人ならざる者の対決
血しぶき表現などが沢山あるのでご注意下さい。
二人が歩み寄り、互いの間合いに入っただけで観客から悲鳴が漏れた。
それ程二人は異質で、恐ろしい何かを感じさせる雰囲気を持っている。
先に攻撃を仕掛けたのは、武器のリーチの長いエクスキューショナー。
ゆっくりと無骨な剣を振り上げ、愚直にただ振り下ろす。
ただそれだけの動作だが剣速は早く、闘技場の床を割ってその下の地面を露出させる程の威力!
観客席にいてもこれだけ迫力があるんだ、目の前にいる奴が真面な奴なら堪ったもんじゃねえだろうな。
当然だが、羅刹殺しは真面じゃねえ。
あの一撃を見切り、紙一重で躱している。
そして、般若の面で表情は見えないが、しっかりとエクスキューショナーをその目で捉えている。
羅刹殺しはそのまま鬼の骨で作ったみたいな大太刀を横なぎにしてエクスキューショナーの横っ腹を抉った!
血しぶきが上がり観客から大きな悲鳴が聞こえる。
しかし、エクスキューショナーは何事も無くまたゆっくりと剣を振り上げあの恐ろしい一撃を見せてくれる。
間合いが近いせいか、今度は躱す事が出来ずに羅刹殺しはその剣を大太刀で受け止めるが、あまりに威力が強くそのまま押し付けられ大太刀の峰の部分が胸に食い込み、エクスキューショナーの剣が肩に食い込んで、その両方から血が滴り落ちる。
内臓をやられたのか、般若の面からも血しぶきを噴き出した。
また観客席から悲鳴が上がるが、怖いもの見たさのせいかその声はすぐに静まり、シーンと場内は不気味な静けさを呼び込んでいた。
なんだよこれ……
ホラーじゃねえか!
別に今は怖くねえけど、こいつ等が夢に出て来たらたぶんめっちゃ怖い!
今日は一人で寝られねえな……
エクスキューショナーは再びゆっくりと、羅刹殺しの血を滴り落とす剣を持ち上げる。
当然の如く振り下ろされたその剣をまたも羅刹殺しは大太刀で受け止め、同じように胸と肩に食い込ませ、今度はさっきと違い勢いよく血が噴き出す……
うわぁ。
もうこいつ等の戦い見たくないんだが?
夢に出てきそうで怖いんだが?
一人じゃ見ていられないから、とりあえず隣にいる越後屋に「やばいんだが」と言って抱き着くと「いざと成れば私が盾になりますのでご安心下さい」と言ってくれた。
同じホラー展開を三度繰り返し、ついに羅刹殺しが倒れた。
しかし、エクスキューショナーは再び剣を振り上げ、倒れている羅刹殺しに剣を振り降ろし、血しぶきが舞う。
なんで試合止めねえんだと思ったら審判が失神してやがる。
そう思った瞬間に観客席から特大の悲鳴が聞こえた。
何が起こったのかと思えば、羅刹殺しが立ち上がって今度は大太刀がエクスキューショナーの左手を二つに切り裂いている。
あの大太刀を素手で受け止めようとでもしたのかよ……
エクスキューショナーはその左手を見つめ、痛がることも無い。
今度は剣を突き上げて大きな「おおぉぉぉ」と呻き声なのか雄叫びなのかよく分からない声を上げるエクスキューショナー。
観客が息を呑み、何が起こるのか見守っていると、エクスキューショナーの周りを無数の青白い火の玉が飛び交う。
よく見たら青白い火の玉には顔みたいに見える模様が……
それに、攻撃スキルかと思ったが、羅刹殺しとエクスキューショナーの二人共あの青白い火の玉に纏わりつかれている。
これ、あいつの殺して来た奴等の幽霊とかじゃねえよな?
俺は「ヒィィ」っと小さく悲鳴を上げて、越後屋の後ろに隠れた。
これ以上は見ていられないので、越後屋の実況を聞き状況を把握する。
青い火の玉にどんな効果があるのかは分からないが、エクスキューショナーはずっと同じ攻撃ばかりを繰り返している。
しかし、羅刹殺しはその剣を受け流し、カウンターに一撃を入れる。
お互いが剣を交えるごとに激しく血しぶきが舞い、その度に観客席からも悲鳴が聞こえるので、俺も見ていないが一緒に恐怖体験させられている。
エクスキューショナーの一撃を受け流してカウンターを入れ続けていた羅刹殺しだったが、最終的にエクスキューショナーがその受け流す為に使っている大太刀を叩き割って、勝利した。
勝者となったエクスキューショナーは喜ぶ素振り一つせずに闘技場を下りた。
最終戦を始める前に、司会者が気を利かせたのか、解説とさっきの試合の様子を語りながら冗談を言ったりしている。
流石はサムライバトルアリーナでずっと司会と解説してただけあって、見事に観客席の凍り付いた空気を和らげてくれた。
メアが出ているので最終戦はちゃんと見ておかなければならない。
この勝負どっちが勝つか分からねえな。
エクスキューショナーの戦い方を見ている限りじゃ、一方的にメアが攻撃し続けて勝利すると思ってはいるが、エクスキューショナーのあの青い火の玉とかどんな効果があるのか分からねえしな。
俺としてはメアに勝って貰いたい所なんだが……
俺がひっそりと手を貸して八百長って手もあるが、ひょん太郎に話を聞く限り、メアは対人に関して拘りがあるみてえだったしな。
多分一対一の大会で横槍なんて入れたら、仲間に何て誘えねえだろう。
メアに勝ってくれと祈りながら、司会者の誘導で決勝戦が始まった。




