隠神刑部の勝ち方
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隠神刑部に気を取られて油断しちまったな。
そりゃあチャンスがあれば殺しに来るだろうな。
隠神刑部は動かないか。
九尾の狐の姿になった玉藻前は、ゆっくりとこっちに近づいて来る。
「本来ならもっと様子を見て慎重に裏切るつもりであったのじゃがな。
この戦争が終わったら妾を粛清するつもりであったじゃろう?」
「はっはっは。
よく分かっておるでは無いか。
しかし、儂に止めを刺せるかな?」
強がってみたが、あんまり効果は無い様だな。
俺から離反した以上、消したりフレンドリーファイアを無効にしたりは出来ねえし、出来たとしてもこの状況で俺がそれをするつもりは無い。
負けるなら潔く負けてやる。
だが、俺は負けず嫌いだからな。
瀕死とはいえ、簡単に俺の首は取らせないぞ。
「強がりおって。
じゃが、そう時間も掛けてはおれん。
もっと楽しみたい所じゃが、終わらせてやる」
玉藻前が俺の胸に目掛けて、一本に束ねた尻尾を尖らせて攻撃をしてくる。
俺は瀕死だが、別に動けない訳では無い。
尻尾の先が自在に動くようだが、直接的な攻撃に慣れていないのか単調で分かりやすく、見て躱す事はそれ程難しくない。
ただし、こいつの一撃はかなり重い。
一発でも当たったらアウトだ。
だからこそ俺は反撃に出る!
尻尾の攻撃を躱して、すぐに銃を構えて弾丸を打ち込む。
急所は避けられてしまったが、結構ダメージを負ってくれたくれた様だ。
玉藻前は、距離は取らずに近接戦闘を仕掛けて来た。
距離をとれば俺の方が有利だし、時間を掛ければ俺のカウンタースキルからのコンボで一気に逆転しちまうからな。
それに、玉藻前のスピードは速いし、爪での攻撃は俺でも躱しきれない。
瀕死な分俺の方が不利ではあるが、玉藻前も焦っている様だな。
攻撃が雑で、爪の攻撃も単調で躱しやすい。
ここで俺を逃せば確実に殺されると言う事を悟っているんだろう。
良い勝負だ!
お互い後が無い状況下でのギリギリの勝負!
面白くなって来た。
俺が笑みを零すと、玉藻前の顔にはっきりと焦りが見える。
そんな顔をするなよ、俺が不利なのは変わらねえ。
もっとギリギリの勝負を楽しもうぜ。
玉藻前の目が血走り「当たれ」と叫びながら、子供の様に腕をブンブンと振り回している。
大振りなので当然隙だらけだ。
俺が銃弾を放つと、玉藻前のこめかみから血が噴き出る。
「おかしいぞ……お前様は瀕死のはずじゃ……
何故妾の方が追い詰められておる……」
余程焦っているのか、俺を相手に怖がって距離を取った。
戦意喪失とは馬鹿な奴め。
容赦なく俺は四本の脚を打ち抜くとその場で玉藻前は倒れ込んだ。
「ゆ……許してはもらえんじゃろうか?」
俺は笑いながら邪魔な尻尾を打ち抜く。
「頼む。
これ以上は攻撃を受け続ければ妾も最後の手段に出ざるを得ん。
妾としてもそれは避けたい所なんじゃ」
最後の手段か。
確か伝承だと殺生石になって近づいただけで動物や人間の命を奪ったんだよな。
まあ、伝承の玉藻前とこいつは違う存在だが、このゲームの運営だし在り得なくも無いか。
「殺生石にでもなるつもりか?
もしそうならいい武器の素材となりうる」
「知っておるのか!?
武器にするじゃと……嫌じゃ!
お願いじゃ!
なんでもするから許してくれ……頼む」
「いい具合だ、親父殿」
ここに来て、隠神刑部が立ち上がっているだと!?
流石にもう駄目だな。
全部こいつに持ってかれちまった。
戦闘慣れしているこいつに俺の勝ち目は無い。
「ははは、そんな顔をしている親父殿を見れて某は楽しいぞ、ははは。
しかし某が用のあるのはこの女狐。
ここまで追い詰めて、九尾の状態でなければこの女狐を持っては逝けぬからな」
「どういう事だ?」
「某の目的は最初からこの女狐。
親父殿の前でも言ったでは無いか。
四肢を噛みちぎり三百年かけて殺さなければ気が収まらないと」
「拷問にでもするつもりか?」
「拷問などでは手緩い。
某と共に……
無間地獄にて、魂の一欠けらすら擦り切れるまで恨み合おうぞ!」
大声で笑いながら歩み寄る隠神刑部に対して、玉藻前は泣き叫びながら「助けてたも」と地面に身体を這わせている。
それを拾い上げた隠神刑部の体からは赤黒い炎が噴き出し、二人がその炎に包まれていく。
朽ち果てて灰となる最後まで二人は対照的で、隠神刑部は笑い、玉藻前は「助けて」と最後まで叫び続けていた……
終わったが。
いつ誰が俺を狙っているか分からん。
周囲を警戒していると、雪之丞がやって来た。
「御屋形様、あの憎っくき狸野郎をぶっとばしてきたっすよ!」
「リベンジ出来たのか。
それはよくやったな!
偉いぞ!」
「もっと褒めて欲しいっす!
ところでここで戦闘があったんすか?
なかなか激しい感じの後っすけど?」
「玉藻前が裏切ったんだ。
まあ、もう殺したから大丈夫だけどな。
後は城の方へ行って後片付けだな」
「ああ……パスしていいっすか?
ショコラさん機嫌悪いと思うんで」
「機嫌が悪いのは知っているが、なんで機嫌悪いんだよ?」
「ショコラさんには内緒っすよ?
実はショコラさんリアルでお兄さんがいて、それが一色重盛さんと性格がそっくりらしいっす。
そのお兄さんはショコラさんの為に命を落としたらしいので……」
「こっちで一色重盛の事を、兄のように思ってたから最初あんなに痛めつけようとしてたのに、急に仲良くなったのか。
それで、こっちの世界でも先立たれたって事か。
声かけずれえなぁ……」
気は重いが、城へ行かなければこの戦争も終わらないし、残党狩りをしながらゆっくりと嫌がる雪之丞を連れて城へと向かった。




