの!
ごめんなさい!
二人の事……本当に大好きだから、嫌いにならないで……」
『ワールドルーラーの情報を聞き出せ。
あと、そんな怒るのは良くないかもしれねえな。
お前らしくない』
「妹は無事……
その武器の事を教えて」
「グレード5のIDのレア素材で作った武器を支配者の誰かが特級鍛冶師に作らせると出来るの。
多分普通のプレイヤーなら神話級の武器が出来るはずよ!
私の事……嫌いにならないで!」
なんだこいつ!
いちいち一言がイラっとくるな!
そう言う所で溝が深まるんだぞ!
有益な情報も得られた事だし、これ以上こいつが溝を深める前に逃げるか。
『俺を抱いてフェニックスで帰るぞ。
ニースはおいて行っていい。
後ちょっとだけフォローいれておけ』
「妹は優しいからきっと許してくれる。
けど、私はしばらく許せそうに無い。
しばらく顔を見たくないから、今度ちゃんと妹に謝りに来て」
バタカフェは俺をフェニックスの前に乗せて抱きかかえる様にして飛び去った。




