砂漠の国ロンティオール。
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砂漠の国ロンティオール。
予め忍者達に探らせた情報によれば俺が最初に居た西治の町程度の規模しか無い。
多分徐々に国を拡張していくんだろうとは思う。
最初からある程度整っている国も良いが、こういう開拓していくのも楽しそうだ。
行きかう人はベールやスカーフで顔を覆っている人が多い。
マントで身体を包んでいる人もいれば、ターバンに半袖スタイルの人も居る。
「ここって本当に支配者の住む国?
かなり小規模よね?」
「砂漠は広いし多分拡張するんじゃない……かな?」
ちなみに俺はバタカフェと区別をつける為に少し口調を変えて、自信無さそうな雰囲気を出しているつもりだ。
いざと成ったらバタカフェを盾にして隠れる感じで行こうと思っている。
「サンドボックス系のゲームみたいな?」
「NPCに建築させたりするのかもしれないし、カルトリアでも一部……なんでもない」
バタカフェの影に隠れると頭をヨシヨシしてくれる。
こいつ妹が欲しかったのかな?
ニースに紹介する時に打ち合わせには無かったが、勝手に妹って事にしてくれたからな。
おかげで俺があまりしゃべらなくて良くなったからいい判断だった。
「それにしても歩いている人はともかく、砂のいろ一色ね。
一つだけ白い建物が見えるけど、あれは王様の宮殿かしら?」
「多分そう。
王様に会って確認する」
白い建物まで辿り着き中へ入っていくと、中央の廊下から大きな部屋に繋がっていて、中が謁見の間になっていた。
カルトリアとは規模も雰囲気も全然違い、聖堂って感じのイメージだな。
王様に向かって、ニースが話しかける。
「あなたこの国の王様よね?」
「余はアーメン・クライスト。
下賤な異国の民よ、せいぜいこの国を堪能していくが良い」
「こんな小さな国の王の分際で、随分上からものを言うのね。
滅ぼしてあげようかしら?」
「滅びる?
はっはっは。
この国は滅びん。
余が生きている限りこの国は不滅だ」
「それじゃあ、分らせてあげる?」
ニースが振り返ってバタカフェの顔を見ると、バタカフェは当然だが首を横に振る。
会話が固定しているNPCは同じワードに対して同じ話をしてくるはずだし、試してみるか。
「滅びる」
「滅びる?
はっはっは。
この国は滅びん。
余が生きている限りこの国は不滅だ」
「何この人。
さっきと全く同じセリフ言ってて気持ちわる」
「特定のワードに対して固定されたメッセージを話してるだけ……かな?
カルトリアの王様もそうだった……と、思うし」
「へぇ、私の国のNPCはみんな流暢に会話するからビックリしちゃった。
一部のNPCはこんな感じなのね。
ぶっ倒して乗っ取る?
私はこんな小さな国には興味ないし、奪ったりはしないわ」
そんな事されては困る。
それで乗っ取れるならいいが、多分重要なNPCが殺されると支配者の枠が消滅する危険がある。
俺はバタカフェの影に隠れて、ニースの行動を止めるように耳打ちをした。
「妹が怖がってる。
乱暴な事はしちゃ駄目。
もう少しこの国を歩いて調べよう」
「ああ……うん。
怖がらないでいいからね!
お姉さんカフェタソの為に手伝いたかっただけだから!」
はぁ……ニースがいなけりゃ速攻でゲット出来そうなもんなんだけどな。
今ここの支配者に繋がるNPCを見つけたら、ちょっと面倒だな。
俺だけ離れる事が出来たらいいんだがな。
とりあえず宮殿から出て、国中歩き回る。
地味に店に置いてある品はカルトリアよりも高価な物が多い。
多分この付近を狩場とするプレイヤーのレベル帯に合わせたアイテムを売ってるんだろうけど、カルトリアの方が明らかに発展しているし、こう言う所はゲーム特有の違和感があるな。
ん?
