里参り
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まずは玉藻前の町だった霧雨の里からだ。
そんなに長い期間ここを納めていた訳じゃねえけど、一応あいつの故郷って所かな。
気が向いたら墓でも立ててやるか。
「物の怪共の巣窟と意気込んで参ったものの、随分静かで平和な様に見えますな。
景色も喉かで美しい」
「総大将の二人は危険な思考の者だった。
故に日葵や陽太郎を連れて来なかったが、心配する必要も無かったようだのう」
更地にした町を適当にそれっぽい施設を建てただけだったんだが、とても自然豊たかな美しい田舎町になっているな。
玉藻前が不在となってからも誰かが管理していたのか?
玉藻前の居た屋敷は改築され、大きくなっている。
やはりここの管理者が他にいるのか……
俺の作った屋敷から見た目も変わっているし、ちょっと入りにくいが所有者は俺だし入ってみるか。
「止まりなさい!」
屋敷に入るなりいきなり武器を突きつけられた。
尻尾の生えた精霊術士が二人。
耳と尻尾から狐系の獣人だとは思うが……
違うな。
確か狐系の獣人は玉藻前と被るからと言う理由で精霊術士達には猫と鼬の獣人を使った。
と言う事はこいつら妖狐系の妖怪とのハーフとかか?
何はともあれ、主である俺に向かってこの態度は良くない。
躾が必要な様だな。
「無礼者め、儂が誰かと知ってその狼藉か?」
「黙れ人間!
動くと攻撃する!
そこに直れ!」
一色重盛が刀を抜くと、二人の精霊術士は一体ずつ精霊を召喚した。
一体しか精霊を召喚しないのは俺達の力量を甘く見ている様だな。
町は平和そのものの様だし、戦闘経験の浅い奴等なんだろう。
俺は「軽くもんでやれ」と指示すると、一色重盛は飛び掛かり、一瞬で精霊二体を切り伏せた。
そしてそのまま一人の精霊術士の首元に刀の切っ先を向ける。
「騒がしいな。
何事だ?」
「翔馬様……
お許しを、不覚を取りました」
新たに五つに割けた尻尾の獣人?
いや、様を付けているし玉藻前の親族とかか?
それなら獣人では無く五尾の妖狐か。
それに、ちゃんと名前も着いている。
蓮華升麻か、一応俺の配下の様だが、こいつ自信は自覚はあるのだろうか?
「この感覚……
こちらの配下の者が失礼致した。
この様な何も無い場所までご足労頂き感謝申し上げる」
「儂が好きで勝手にやってきただけだ、感謝などせずとも良い。
それより、この里の主はお前か?」
「いや、俺はこの里の主では無い。
主の元へ案内しよう」
蓮華升麻の後について行き、奥にある広い部屋へと通される。
ここに居る者全てが玉藻前と同じ妖狐か。
中央には人間姿をした九尾の狐。
ネームプレートには朱瓜と書かれているな。
この中では一番若く、可愛らしい年頃の娘と言った感じだが、白く金色の髪色が美しい。
座っている場所とこいつだけ苗字が無いからここの主はこいつか。
他には四人の妖狐が並んで立っている。
八尾の妖狐が男女で二人。
一人は老人でもう一人は老婆の姿をしている。
名前は爺さんの方が蓮華蓬莱柿で婆さんの方が蓮華無花果。
後の二人は七尾の見た目がそっくりな双子で蓮華芍薬と蓮華牡丹。
多分どっちも女だろう。
「西治真中草子様とお見受け致しまする。
妾はこの霧雨の里を先代玉藻前より託された、現当主の朱瓜じゃ。
この度は何故参られたのじゃ?」
随分と可愛らしい声だな。
玉藻前の時に感じた毒々しい雰囲気も無いし、まだ幼い感じが残っている。
こいつも悪女って感じに育ったりすんのかな?
一応裏切らない様に釘を打っておくか。
「玉藻前はここぞとばかりに儂を裏切り、殺そうとして来た。
その一族の顔を拝みに参っただけの事。
心配せずとも一族全員で償えなどとは言わん。
生涯儂に尽くすと言うのであれば、生かしておいてやろう」
「我等一族は生涯貴方様に尽くすと誓おう」
俺は「励めよ」と声を掛けその場から立ち去る。
去り際に朱瓜が「升麻」と声を掛け、俺達の後を蓮華升麻が見送りの為着いて来る。
空無河童の小屋に着いたので「達者でな」と蓮華升麻に声を掛けると、「一つだけ話を聞いて欲しい」と言って来たので「申してみろ」と返し話に耳を貸す。
蓮華升麻の話しでは、現在霧雨の里と霞の里の者達との間には、非常に根深い恨みが募っているらしく、不戦の約定を解けば里同士の血塗られた争いが一気に加速してしまうと言う話しを聞かされた。
争わない様に伝える為に忍者を遣わせ、フレンドリーファイアも無効にしているからそれぞれの里は平和な状態でいるが、それを解けば戦っちまうのか……
一応、それを解く気は今の所無いし、蓮華升麻には「安心しろ」と伝え、今度は霞の里へとやって来た。
こっちの里も中々良い具合に発展している。
て事は、こっちも隠神刑部の一族が繁栄していたりすんのかな?
さっそく名前の付いている奴を屋敷の前で発見した。
ん?
生生世世?
確か何人いるか分らねえけど、隠神刑部が娶ったって言ってた黒魔族の精霊術士だった気がするんだが……
狸の耳を生やしているし、少し小さくなってると言うか幼くなっている感じだな。
俺に気が付いてヒョコヒョコと小走りでこっちに向かって来た。
「エライ人、オヒサシブリね!
アナタも隠神様のお墓マイル?」
んー……
妖怪の戦力を集めに来たってのが本来の目的だが、ここは話を合わせておくか。
「そうだ。
案内してもらえるか?」
「ワカタ。
きっと隠神様ヨロコブよ!
エライ人の事とても好きダタから!」
なんか心が痛てえ!
しかし、なんでこいつの姿が変わってんだ?
後で聞いてみるか……