国を隅々歩いていると、もう一つ白い建物があるな。
王様の居た宮殿に比べると小さいが、とりあえず他の二人の目にも止まっちまったし中へ入って見る。
こっちも聖堂って感じだな。
というかこっちはガチの聖堂か。
宗教っぽい感じが石の祭壇があって、燭台もあるな。
規則正しく並べられたベンチもある。
ここが臭せえな。
それに神父がこっちをガン見しているな。
あの反応……話しかけられたら支配者にならないかと誘われそうだしすぐにここを出ねえと……
俺はバタカフェの腕を引っ張ってここを出ようと伝える。
「ここを離れよう。
妹はこう言う場所が苦手。
怖がっているから外に行って休みたい」
「あらら。
怖がりな妹ちゃん可愛い!
私が守ってあげるから安心して! ね!」
俺は小走りでバタカフェの腕を引っ張って外に出る。
怖がってたって事にしてるから、それっぽく見せる為に外で軽く深呼吸する。
ニースが俺の頭をヨシヨシしながら俺を抱きしめ、顔を胸に埋めさせた……
何しやがるんだこいつ!
最高だなぁ!
慌てて離れて、バタカフェの影に隠れる。
よし、閃いたぞ!
俺はまた耳打ちして新しい作戦の指示を出した後、蹲って固まる。
後は、バタカフェが上手くやってくれるはずだ。
「ニース!
いい加減にして!」
ん!?
作戦と違うぞ!?
「ご……ごめんね!
妹ちゃん、どうしちゃったのかな?」
「妹は驚いたり怖がったりしすぎると、固まって動けなくなる。
知らなかったから仕方ないけど、今日の所は帰って貰える?」
ちょっと冷たい言い方だが、まあ大丈夫だろう。
ちょっと可哀想な気がするけど、これで別行動が出来る。
「ごめんなさい!
知らなかったとか、そんなんじゃ駄目だよね……
帰った方が……いいんだよね?
今度沢山プレゼント持ってくるから……
嫌いにならないで……」
あれ?
こいつ声震えて泣き出しちまったな。
バタカフェが怒るからいけないんだぞ?
そんな事より、このタイプはひょっとすると……
いや、多分そうだ。
こいつテンション上がると調子に乗って失敗するタイプだな。
それに、ニースは悪気があって言ってる事じゃねえとは思うが、許して貰う為にプレゼント持ってくるとかって言っちゃうあたり、多分同じパターンで友達失ったりしてるタイプだろ。
関係を修復する為に妙な気遣いで勘違いさせて、どんどん関係が友達から離れていっちまう感じの奴だ。
結構大声で泣いてるし、大切な友達の一人や二人失ってる経験があるのかもな。
それなら作戦変更だ。
俺は動けない事になっているから、スキルの号令でバタカフェに作戦を伝える。
このスキルは範囲内の指定した味方全員に俺の声が届くスキルだ。
しかし、指定した以外の人物にはどんなに大きな声で出しても聞こえないって特性がある。
『作戦変更だ。
さっき通った道に宿があっただろ?
しばらくここで休むから、そこで待ってる様に伝えてくれ』
「ニース、ちょっと言い過ぎた。
少し休んでから宿で休むつもり。
さっき通った道に宿があったからそこで部屋を取って待っていてくれる?」
「う……うん。
ごめんね。
本当に、ごめんね」
ニースの人物像が少し解って来たな。
最初は紳士的でそれなりに賢い奴だと思ってたが、結構内面はガキみたいだ。
良い感じに操れる算段でも付けて置くか。
その前にここの支配者の権限を貰いに行くとしよう。
ニースが宿の方へ行ったのを確認して、聖堂へと引き返す。
すると、教会の前の俺達をガン見していた神父が立っていた。
キョロキョロして俺達の姿を見つけると、またこっちをガン見していた。




